医学生 × MR 同世代のリアリティー

MRと医師の関係 編-(前編)

医学部にいると、なかなか同世代の他分野の人たちとの交流が持てないと言われます。そこでこのコーナーでは、医学生が別の世界で生きる同世代の「リアリティー」を探ります。今回は「MRと医師の関係」をテーマに、MR3名(社A・B・C)と医学生3名(医D・E・F)の6名で座談会を行いました。

今回のテーマは『MRと医師の関係』

医学生のみなさんは、実習先の病院などでMRの姿を目にすることがしばしばあるのではないでしょうか。彼らはどんな思いで医療に関わっているのか、医学生が話を聞きました。

MRってどんな人たち?

医D:MRさんは、医師として働き出したら身近な存在だと思うのですが、学生としてはどんな人たちなのかわからないので、今日は楽しみにして来ました。みなさんは、どうしてMRになろうと思ったんですか?

社A:僕は、医療ドラマなどを見ていて、漠然と医療と関わる仕事をしたいと思っていたんです。就活の時期に自分の進路について考えたときに、今から医師になるのは難しくても、医療機器メーカーや製薬会社に入れば、医師をサポートする仕事ができるんじゃないかなと思って。それでMRを志望しました。

社B:僕はもともとはMR志望ではなく、自社の別製品の営業を志望していました。製薬会社といっても薬だけ作っている会社ばかりではなくて、他の製品も手掛けているところも多いんですよ。でも就職の面接のときに、MRとしてなら入ってほしいと言われて、それならMRもいいかな、と思ったんです。だからそれまでは、MRが具体的に何をしているのか、実はよく知らなかったですね。

社C:私も、就活の時点でMRになると決めていたわけではありませんでした。私の会社は複数の職種をまとめて募集していて、実際の職種は入社してから決まることになっていたんです。私は今入社2年目ですが、むしろ働き出してから、MRの仕事のやりがい、おもしろさが見えてきたなと思っています。

医E:MRというと薬学部のイメージがありますが、そういうわけでもないんでしょうか。

社A:薬学部出身者も一定数いますが、文系卒でMRになる人も少なくないです。僕もそうですね。

医F:文系からMRになるのって大変じゃないかと思うのですが、どんな勉強をするんですか?

社C:MRには認定試験があって、大抵のMRは、入社1年目に試験を受けます。試験に合格してから実務を6か月経験すると、認定証がもらえます。認定証がないと働けないわけでもないのですが、病院によっては認定証を持っている人しか入れないところもあります。

試験は、「医薬品情報」、「疾病と治療」、あとは「医薬概論」という法律関係の内容に分かれていて、MRになることが決まったら、まずはその勉強から始めます。薬学部出身の人は、医薬品や疾患についてはすでに学んできているので、「医薬概論」以外は免除になります。

製薬会社と医療機関をつなぐ

社C:医学生のみなさんは、実際のところMRにどんなイメージがありますか?

医F:僕は今ポリクリの最中なので、MRさんは病院でよく見かけます。暑い時も寒い時も、いつもスーツ姿で医師を待っていて大変そうだな、と思います。

あとは、医局のミーティングや製薬会社が行う講演会で、薬の説明をしているのは知っています。一度講演会に行ったことがあるんですけど、すごくおもしろかったのを覚えています。

医D:私は、授業で外科の手術を見学しに行ったとき、お昼休みにやっていた新薬説明会でお弁当をもらったので、MRさんというとお弁当のイメージがあるかもしれないです(笑)。

社A:学生さんから見える部分はそのくらいですよね。MRは正式にはMedical Representative、医薬情報担当者という名前がついています。大きく言うと、医師・医療機関と製薬会社の間をつないで、薬がよりよく活用されるようにすることがMRの使命なのかなと思います。

日々の仕事としては、病院や診療所を訪問して、先生方に自社の薬の情報提供をするのが主な業務です。営業をするというだけでなく、薬の品質や有効性、安全性について、正確な情報を先生にお伝えします。大抵の場合、病院か診療所のどちらかを主として回ることになっていて、一人70~80程度の医療機関を担当しています。一日に回るのは多くて10件程度ですね。

先ほど話に出たような薬の説明会も開いていて、その企画運営も僕たちの仕事です。先生方に薬についてお伝えするだけでなく、看護師さんを対象に、院内感染対策の勉強会などを行うこともあります。

社B:あとは、薬が実際の医療現場でどんなときに効果を発揮するのか明らかにすることなどによって、今後の薬の開発につなげることもMRの役割です。MRと先生方のコミュニケーションは決して一方通行のものではなくて、先生方から薬に関するフィードバックをいただいて、会社に届けるのも僕たちの仕事なんです。具体的には、使っていただいた薬についてどんな効果や副作用があったのか、先生方の声を会社に伝えています。僕の会社には専用の書式があって、毎月報告書を提出することになっています。だいたい月に10件くらい報告していますね。

同世代


医学生 × MR 同世代のリアリティー

MRと医師の関係 編-(後編)

どんなスケジュールで動いているの?

医E:MRさんの一日の仕事の流れはどんな感じなんですか?

社C:朝8時から9時過ぎまでは卸売業者さんのところを回っています。一般的な営業職は、製品の説明をするところから、納入額を決めたり納品したりするところまでが仕事ですが、MRの場合、医薬品の情報を伝えるという部分だけを受け持っていて、販売の部分は、医薬品卸売業者のMSと呼ばれる営業担当者が行っているんです。それで、だいたい朝はMSさんと打ち合わせをして、先日ここの先生がこう言っていたのでこの薬を置いてもらえますか、といった相談をしています。MSさんのところには他社のMRもよく集まるので、MR同士で情報交換をしたりもしています。自分の会社の人よりも、社外のMRと会う機会の方が多いかもしれないですね。

社B:MSさんとの打ち合わせのあとは、先生方を訪問する準備をします。製剤見本を車に積んだり、先生に言われた文献をコピーしたり。僕は診療所を担当しているので、診療時間が終わってから面会するのが基本ですが、先生によっては診療前の方が都合がいいという方もいらっしゃるので、時間帯は様々です。その日のその時間に会える先生に会いに行くという感じですね。

医F: MRさんって、大きい病院だったら全部の科を回られるんですか? 知らないといけないことがすごく多くて、大変じゃないかと思うんですが。

社A:僕は病院担当ですが、自社製品が活かせるような診療科を中心に回るので、全ての科のことを知らなければいけないというわけではないです。例えば会社がメンタルヘルス関連の製品に力を入れているところだったら精神科を中心に回るというふうに、所属によって異なってくると思います。大きい病院だと担当MRも複数人いて、それぞれ手分けして回ることもありますね。

医D:医師の手が空いている時間に訪問するとなると、毎日のスケジュールは結構流動的になりますよね。残業も多いんですか?

社C:仕事は多いですし、遅くなる日も多いですが、自分でスケジュールを自由に管理できる仕事なので、早く帰ろうと思えばある程度早く帰れるのは良いですね。どうしても大切な用事がある日は早めに帰宅して、逆に別の日は遅くまで仕事をするなど、自分で調整しています。

よい医療のために協働する

医E:MRさんから見て、良い先生だなと思うのはどんな医師ですか?

社B:先生が薬の話をしっかり聞いてくれたときは、やっぱり嬉しいですね。薬について自分から質問してくださる先生もいるんですが、新しい知識を入れるより慣れた薬を使いたい気持ちがあるのか、話を流されてしまうことも多いんです。だから薬の話に興味を持って聞いてくれる先生に会えると、本当にやりがいを感じます。

社A:僕たちは医薬品の情報の専門家ですが、臨床において薬がどんなふうに効くのかは正直なところわからないので、先生から実際に薬を使った時の話を教えていただけるととても助かりますね。疾患の知識も、先生方と比べると僕たちは決して多くないので、こういうときにはこの薬にすると良いなど、いろいろ教えてくださる先生は本当にありがたいです。自分の勉強にもなりますし、何より患者さんの役に立ちたいですから。

医F:僕たちも常に新しいことを受け入れる姿勢でいないといけないですね。

医D:私は2年生なんですが、MRより医師のほうが立場が上という雰囲気にすごく違和感を感じるんです。今でも、私はまだ医学生なのに、病院の廊下ですれ違うMRさんはいつも丁寧に挨拶してくださって、何だか申し訳ないなあ、と思うこともあって。だから、将来はMRさんとも対等な立場でコミュニケーションしていきたいです。そのほうがお互いにとって良いと思うんですよ。

社C:私たちは、忙しい先生方に会っていただけるだけで本当にありがたいと思っています。でも、そう言ってもらえるのはとても嬉しいです。

医E:互いに協力して、患者さんにもっと良い医療を提供できるようにしていきたいです。本日は興味深いお話をありがとうございました。

※この記事は、今回話を聞いたMRの業務内容にもとづくものです。

 

No.16