10年目のカルテ

地域や患者の求める「医師の姿」に応えられる医師になりたい

【消化器外科】岡山 大志医師(旭川医科大学 第二外科)
-(前編)

外科医を選んだ経緯

10年目のカルテ

――どうして第二外科を選んだのですか?

岡山(以下、岡):もともと、「せっかく医師になったのだからジェネラルに病気を診たい」という思いがありました。だから循環器内科や麻酔科、救急などもいいかなと思っていたのですが、病院実習の時に入った第二外科のカンファレンスの雰囲気がよかったんです。ベテランと若手が「その症状はどうなっているんだ?!」と自由闊達に議論していて、言いたいことを自由に言える雰囲気があった。それで「あぁ、いいな」と思って入局しました。

――地元の大阪に戻ろうとは思わなかったのでしょうか?

岡:旭川にずっといるというイメージはしていなかったのですが、学生時代にスキー部に所属していたこともあって、大自然と触れ合える北海道がすっかり気に入ってしまいました。今では大阪に帰ると人ごみに嫌気がさすぐらいですよ(笑)。

10年目のカルテ
10年目のカルテ

地域や患者の求める「医師の姿」に応えられる医師になりたい

【消化器外科】岡山 大志医師(旭川医科大学 第二外科)
-(後編)

理想の外科医の姿

―― 医師になってすぐの仕事はどんな感じでしたか?

岡:1年目は術前・術後の管理や手術助手がメインでしたね。2~3年目も虫垂炎や鼠径ヘルニアなど小さな手術なら執刀医を任されるとはいえ、先輩の指示に従って手術させてもらっていたという感じです。また地方の病院だったので、自分が得意な分野からそうでない分野まで幅広く診なければならず、仕事が多くてこなすのに精一杯でした。

――いつ頃から手術を任されるようになったのですか?

岡:深川市立病院で働くようになった5年目のころから「自分で切れるようになってきた」と思いました。この頃は消化器をすべて診る立場でした。はじめて本格的に外来も診るようになって、上級医と相談しながらではありますが自分の裁量で治療方針を決め、手術も術後管理もできるようになりました。内科に近いことから一般外科まで幅広い業務を担当していたので、僕がもともと理想としていた「ジェネラルに病気を診る医師」に近づけたと感じた時期でしたね。

今は医師の仕事がさらに専門化・細分化に向かっています。そう考えると僕のやりたいことは時代の流れと逆行しているように思われるかもしれません。確かに都市部や大きな病院では、専門化・細分化によって効率が上がるかもしれませんが、北海道の地域の病院だと、化学療法もやる、内科に近い外来も診る、そんな外科医がむしろ求められます。地域や場所によって求められる医師の姿は違うので、次第にその形におさまっていくのが理想ではないかと思います。

――手術の上手・下手ってなんだと思いますか?

岡:難しいですね。外科の心構えを説いた本には『自分と同じだと思ったらかなり上手、ちょっと下手ならちょっと上手、下手だなと感じたらそれが自分と同じくらいだと思え』と書いてあって(笑)、本当のところよく分からない。でも、誰にでもできる手術が一番だと思います。その人にしかできない手技だと意味がないと思うんです。

一方で「この人は手術が上手だな」と思う人も確実にいます。そういう人は次にやることが分かっているな、という感じです。細かいところまで先読みができていて、次に必要な器械の指示も先に先に出てくる。よいテンポができている気がします。僕は手術に集中すればするほど言葉が出てこないので、まだ自分に余裕がないのかもしれません(笑)。

最初から最期まで診る

――外科で腫瘍を担当すると、緩和ケアが必要になることもありますよね?

岡:はい、患者さんの手を握りながら「どう、まだつらい?」と聞いたりすることもあります。外科医になりたての頃は手術のことしか考えていなかったけれど、患者さんたちと向き合っていくなかで「そういうことを求めているんだな」と感じるようになりました。僕は、もし患者さんや家族が「もう(手術しなくても)いいよね」って言ってきたら、それを受け入れるべきなのかなと思っています。明らかに切った方がいいときはお勧めするけど、切りたくないと言っているときは切らないという選択も必要だな、と。

外科医には、「とにかく自分の手で治したい」という人も多いかもしれませんが、僕は「治す」ことにこだわるだけでなく、患者さんを最期まで診られる外科医になりたいと感じます。

――今後はどんな医師になっていきたいですか?

岡:今の医局はすごく居心地がいいんです。人が少ないので多くの症例を経験することもできるし、相談などのコミュニケーションもしやすい環境です。また、忙しい時もあるけれど、基本的にはゆっくり患者さんと向き合うことができます。このスタイルがとても気に入っているので、今後も地域の病院で、患者さんと向き合う医療に携わっていきたいですね。

――最後に、医学生に向けてメッセージをお願いします。

岡:その場・その時に求められるものに応えることができる医師になってほしいなと思います。患者さんが何を求めているか、地域が何を求めているかといったニーズを敏感に感じ取って、それに応えていくのが「よい医師」だと僕は考えています。

岡山 大志
2003年旭川医科大学 医学部卒業
2012年7月現在 旭川医科大学 外科学講座
消化器病態外科学分野 助教

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