外科医の縫合技術を競うコンテストで優勝
【消化器外科 番外編】飛鳥井 慶医師(兵庫県立西宮病院 外科)
-(前編)
「真皮縫合コンテスト」優勝者。5年目の先生ですが、「番外編」としてご紹介します。
術後の合併症予防にやりがい
――外科を選んだきっかけは何だったのでしょうか?
飛鳥井(以下、飛):研修医になった当初は、スポーツで脚を傷めた経験から、整形外科に興味がありました。けれど、必修で回った時から外科にも興味が湧いて来ました。結局、整形と外科を両方回って思ったのは、術後管理の大変さが全然違うということ。整形は自然に治っていくことも多いのですが、外科の患者は合併症のリスクも高く、感染して再手術が必要になることも多いんです。ただ切るだけでなく、合併症をいかに防ぐかも医師の腕にかかっている…そんなところにやりがいを感じて、外科を選びました。
術後の管理はもちろんですが、手術時間の短縮が下肢の血栓や肺塞栓予防には有効とされています。ですから、外科医として「速さ」は大事にしたいですね。
毎年1回、大阪大学の主催で「真皮縫合コンテスト」が行われています。これは若手医師の縫合技術の向上を目的として開催されているコンテストで、2012年3月に行われたコンテストでは、関西の病院に勤務する若手医師109名が予選に参加しました。その優勝者が、今回ご紹介した飛鳥井慶先生です。
真皮縫合は、体内で溶ける糸(吸収糸)を使った縫合技術で、従来から美容形成などの分野で用いられてきました。抜糸が不要で縫合の痕が目立ちにくく、化膿もしにくいと言われています。コンテストは、約10センチの傷がついたブタの皮膚を制限時間内に縫い合わせ、その技術を競う形で行われます。
このようなコンテストで技術を競い合うことは、若手医師の意欲・技術を高めるよい刺激になるのではないでしょうか。
外科医の縫合技術を競うコンテストで優勝
【消化器外科 番外編】飛鳥井 慶医師(兵庫県立西宮病院 外科)
-(後編)
「真皮縫合コンテスト」優勝者。5年目の先生ですが、「番外編」としてご紹介します。
技術を高めるために
――コンテストで優勝した真皮縫合については、どうやって技術を高めたのでしょうか?
飛:真皮縫合は研修医が体験する基本的な手技であり、丁寧に行えば術後合併症が減るとも言われていますが、手がかかるため他の方法で対処する病院が多いようです。私は週3回の手術で毎回10~20分かけて真皮縫合を行っていますし、手先の作業は好きなので練習もしました。そういった中で技術が身についたのだと思います。
―― 外科医として普段から意識していることはありますか?
飛:自分が担当する手術については、インターネットでビデオを見てシミュレーションしておくなど、手術前の予習を重視しています。術後に本で調べるなど、復習もしていますよ。また、今は切る範囲や切り方などの最終判断を自分ではしていませんが、考える訓練はしています。いずれは、手術するべき症例なのか否か、癌を切除するのか化学療法だけにするのかなどを、指導する立場になって判断していかなければならないので、今は自分なりに考えておき、上の先生がどう判断するのかを見る…という感じです。
10年目へのビジョン
―― 今、どの程度までご自身で手術を担当しているのですか?
飛:最初に執刀医として入ったのは、研修医の時の虫垂炎です。今の病院に来てから、虫垂炎に加えて鼠径ヘルニア・胆嚢を経験し、最近では胃がん・大腸がんも上の先生の指導のもとで執刀させてもらっています。ですが、まだ肝臓・膵臓の執刀はできませんし、想定外のことが起こったときには、上の先生の指導や指示を受けています。
10年目を迎える頃には、そういった対応や判断も自分でしなければならないですし、ちゃんと後輩を指導できる医師になっていたいと思います。今は教えてもらえる立場ですが、その頃にはいろいろと聞かれる立場になるので、身につけておきたいことはたくさんありますね。来年からは大学院で研究に携わるので、現場で経験できることをしっかりとやっておきたいです。
それ以外でも、化学療法については最新の知識が必要なので、可能な限りセミナーや勉強会などに出るようにしています。また自分が経験した症例は少ないですが、今後は腹腔鏡手術が主流になっていくと思うので、技術を身につけていきたいです。
―― 最後に、医学生にメッセージをお願いします。
飛:研修医を指導する立場から見ると、ひたむきに頑張っている人の評価は高いです。朝は誰よりも早く来る、患者の様子をよく見ようとする、そういう姿勢は大事だと思います。また、看護師の信頼を得ている研修医もいいですね。看護師はよく見ていますよ。頑張っている研修医は、看護師から合併症の相談をされたりしていますからね。
あと、外科で重要なのは「頭より先に体が動くこと」だと思います。何かあった時に、口であれこれ言う前に、「自分に出来ることはないか」と雑用でも何でも動こうとする人は、外科に向いていると感じますね。
2008年大阪大学医学部卒
2012年7月現在 兵庫県立西宮病院外科医師
2012年「真皮縫合コンテスト」優勝
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