親御さんを安心させスタッフに信頼されるかかりつけ医を目指して
【小児科】三浦 忍医師
(JA秋田厚生連由利組合総合病院 小児科)-(前編)
大学病院と市中病院の違い
――大学病院と市中病院の両方を経験されていますが、それぞれの違いを教えて下さい。
三浦(以下、三):卒後、最初の1年間は大学病院で、その後2年は市中病院で研修しました。大学病院は重症患者を扱うことが多い反面、喘息などの一般的な病気を診る機会は少ないです。逆に市中病院では、重症疾患の治療には関われませんが、早くから外来も経験できますし、最初の診断をつける所に関われる。こういった違いがあるので、両方の経験が必要だと考えました。
大学病院の小児科だけを見ていると、小児科の重症患者は大変そう…という印象を持つかもしれませんが、市中病院は全く事情が違います。入院も、風邪や喘息などが多く、4~5日もすれば元気に退院していきます。
この地域で入院が可能な小児科は当院だけなので幅広く受け入れますが、小児循環器の専門家や特殊な治療環境は大学にしかないので、先天性の心疾患がある新生児や白血病のような特殊な治療が必要な患者さんは、診断をつけて大学に送っています。そんな状況ですから、4人体制で交代で夜間当番をしている現状で、すごくきついということはありません。
親御さんを安心させスタッフに信頼されるかかりつけ医を目指して
【小児科】三浦 忍医師
(JA秋田厚生連由利組合総合病院 小児科)-(後編)
親を安心させるのも仕事
――小児科の大変さとやりがいはどういう所にありますか?
三:大人だと循環器の先生が消化器を診ることは少ないですよね。けれど小児では例えば「風邪」といっても、気管支・肺・腸・痙攣など様々な部分に症状が出るので、それらを一人で診なければなりません。また、アレルギー疾患も食事や生活習慣について総合的に診る必要があるので難しいですね。
ただ、慣れてしまえば大人よりも診やすいように私は感じます。大人を診る科では、持病・合併症があり、既に様々な薬を飲んでいて、他科の診療も受けている…という状況がよく見られますが、小児は合併症も持病もそれほどありませんから、ある意味で単純明快なんです。
やりがいの面では、子どもとコミュニケーションを取るのはやっぱり楽しいですね。もともと子どもが好きで小児科医になったくらいですから、症状も軽くてすぐに元気になっていく子たちと関わるのはやりがいになっています。
――親御さんとのコミュニケーションの難しさはありますか?
三:とても難しいと思います。中にはいろいろと厳しいことを言う親御さんもいますし、お母さんに強く言われたことがショックで、小児科に進むのをやめてしまった研修医もいました。残念ながら、これは数をこなして慣れるしかないですね。慣れてくると、少し話をしただけでどういう考え方を持った親御さんかが見えてくるので、適切なコミュニケーションも取れるようになってきます。
不信や不安を抱えている親御さんに対しては、まずは時間をかけて話をよく聴くことを心がけています。気持ちを受け止めつつも、こちらが不安そうな様子を見せると親御さんも不安になってしまうので、時にはスパッと自信を持って言い切ることも重要です。親御さんを安心させるのも、小児科医の大事な仕事だと思います。
小児科医としてのキャリア
――先生の周りでは、小児科医のキャリアパスはどのような感じでしょうか?
三:秋田大学の場合、研修の期間は自由に決められます。小児科を選ぶと決めている人は、初期研修で半年くらい、後期研修で2年くらい小児科を回る形が多いですね。小児科医は数も少ないので、研修医とベテランの指導医だけという市中病院もあり、早くから外来を受け持つこともできます。
他の科と比べると女性医師も多く、秋田の医局では4割前後は女性です。産休や育休を取得している医師も多いので、少しくらいのブランクなら問題なく戻れる環境が整っていると思います。
――ご自身の今後のキャリアについてはどう考えていますか?
三:大学では新生児を専門にして研究もしました。大学に戻ることもありえますが、いずれは開業して地域の小児科医になることも考えています。NICUは忙しくて、年齢と共にきつくなってくる部分もありますし、こういう市中病院で総合的に診る経験も積んだので…。
秋田は大きい病院が少ないですし、地域の中核病院でも小児科医が充実しているとは言えません。だからこそ、かかりつけ医の存在は重要です。特に冬場は雪深い地域なので、車で何時間もかけて病院に行くわけには行きませんから。
秋田は子どもが減っているので、これから小児科で開業となると大変かなと不安に思うこともありますが、医局のつながりの中で周りのサポートもありますし、前向きに考えています。
――最後に、先生の「良い医師」像を教えてください。
三:私はこの病院に小児科長として赴任してきた当初、新生児に挿管ができるというNICU時代に培った技術が、スタッフの信頼を勝ち取るきっかけになりました。やはり自分の専門をしっかり学び経験したことが強みになっていて、それが看護師や他職種などスタッフからの信頼につながったと感じます。これからも、チームに信頼される「良い医師」でいたいですね。
1999年秋田大学医学部卒業
2012年10月現在 JA秋田厚生連 由利組合総合病院
小児科長
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