大学紹介
山形大学
【教育】一貫性を重視した循環型医師養成
山形大学医学部 総合医学教育センター 教授 佐藤 慎哉
山形大学が考える医師養成の基本は、1)学部教育、初期臨床研修、後期(専門医)研修が単に独立して連結するのではなく、それぞれがオーバーラップしながら一貫したシステムを構築すること、2)常に臨床の現場を意識し、地域医療と最先端医療の研修をバランスよく行うことにあります。卒前教育では特に診断能力(臨床推論)の開発を目指しています。
この目的のため、医学部では全国共通の試験により能力を担保された学生をSTUDENT DOCTORに任命し、積極的に参加型臨床実習を推進しています。卒後の初期臨床研修の獲得目標の中には、指導医の下であれば学生でも施行できる医行為が多くあります。山形大学では、本制度を全国に先駆けて平成21年に導入しました。臨床推論の実力向上のため臨床体験の幅を広げる目的で大学病院に加えて市中病院でも実習を行う広域連携臨床実習を平成24年に開始しました。市中病院で実習を行う大学は他にもありますが、本連携実習は、参加する病院がすべて同じ学生評価基準を用いる協定を結んでいるところがセールスポイントです。初期臨床研修は、将来の自分の専門分野に合わせた研修も選択できる柔軟なプログラムを用意しています。襷がけにより大学病院以外での研修も可能です。後期研修では、平成20年に全ての診療科毎に関連病院との間で循環型研修を行いながら専門医取得を目指す研修プログラムを整備しました。
以上のような市中病院と大学病院との一貫した循環型医師養成システムを可能とするのが、山形大学蔵王協議会です。本会は、医学部、県、県医師会、県歯科医師会、県看護協会、県薬剤師会、関連病院会、医学部学生で構成され平成14年に創設されました。本会は、山形県の医療を担う病院連携のネットワークであると同時に、生涯教育の場を提供するエポックメーキングな協議会として評価されています。
【研究】未来の医学・医療を塗り替えるための研究
山形大学医学部 腫瘍分子医科学講座 教授 北中 千史
山形大学医学部では文科省大型プロジェクトであるグローバルCOEプログラムの採択を契機に、これまで重点的に取り組んできた分子疫学やがんの研究がさらに大きく発展を遂げつつあります。究極の医学・医療とは病気の「予防」。誰だって病気になってから最高の治療を受けるより病気にならないですんだほうが幸せです。とはいえ、実際になるかわからない病気の予防を一生懸命やる気にもなれません。だから効果的な疾病予防に欠かせないのが “ひとりひとり” にあったピンポイント病気予報。自分がどんな生活をするとどんな病気になるか予めわかれば、それに応じて先手をうつことができます。山形大学医学部ではそれを現実のものとするための研究が進行中。病気予報つまり分子疫学の研究自体、きちんとできる研究施設は世界でも限られています。その中でもピンポイント予報を可能にする特殊な解析手法と解析に値する高品質コホート(調査追跡対象となる住民集団)は山形大学医学部の専売特許です。従来の予防医学では例えば肺がん予防のためにはすべての人にタバコをやめて下さいと言うしかありませんでした。我々の研究が順調に進めば、吸って大丈夫な人と危ない人が見分けられるようになり、危ない人を選んでより積極的に禁煙を勧めることができます。これが未来の「オーダーメイド病気予防」です。私たちはこんなふうに世界最先端のその先、未来の予防医学世界基準の創出に照準を合わせています。一方、山形大学医学部ではなってしまったがんを「根治」するための研究でも世界の追随を許さない、オリジナルな成果を上げています。こういったがん領域における先進的な研究や診療教育実績に基づき、この度山形大学医学部は文科省からがん研究センターの建設予算を獲得しました。平成26年度中に開設予定で、ここから未来の医学・医療を塗り替える成果が発信されることになるでしょう。
【学生生活】のびのびとした環境と緊張感のある学びの調和
山形大学医学部 5年 草場 勇作
同 5年 池田 未緒
草場:大学に入って最初に大変だなと思ったのは2年次の解剖実習と組織学です。解剖はご献体いただいて行うので誠意を持って集中して臨まなければならないですし、組織学のスケッチは評価の良い人悪い人が次の授業で発表されるので結構プレッシャーがありました。
池田:4年次に公衆衛生の授業があって、テーマごとに10人くらいのグループに分かれて実習をしました。私は在宅医療をテーマにしたグループで、県内に看取りをする場所が足りていないのではないかと考えて県庁の担当者に対策を聞きに行きました。最終的に学年全体で発表を行って、どのグループの発表が良かったか学生と先生で投票を行います。
草場:僕は陸上部で長距離をやっています。医学部の陸上部に加えて全学の陸上部、それに山形市の駅伝チームにも入っています。山形県は陸上のレベルが高いですし、競技場もしっかりしているので環境はかなり良いんです。大学としても北医体で総合優勝した強豪なんですよ。山形県は温泉が多くて、有名な所だと蔵王温泉やかみのやま温泉、僕のアパートの裏にも温泉があるんですが(笑)、練習後によく入ってます。部活で疲れて家に帰る途中で気軽に温泉に入れるっていうのはかなり贅沢な環境ですね。
池田:私は室内合奏団に所属していて、大学病院で年2回患者さん向けのコンサートをしています。病院でコンサートをするためにはもちろん日頃の練習も大切なんですけど、総務の方と相談して玄関ホールを押さえたり、看護部の方に付き添ってもらったりする必要があります。勉強面ではUSMLEを受験するための勉強会をしています。もともと先輩のなかに優秀な点で合格した方が何人かいて、それからうちではUSMLE受験がちょっとしたブームになっているんです。私もそれに巻き込まれたクチなんですけど(笑)。
※医学生の学年は取材時(2014年2月)のものです。
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