医師のみなさまへ

2011年9月5日

医療法人制度改革 ~定款変更など

平成19年に施行された改正医療法により、医療法人制度が大きく変わりました。

特に、「持分あり」医療法人の廃止と、残余財産の帰属先の制限の二つが、課税問題を含め、大きなテーマとなっています。

医療法人制度改革は、地域医療の安定性、永続性にとっても重要ですので、この2点を中心にポイントをまとめました。

現在医療法人を経営されている先生、あるいはこれから医療法人を設立しようとお考えになっている先生にとって、参考となれば幸いです。

このページでは、なるべく簡潔に説明をしています。そのため、呼称等が法令上の表現とは異なり、厳密性を欠く場合がありますので、ご了知ください。 また、社会医療法人、特定医療法人、特別医療法人は、ここでは扱いません。

「持分あり」医療法人の廃止

  • 現在の医療法人のほとんどを占める「持分の定めのある医療法人」が廃止されました。
  • 新たに設立する医療法人は、全て「持分の定めのない医療法人」となります。
  • つまり、医療法人を退社(脱退)するときに、出資額に応じて払戻しを請求することはできません。
  • ただし、既存の医療法人には、経過措置が適用されます。
  • 「持分あり」医療法人に代えて、「基金拠出型医療法人」が制度化されています。

既存の医療法人が、いったん、持分の定めをなくした場合は、再び「持分あり」医療法人に戻すことができません。

「持分あり」から、「持分なし」へ移行する場合の課税の問題が解決されていません。

  • 移行した場合、医療法人に対する贈与税、出資者個人に対する所得税(配当所得)など、課税問題が生ずるおそれがあります(下記の残余財産の帰属先の変更とともに)。
  • 「持分なし」医療法人へ移行する場合には、税理士・公認会計士等に十分に相談のうえ慎重に検討してください。
  • 日本医師会では、現在、課税問題が生じないよう関係各方面に要望しているところです。 こちらをクリック

残余財産の帰属先の制限

  • 医療法人の残余財産(医療法人を解散し、清算した後に残った財産)の帰属先が、国、地方公共団体、公的医療機関の開設者、他の医療法人、医師会に限定されました。
  • 今までは、医療法人の残余財産の帰属先に制限はなく、出資者個人を帰属先にしているケースもありえましたが、今後は認められません。
  • つまり、医療法人解散時に、社員などが、残余財産から出資持分に応じた額の払戻しを受けることはできません。
  • 定款や寄付行為に、残余財産の帰属先の規定が無い場合には、国庫に帰属することになります。
  • 既存の医療法人には、経過措置が適用されます。

既存の医療法人が、定款を変更して、残余財産の帰属先を定めるときは、国、地方公共団体、他の医療法人、医師会に限られます。個人は認められません。 また、いったん帰属先を変更した場合は、再び元の帰属先に戻すことができません。

医療法人制度改革の主なポイント

「持分あり」医療法人の廃止

  • 新たに医療法人を設立するときは、すべて、持分の定めのない医療法人となる。
  • 既存の医療法人は経過措置が適用される。
    ただし、定款を変更して、いったん持分の定めのない医療法人に移行したときは、再び「持分あり」医療法人に戻すことはできない。

残余財産の帰属先の制限

  • 残余財産(医療法人を解散し、清算した後に残った財産)の帰属先が、国、地方公共団体、公的医療機関の開設者(日本赤十字社等)、他の医療法人(財団、持分の定めのない社団)、医師会(病院経営をする都道府県/郡市区医師会)に限定された。
  • 定款・寄付行為に、残余財産の帰属先の規定がない場合は、国庫に帰属。
  • 既存の医療法人は経過措置が適用される(「経過措置型医療法人」)。
    ただし、定款を変更して、残余財産の帰属先を定めるときは、国、地方公共団体、公的医療機関の開設者、他の医療法人、医師会に限られる。また、そのときは、再び元の帰属先に戻すことができない。 医療法人財団であっても、寄付行為の残余財産の帰属先の規定によっては、経過措置が適用される。

「基金拠出型医療法人」の創設

  • 「基金拠出型医療法人」とは、「基金」の制度を採用した医療法人社団をいう。 今までの「持分あり」医療法人に代わるもの。
  • 「基金」とは、医療法人の財産として拠出されるもので、法人の活動原資となるもの。土地や建物、診療設備、債権など金銭以外の財産を拠出する場合も含まれる。
  • 医療法人は、拠出者に対し、定款の規定に基づいて基金の返還義務を負う。返還には、総会決議が必要。
    個々の返還額は拠出額が上限。ただし、返還の総額は、純資産額から、基金総額や資本剰余金等を差し引いた額が限度。
  • 医療法人の剰余金の分配禁止の原則から、基金を返還するときに利息を付すことはできない。
  • 基金拠出型医療法人は、持分に応じた金額を、医療法人の資産から払戻しを受けることができた「持分」あり医療法人とは異なる。
    したがって、基金の拠出者は、拠出割合などに応じて拠出額よりも多い額の返還(払戻し)を受けることはできない。
  • 基金制度を採用するか否かは、それぞれの医療法人の判断による。
    ただし、「持分あり」医療法人、社会医療法人、特定医療法人は、基金制度を採用できない。

医療法人の作成書類等に関する見直し

  • 医療法人が毎会計年度に作成すべき書類として、事業報告書を追加(従来は、財産目録、貸借対照表、損益計算書)
  • 医療法人の各事務所に備え置くべき書類として、事業報告書や監査報告書を追加。債権者にに加え社員や評議員よる閲覧請求も規定。
  • 毎会計年度終了後3月以内に、事業報告書等(事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書)、監査報告書を、都道府県知事に届け出る事を規定
  • 都道府県知事は、第三者から、定款・寄付行為、事業報告書等や監査報告書の閲覧請求があった場合には、閲覧に供しなければならない(過去3年間まで)。

役員に関する見直し

  • 役員の任期を2年に規定(再任は可能)。
  • 監事の職務(業務監査、財産状況の監査、監査報告書の作成・提出など)を医療法に規定(従来は、民法の規定を準用)。

社員総会に関する規定の見直し(医療法人社団の場合)

  • 医療法に、社員総会を規定(従来は、民法の規定を準用)。
  • 社員総会の議決権を、各自1個とすることを規定。

附帯業務の拡大

  • 有料老人ホームの経営 ※高齢者専用賃貸住宅の経営も追加。

医療法人財団における評議員会の設置

  • 従来は通知で規定していた評議員会を、医療法に規定

指定管理者制度に関する規定の整備

  • 医療法人が、自治体病院など、地方公共団体が開設する病院、診療所、介護老人保健施設の管理を受託することを医療法上明確化。

自己資本比率の廃止

  • 原則20%以上とする自己資本比率規制を廃止し、病院・診療所等に必要な施設、設備又は資金を有することを規定。

関連資料、リンク集

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