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平成18年3月改訂
(改訂第2版)
<作成>
厚生労働省
<作成協力>
財団法人 ウイルス肝炎研究財団
社団法人 日本医師会感染症危機管理対策室
肝臓の働きには、
などがあり、我々が生きていくためには健康な肝臓であることがとても大切です。
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の病気です。
肝炎になると、肝臓の細胞が壊れて、肝臓の働きが悪くなります。
B型肝炎には、急性B型肝炎と、慢性B型肝炎があります。急性B型肝炎は、成人が初めてB型肝炎ウイルスに感染して発病したものであり、慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスに持続感染している人(HBVキャリア)が発病したものです。慢性B型肝炎を放置すると、病気が進行して、肝硬変、肝がんへ進展する場合があるので、注意が必要です。
つまり、慢性B型肝炎、肝硬変、肝がんは、B型肝炎ウイルスに起因する一連の疾患であるといえます。
肝臓は予備能力が高く、慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。このことを正しく認識し、B型肝炎ウイルスに感染していることがわかったら、症状がなくてもきちんと検査をして、病気を早く発見することが大切です。
B型肝炎ウイルスは、主として感染している人の血液が他の人の血液の中に入ることによって感染します。また、感染している人の血液中のB型肝炎ウイルスの量が多い場合は、その人の体液などを介して感染することもあります。
具体的には、以下のような場合には感染が起こることがあります。
常識的な社会生活をこころがけていれば、日常生活の場では、HBVに感染することはほとんどないと考えられています。
なお、以下のような場合には、B型肝炎ウイルスは感染しません。
従来より、わが国では全国の日赤血液センターにおいてB型肝炎ウイルス(HBV)感染予防のためのスクリーニング検査(HBs抗原検査、HBc抗体検査)が徹底され、血液製剤の安全性が確保されています。
さらに、平成11年(1999年)10月からは、核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test:NAT)によるB型肝炎ウイルス遺伝子(HBV DNA)の検出が全面的に導入され、血液製剤の安全性は一段と向上しています。
これらの努力にもかかわらず、わが国では輸血によるB型肝炎ウイルスの感染は、ごくまれ(年間10数例)ではあるものの、残念ながらまだ発生し続けている現状にあります。
現在では、血漿分画製剤(アルブミン、ガンマグロブリン、血液凝固因子製剤など)については、NATによるHBV DNAの検出を含めたスクリーニング検査に加えて、原料血漿の6か月間貯留保管による安全対策や、製造工程におけるウイルスの除去、不活化の措置が行われていることなどから、B型肝炎ウイルス感染の心配はないといっても差し支えはないでしょう。
しかし、どのような検査によっても、B型肝炎ウイルス感染のごく初期の人の血液中に存在するごく微量のウイルスは検出できない場合があることをよく認識して、検査目的での献血は絶対に「しない」「させない」ということを周知徹底することが大切です。
詳しくは詳Q27、詳Q28をご覧下さい。
B型肝炎ウイルスの感染には、急性感染と持続感染があります。
B型肝炎ウイルスに感染すると、全身の倦怠(けんたい)感に引き続き食欲不振・悪心(おしん)・嘔吐(おうと)などの症状が現われ、これに引き続いて黄疸(おうだん)が出現することがあります。他覚症状として、肝臓の腫大がみられることもあります。これが、急性B型肝炎の症状ですが、症状が出ないまま治ってしまう場合があります。これを不顕性感染と呼びます。
B型肝炎ウイルスに持続感染している人(HBVキャリア)ではこれらの症状が出なくても慢性肝炎が潜んでいて治療が必要な場合がありますので、定期的に検査を受け、必要に応じて適切な治療を受けるなど健康管理を行うことが大切です。
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液を検査して調べます。
血液検査では、まずHBs抗原(B型肝炎ウイルスを構成するタンパクの一部)を検査します。検査でHBs抗原が検出された場合、その人の肝臓の中でB型肝炎ウイルスが増殖しており、また、血液の中にはB型肝炎ウイルスが存在するということを意味します。
血液の中にHBs抗原が検出された人の中にはB型肝炎ウイルスに初めて感染した人とB型肝炎ウイルスに持続感染している人(HBVキャリア)とがいます。
一般に、B型肝炎の治療法には、大きく分けると、抗ウイルス療法(様々な種類のインターフェロンを用いた治療法)と肝庇護療法の2つの方法があります。
急性B型肝炎の場合は、急性期の対症療法により、ほとんどの人で肝炎は完全に治癒します。しかし、まれに劇症化する場合もあることから注意が必要です。
B型肝炎ウイルスの持続感染者(HBVキャリア)がB型肝炎を発症した場合には、ごく初期の軽い慢性肝炎か、ある程度以上進んだ慢性肝炎か、肝硬変あるいは肝がんにまで進展してしまった状態か、などの「病期」によって、また肝細胞の破壊の速度(肝炎の活動度)や、残されている肝臓の機能の程度(残存肝機能)などによって、治療方針は異なります。抗ウイルス療法により十分な効果が得られなかった場合でも、肝庇護療法により肝細胞の破壊の速度を抑えることによって、慢性肝炎から肝硬変への進展を抑えたり遅らせたりすることが出来ますので、詳しくはかかりつけ医にご相談下さい。
他人の血液になるべく触れないことが大切です。常識的な社会生活を心がければ、感染することはないと考えられています。
具体的には、以下のようなことに気をつけて下さい。
以上の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性が極めて高いことは言うまでもありませんが、違法行為は行わないことが基本です。
なお、現在、献血された血液はB型肝炎ウイルスのチェックが行われており、ウイルスが含まれる場合は使用されていません。
B型肝炎ウイルスに感染している場合、あるいは感染の疑いがある場合には、検査の目的での献血は決して行わないでください。
他人の血液に触れる機会が多い医療関係者は、あらかじめB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を接種しておくことをお勧めします。また、B型肝炎ウイルス陽性の血液により汚染された場合には、HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の投与により感染を予防することができます。
詳しくは、詳Q30、詳Q31をご覧下さい。
B型肝炎ウイルスの持続感染者(HBVキャリア)のうち、約10%から15%の人が慢性肝炎を発症し、治療が必要になるとされています。しかし、実際には、これを裏付ける確かなデータがあるわけではなく、HBVキャリアの集団を断面でみた時、その10〜15%がALT(GPT)値の異常を示すことがわかっているにすぎません。
いずれにしろ、HBVキャリアが慢性肝炎を発症した場合、適切な健康管理や必要に応じた治療をせずに放置すると、自覚症状がないまま肝硬変へと進展し、肝がんになることがあるので、注意が必要です。しかし、適切な治療を行うことで病気の進展を止めたり、遅らせることができますので、B型肝炎ウイルスに感染していることが分かった人は、必ず定期的に医療機関を受診して、その時、その時の肝臓の状態(肝炎の活動度、病期)を正しく知り、適切に対処するための診察を受けて下さい。
ウイルス肝炎への対応は、国民の健康に関わる重要な課題であることから、厚生労働省においても、これまで行政や学術団体関係機関によって実施されてきた肝炎対策を総点検しながら、今後の方向性や充実の方策について検討してまいりました。
近年の肝炎治療に関する新たな状況等を踏まえ、平成17年3月に「C型肝炎対策等に関する専門家会議」が設置され、同年8月に報告書「C型肝炎対策等の一層の推進について」がとりまとめられたところですが、これを踏まえ、厚生労働省においては、C型肝炎と共にB型肝炎についても、
等の施策に取り組んでいます。
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