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平成28年(2016年)3月20日(日) / 日医ニュース

「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─10」をテーマに

講演を行った塩崎厚労大臣

講演を行った塩崎厚労大臣

 平成27年度母子保健講習会が2月27日、日医会館大講堂で開催された。
 今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(今村聡副会長代読)は、安倍晋三内閣総理大臣が「新たな三本の矢」の一つとして「夢をつむぐ子育て支援」を掲げ、厚生労働省でも平成28年度予算に5000億円が計上される等、多様な取り組みが展開されようとしている中、講演を引き受けて頂いた塩崎恭久厚労大臣に謝意を示すとともに、「本日は、政府の取り組みを含め貴重な話を頂けるものと期待している」と述べた。
 引き続き行われた講演で塩崎厚労大臣は、「『人口』『労働人口』『高齢化率』『出生率』全てにおいて厳しい状況にある日本が、どのような解決策を示すのか各国から注目が集まっている」とした上で、その解決策の一つとして政府が示した「新三本の矢」の内容を概説。
 また、子どもの虐待死防止に向け、児童相談所を強化することを目的に、今国会に提出予定の児童福祉法改正案についても言及し、国際条約である「児童の権利条約」の精神に則り、「子どもの権利」を明記したと説明するとともに、今後は虐待で亡くなる子どもを一人でも少なくできるよう、国、都道府県、市町村、それぞれの役割を明確にし、関係各所としっかり議論していきたいとした。
 続いて、「少子化対策に関する産婦人科と小児科からの提言」をテーマにシンポジウムが行われた。
自見はなこ日医男女共同参画委員会委員 自見はなこ日医男女共同参画委員会委員は、「小児科医から見た少子化対策」と題して講演。若年世代ほど理想の子ども数を持たない理由に金銭面を挙げる割合が高く、その背景には子育て世代の低所得があるとした。
 その上で、政府に対しては、子どもの心身の発達を踏まえた少子化対策の実施を求めていきたいとするとともに、具体的な子ども支援策として、①「日本版ネウボラ」の創設②中学生向け教材の開発と教育現場への支援③普遍的な子ども医療費の助成制度の確立④男女が共に働きやすい職場環境の整備⑤成育基本法の早期の制定─等の実施を求めた。
 二井栄三重県医師会副会長は、産科医療提供体制の現状として、分娩医療施設の集約化・重点化方針等が提示される中、産婦人科医不足により周産期医療体制の基準を満たせない地域があることを憂慮。地域医療構想の策定に当たっては、周産期医療、小児救急医療の検討がなされていないところも多いことから、今後は、産婦人科医も積極的に発言する必要があるとした他、産科医療が抱えている問題の多くは、産婦人科医を増やすことで解決できるとの考えの下に、三重大学が実施している、研修医向けの産婦人科医局の魅力を伝える取り組み等を紹介した。
 「日本版ネウボラ」について講演した松平隆光日本小児科医会長は、次世代育成政策として成育基本法の早期制定を、日医会内の周産期・乳幼児保健検討委員会答申において提言していることを紹介した上で、「少子化脱却に向けては、成育基本法の項目にも挙げられている、妊娠期から子育て期にかけて総合的かつ継続的に全ての支援がワンストップで受けられる小規模拠点の全国配置が必要だ」と指摘。その具体例として、フィンランドで実施されている、身近な地域の専門職が子ども家庭に寄り添うシステム「ネウボラ」を紹介し、子育てを社会全体で支えていくシステムの早急な構築を求めた。
 佐藤敏信日医総研医療政策部長は、1970年代の農業中心社会と現在では、子どもを持つ意味が変容し、核家族化等により子育ての仕組みも崩壊している中において、少子化の何が問題なのか今一度考える必要があるとするとともに、今後、超高齢社会を迎え、晩婚化が進む日本においては、経済的にも厳しい境遇にある世代が、子どもを産み育てる時期と親を介護する時期が重なる可能性があることを指摘。その上で、少子化の解消のためには、教育費を含めた補てんと併せて住宅政策等の環境整備も重要になるとの考えを示した。
 その後は、3名のシンポジストによる討議が行われ、講演会は終了となった。

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