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平成28年(2016年)6月5日(日) / 日医ニュース

かかりつけ医機能の更なる充実・強化を目指して

かかりつけ医機能の更なる充実・強化を目指して

かかりつけ医機能の更なる充実・強化を目指して

 「日医かかりつけ医機能研修制度 平成28年度応用研修会」が5月22日、日医会館大講堂で開催された。当日はテレビ会議での受講者を含めて6,500名以上が受講し、かかりつけ医機能の更なる充実・強化に努めた。

 日医では、今後の更なる少子高齢社会を見据え、地域住民から信頼される「かかりつけ医機能」のあるべき姿を評価し、その能力を維持・向上するために、新たな研修制度として、都道府県医師会を実施主体とした「日医かかりつけ医機能研修制度」を本年4月から開始している。
 研修体系は「基本研修」「応用研修」「実地研修」の3つで構成されているが(図)、今回の研修会は受講が必須とされている応用研修会の中央研修として開催したものである。
 研修会は小森貴常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(中川俊男副会長代読)は、「日医では、かかりつけ医機能の強化こそが今後の超高齢社会を支える重要な視点と捉え、『日医かかりつけ医機能研修制度』を創設した」と説明するとともに、「本日の研修会が、かかりつけ医機能の充実に資するものとなり、先生方が、かかりつけ医として活動される際に役立つものとなれば幸いである」と述べ、研修会の成果に期待感を示した。
 その上で、今後に関しては、「各地域に、本研修制度を修了した『かかりつけ医』がいることを、地域の皆さんに知って頂けるよう支援することも、医師会の重要な役割であると考えている」として、その推進に力を入れていく意向を示した。

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 引き続き、6題の講義が行われた。
 「かかりつけ医の倫理」については、新田國夫医療法人社団つくし会理事長が、(1)患者の尊厳への配慮、(2)地域住民から信頼されること、(3)倫理的に適切な意思決定プロセスを踏んだ在宅看取り、(4)地域包括の視点から多職種協働が実践できること―が今求められていると指摘。
 更に、「医師と患者の関係」に関しては、歴史の変遷とともに、パターナリズムモデル→情報提供型モデル→相互参加型モデルへと変化してきているが、現場の状況によって適切に対応していくことが必要になるとした。
 また、箕岡真子東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野客員研究員は、(1)医療倫理の4原則、(2)インフォームド・コンセント、(3)守秘義務と個人情報保護、(4)終末期医療(看取り)の倫理―について説明。
 (4)では、本人が意思表明をできない場合、延命治療の実施等に関しては、家族が判断することになるが、その判断が本当に患者本人の願望を推定・反映したものであるのか、医療ケア専門家は注意する必要があるとするとともに、「この問題は、今後、社会全体で事前に考えておくべきであり、かかりつけ医にはその際のリーダーになって欲しい」と述べた。
 「生活習慣病」に関しては、寺本民生帝京大学臨床研究センター長が、日医、日本医学会、関係11団体で作成した「脳・心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート」を基に、患者のスクリーニングのポイントや各病態の診断基準等を解説。
 わが国の脳・心血管病を予防するためには、血圧はもとより、脂質異常症や糖尿病といった生活習慣病を包括的に管理することが重要であり、かかりつけ医にはその役割が求められていると強調した。
 「フレイル予防、高齢者総合的機能評価(CGA)・老年症候群」については、飯島勝矢東京大学高齢社会総合研究機構准教授が、フレイル(虚弱)について、身体の虚弱と考えられがちであるが、こころ・心理、認知性、社会性の虚弱が存在するなど、多面的であることを説明。その予防のためには、「しっかり食べ、しっかり動き、そして社会性を高く保つことを高齢者に意識してもらうことが重要になる」とした。
 「かかりつけ医の摂食嚥下障害」に関しては、山脇正永京都府立医科大学在宅チーム医療推進学講座教授が、高齢化に伴い摂食嚥下障害は確実に増えていくことが考えられることから、医療者・介護者にとって誤嚥及び誤嚥性肺炎の予防は今後大きな課題になるとした上で、嚥下障害の分類方法、原因疾患などについて解説。その対応のためには、他の疾患と同様に、全人的・包括的にアプローチすること、地域包括ケアを推進していくことなどが求められるとした。
 「かかりつけ医の在宅医療・緩和医療」に関しては、草場鉄周医療法人北海道家庭医療学センター理事長が、在宅診療には、外来診療からつながる継続診療として、さまざまな健康問題に対応し、地域の多職種及び医療・介護施設とのネットワークを形成することが求められると指摘。更に、在宅医療において不可欠な多職種連携のポイントとしては、訪問看護師やケアマネジャーとの緊密な連携を図ることを挙げた。
 また、和田忠志医療法人社団実幸会いらはら診療所在宅医療部長は、在宅医療を実践するための工夫として、「24時間対応型の訪問看護ステーションや医師同士あるいは急性期病院との連携を図ること」「日中の診療において、夜間に起こり得ることを予測しておくこと」などを推奨。かかりつけ医が長期に受診した患者を最期まで支援することは重要だとして、緩和ケアへの積極的な関与を求めた。
 「症例検討」では、草場氏が、①家族内の問題(独居、老老介護、虐待など)によってマネジメントに困難があるケース②がん患者のケアに困難があるケース―の2つの具体的な事例を紹介。
 ①では家族会議の開催が重要になるとして、家族会議の開催方法等を説明するとともに、「かかりつけ医には、こうした家族へのアプローチの方法についても習熟し、家族、多職種と共に高齢者を支えて欲しい」と述べた。
 また、②では、「今後、がん患者に関わることも多くなると思われるが、がんが専門でなくても、生活習慣病の管理を通じて築かれた信頼を基に、かかりつけ医はさまざまな役割を果たすことができる」として、その役割の重要性を強調した。

 最後に閉会のあいさつを行った鈴木邦彦常任理事は、都道府県医師会においても今回と同様の研修会を開催することを求めた上で、応用研修の「関連する他の研修会」について、「地元で行われている研修会も該当するのではないか」との意見があることに言及。
 「日医としては、①日医が関与(主導)している②全国規模の研修会である③研修会名に『かかりつけ医』と明記されている④利益相反に当たらない―といった要件に基づき、日医に設置した検討会で該当すると判断したものを『関連する他の研修会』としたいと考えている」と述べ、理解を求めた。

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