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平成28年(2016年)12月5日(月) / 日医ニュース

組織の在り方を模索しながら世界をリードする次の100年に向けての歩みを開始する

横倉会長 組織の在り方を模索しながら世界をリードする次の100年に向けての歩みを開始する

横倉会長 組織の在り方を模索しながら世界をリードする次の100年に向けての歩みを開始する

 平成28年度第2回都道府県医師会長協議会が11月15日、日医会館小講堂で開催された。
 当日は、10都府県医師会から「医師偏在解消策」「療養病床のあり方」など、直近の課題に関する質問並びに要望が出され、担当役員が回答した他、「介護予防における地域リハビリテーション体制の再構築」について、日医から都道府県医師会に対して協力を求めた。

会長あいさつ

 今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長は、まず、10月の世界医師会台北総会において、次期世界医師会長に選出されたことを報告。「今回の名誉はわが国全ての医師会員に対する世界中からの賞賛と、日医が世界をリードしていくことへの強い期待の表れである」として、これまでの支援に対する感謝の意を示すとともに、「地域から国へ」そして「日本から世界へ」を目指し、日医並びに世界医師会の会長職という重責を果たすべく、強い決意を持って職務に取り組んでいくとした。
 また、医療に関わる課題や問題に対しては、「国や自治体を始め、各関連団体等に広く協働を呼び掛けることで、わが国の医療をより高次へと押し上げることが可能になる」とするとともに、「我々が『日本医師会綱領』にのっとったプロフェッショナル・オートノミーを十分に発揮することで、必ずや国民にとって最善の結果を得ることができる」と強調。特に、「医師の偏在対策」「新たな専門医の仕組み」「医療事故調査制度」については、日医の取り組みの成果を国中が注目しているとし、「我々は何としてもその責任を果たす中で、医師としての矜持(きょうじ)を示していかなければならない」と述べた。
 最後に、横倉会長は、今年が日医の前身である大日本医師会が設立されてから100年の節目に当たることに言及。「国民の信頼に応え続ける組織の在り方を模索しながら、世界をリードする次の100年に向けての歩みを開始していきたい」として、都道府県医師会の更なる理解と支援を求めた。

協 議

(1)認知症治療薬の投与量の問題点について

 茨城県医師会からの認知症治療薬の投与量に関して、医師の裁量権や処方権に配慮した審査を行って欲しいとの要望には、鈴木邦彦常任理事が回答した。
 同常任理事は、①認知症治療薬の取り扱いに関しては、厚生労働省保険局から、本年6月1日付で審査支払機関に対して、一律に査定を行うのではなく、摘要欄に記載されている投与の理由等も参考に、個々の症例に応じて医学的に判断するよう求める通知が出されていること②支払基金本部や国保中央会が各支部並びに各国保連に対して行った調査によると、「少量投与が2週間を超えていること」「摘要欄に記載がないこと」をもって、一律に査定しているところはなく、診療内容を見た上で審査していることが確認できていること―などを説明。
 「審査については、本件に限らず、薬剤の適応に従うことを原則としながらも、個々の症例に応じた医学的な判断に基づき、柔軟に行われるべきであると考えている」として、理解を求めた。

(2)高齢社会で増加する救急車要請について

 高齢社会において増加する救急車要請について、日医の見解を問う埼玉県医師会からの質問には、石川広己常任理事が、①高齢者の救急搬送には、たとえ入院には至らず「軽症」であったとしても、迅速な処置が必要な場合が多いこと②「不搬送」の理由には、家族などが救急車を呼んでも本人が拒否した場合が相当数あること―などを説明。
 日医としては、高齢者の救急を地域包括ケアシステムの中で考え、現場の「かかりつけ医」の先生方や地域医師会を支えていく方針であり、「八王子高齢者救急医療体制広域連合会」などの事例を全国的に広めていく必要があると考えているとし、今後も政府に対して、「在宅・介護施設からの救急患者受け入れ体制づくり」や、「♯7119の拡大」「地域医師会等による病院救急車の地域での活用」等を引き続き求めていくとした。

(3)「かかりつけ医」の位置づけについて

 栃木県医師会からの「かかりつけ医」に関する四つの質問〔①イギリスのGP(General Practitioner)制度のような仕組みが導入される懸念②診療報酬点数との関連づけ③内科以外の診療科の位置づけ④総合診療専門医との関係〕には、鈴木常任理事が答弁を行った。
 ①の懸念については、本年4月から開始した「日医かかりつけ医機能研修制度」(以下、研修制度)をしっかり運営していくことにより、GP制度のような仕組みを導入する必要はなくなると強調。②に関しては、現段階では、研修制度を通じて、地域住民から信頼されるかかりつけ医機能の維持・向上を図っていく考えを示した。
 ③については、研修制度の内容は全ての医師が対象となっていることを説明。更に、④に関しては、かかりつけ医と総合診療専門医は明確に区別すべきとの考えを示すとともに、新たな専門医の仕組みとの間で日医生涯教育制度も活用しながら、双方が互換性をもって履修できる体制にも取り組んでいきたいとした。

(4)医師偏在解消策について

 奈良県医師会からは、現在議論されている医師偏在解消策に対する日医の見解を問う質問が出された。
 釜敏常任理事は、まず、厚労省の医師需給分科会での参考人の意見について、あくまでも一NPO法人の案であり、これを基に分科会で議論が進むことはないと説明。
 その一方で、「医師会が自律的に医師偏在に対する取り組みを行わなければ、政府がより厳しい規制的手法を取ることにもなりかねず、我々も偏在対策に主体的に取り組まなければならない」との考えを示した。
 その上で、同常任理事は今後について、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が10月に設置され、医師偏在対策等の検討が行われているため、年末までの分科会としての取りまとめは難しいとの見通しを示すとともに、「日医としては、行政主導ではなく、プロフェッショナル・オートノミーとして、医師会主導による偏在対策の実現に努めていく」と述べ、理解を求めた。

(5)ジェネリック医薬品の原料原産国の表示を

 ジェネリック医薬品の原料原産国が表示されるよう、日医からの働き掛けを求める群馬県医師会からの要望には、鈴木常任理事が回答した。
 同常任理事は、医療用医薬品は患者が自由に選択するものではなく、患者の病態・生活習慣・生活環境等を総合的に判断して医師が処方するものであり、医師や薬剤師が患者への情報提供の責任を負っていることからも、原産国を含め、必要な情報は、国や製薬企業から医師等に提供されるべきとの日医の考えを説明。
 今後については、国及び製薬企業に対して、原薬並びに製剤の生産国に関する情報開示と、国際合意に基づく医薬品の品質確保について、強く要望していきたいとした。

(6)地域医療介護総合確保基金について

 地域医療介護総合確保基金に関する広島県医師会からの質問には、釜常任理事が、まず、基金の配分に関して、日医から国に対して強く要請した結果、平成28年度においても一定の柔軟化が図られることになったことを報告。
 その上で、都道府県・郡市区等医師会に対しては、事業区分の柔軟化についての通知を基に行政と話し合いを行い、本年1月に示された配分方針のうち、②の「コーディネーターの養成・配置」や③の「多職種連携の研修」のような事業を事業区分Ⅰに絡めていくよう、工夫を促して欲しいと要請。日医としても、引き続き、国等に対して「十分な財源の確保」「事業の解釈につき柔軟に対応すること」「適切な内示時期」「交付時期の早期化」を求めていくとした。

(7)療養病床(25対1医療療養病床及び介護療養病床)のあり方について

 「社会保障審議会療養病床の在り方等に関する特別部会」(以下、特別部会)で現在議論が行われている療養病床の見直しに対する日医の対応方針を問う東京都医師会の質問には、鈴木常任理事が回答した。
 同常任理事は、今後の療養病床のあり方について最も重要なことは、地域住民の方々の療養の場を確保することであり、日医としては、現在でも一貫して現行制度の再延長を第一選択肢として検討すべきと主張していると説明。また、今後の検討においては、転換を強いられるのではなく、医療機関自らが移行したいと思える魅力ある移行先をつくることが必要だとするとともに、経過措置についても、現在提案されている3年間では短く、6年間を主張しているとした。
 その上で、「今後は特別部会で議論した後に、介護給付費分科会や中医協で更に検討することになっているが、先生方からご意見を頂きながら、しっかり議論していきたい」と述べ、引き続きの協力を求めた。

(8)学校保健活動について

 神奈川県医師会からの①運動器検診への整形外科医の関与②運動器検診の応援医③運動器検診の事後措置④学校医報酬への地方交付税の増額―に関する要望並びに質問には、道永麻里常任理事が回答した。
 まず、①の「日本学校保健会の理事に整形外科医を」との提案には、整形外科、皮膚科、精神科、産婦人科の4科の強化は必要なことであり、役員構成のバランスも見つつ、日本学校保健会と検討するとした。更に②に関しては、運動器検診の対応を契機として、「児童生徒等の健康支援の仕組みの推進をお願いしたい」と述べた。
 ③については、全国一律の対応が妥当かどうか、慎重に検討する必要があるとした上で、あらゆる健康課題に対応できる仕組みの構築が重要との考えを示した。
 また、④に関しては、日医が学校医に対して実施するアンケート調査への回答内容、回答率が、その実現のための重要なエビデンスになるとして、回答促進に対する協力を求めた。

(9)新たに設けられた基本領域における「総合診療専門医」について

 新たな専門医の仕組みの導入における地域医療確保策並びに総合診療専門医に関する日医の見解を問う京都府医師会の質問には、羽鳥裕常任理事が回答。
 地域医療確保策に関しては、日本専門医機構が暫定プログラムに対する意見を求めており、その意見を精査・集約した上で関係学会にフィードバックし、地域医療体制に影響を及ぼすことがないよう、しっかり調整・対応していくとした。
 また、総合診療専門医については、①学問的な基盤に基づきしっかりと養成していくことが必要であり、一定程度人数を絞った認定となることが望ましい②関係者間で考え方に隔たりがあるが、十分に意思疎通を図りながらスピード感をもった対応に努めていく③学問的な評価としてのハードルは一定程度高いレベルに保つべき―とする日医の考えを説明。「引き続き、日本専門医機構内で幅広く検討していくことになるので、今後も忌憚(きたん)のないご意見を頂きたい」として、協力を求めた。

(10)JMATの救護体制について

 徳島県医師会からは、今後のJMAT体制強化の方針に関する質問が出された。
 石川常任理事は、①本年4月の熊本地震を踏まえて、状況把握や業務調整役を担う「JMAT先遣隊」や「統括JMAT」といった医師会独自の取り組みが必要であったと考えている②今期の「救急災害医療対策委員会」では、JMATのコーディネーター機能を検討テーマとし、ワーキンググループを設けて、そのあるべき姿や研修内容を検討する予定である―ことなどを説明。今後は、事前の組織化、ロジスティクス、行政や関係者との連携などを積極的に進めていく考えを示した。
 更に、同常任理事は、本年5月31日に国の防災基本計画が改訂され、「被災地の知事は、JMATや日赤などの協力を得て、被災地の医療提供体制の確保・継続を図り、その調整に当たっては災害医療コーディネーターを活用するものとする」と明記されたことを紹介。日医は、災害対策基本法上もJMATの体制強化に対する責任を負っているとして、都道府県医師会からの支援と協力を求めた。

(11)介護予防における地域リハビリテーション体制の再構築について

 鈴木常任理事は、平成26年度の介護保険制度改正により、地域支援事業の一つとして市町村単位で実施することとなった地域リハビリテーション活動支援事業について、①協議会の運営経費や都道府県及び地域リハビリテーション広域支援センターの委託費等については、介護保険事業費補助金を活用することが可能であるにもかかわらず、ほとんど使われていないこと②フリーのリハビリ専門職が個人的に市町村に売り込みをしたり、リハビリ専門職の団体が医療機関に勤務しているリハビリ専門職に休みを取らせて派遣するなど、必ずしも責任ある派遣体制が取られていないことがあること―などを説明。
 その上で、「今後はこのようなことが起こらぬよう、地域リハビリテーション体制の再構築が必要であり、その際には医師会の関与が不可欠である」として、都道府県医師会の積極的な関与を求めた。

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