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平成30年(2018年)1月5日(金) / 日医ニュース

「2017年度情報通信訓練/衛星利用実証実験近畿大震災想定訓練」を実施

「2017年度情報通信訓練/衛星利用実証実験近畿大震災想定訓練」を実施

「2017年度情報通信訓練/衛星利用実証実験近畿大震災想定訓練」を実施

 「2017年度情報通信訓練/衛星利用実証実験 近畿大震災想定訓練」が昨年12月6日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)並びに国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、株式会社NTTドコモ等の協力の下、日医会館で開催された。
 日医では、JAXAとの間で平成25年1月に締結した「超高速インターネット衛星『きずな』を用いた災害医療支援活動における利用実証実験に関する協定」に基づき、NICTと共に「衛星利用実証実験(防災訓練)」を毎年実施している。
 今回の訓練は、南海トラフ巨大地震のうち四国沖で発生した南海地震による建物倒壊、津波や火災等の被害を「近畿大震災」と呼ぶこととし、大阪府による被害想定、対策に基づいて、大都市への医療支援活動に焦点を当て、「きずな」の送受信アンテナやNTTドコモの衛星携帯電話「ワイドスターⅡ」端末を設置した、大阪府、京都府、滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県の各医師会を始め全国の都道府県医師会が、テレビ会議システムを使って参加した。
 当日は、石川広己常任理事による防災訓練開始宣言の後、横倉義武会長があいさつし、「日本有数の大都市圏で甚大な被害が発生した場合、国家機能、経済・社会は深刻な影響を受け、建物倒壊や熱傷による患者が多数発生し、長期にわたって、非常に多くの方々が避難生活を強いられることが想定される」と指摘。平成27年に自身が被災者健康支援連絡協議会代表の立場で中央防災会議の委員に就任したことに触れ、「改めて、医療界を代表する立場として、重大な責務を負ったと強く感じている」と述べた。
 その上で、「日医の活動は、都道府県医師会、会員の先生方や関係者の協力の下、大規模災害発生直後から、被災地の地域医療が復興するまで、さまざまな形で支援を続けることにあり、日医と被災地、支援する側の都道府県医師会との間で、しっかりとした情報共有を行っていくことが重要である」とした。
 続いて、越智眞一滋賀県医師会副会長、髙階謙一郎京都府医師会理事、茂松茂人大阪府医師会長、佐藤愼一兵庫県医師会常任理事、錦織方人奈良県医師会理事、寺下浩彰和歌山県医師会長からそれぞれあいさつが行われた。
 その後、災害発生時から7日目まで及び3カ月後の対応等について、具体的な被害想定を踏まえたシナリオに沿って出席者らがやり取りしながら模擬訓練を開始した。
 訓練は、マグニチュード9・0の地震が四国沖で発生した直後、日医役職員の安否を緊急連絡網・安否確認システム「オクレンジャー」を使って確認するとともに災害対策本部を設置し、まず、京都府・兵庫県両医師会に「先遣JMAT(仮称)」の派遣を要請。被災地の府県医師会や近畿圏以外の支援側の都道府県医師会事務局とは、通常利用している「都道府県医師会メーリングリスト」や、今回から導入した「事務局災害時情報共有システム」を、近畿の6府県医師会とは、JAXA、NICTの「きずな」とNTTドコモの「ワイドスターⅡ」をそれぞれ利用して被害状況等を確認し、先遣隊のコーディネートの下、JMATを全ブロックから順次派遣していくとの流れで進められた。
 「きずな」の送受信アンテナ、「ワイドスターⅡ」を設置した6府県医師会からは、髙階京都府医師会理事、杉町正光兵庫県医師会理事、越智滋賀県医師会副会長、錦織奈良県医師会理事、鍬方安行大阪府医師会理事、西岡正好和歌山県医師会理事が各地の被害や対応等を説明。特に、「先遣JMAT(仮称)」の米林功二京都府医師会理事は、大阪府枚方市の市立ひらかた病院に出動したNICTの中継車(移動しながらの中継も可能)より、通行ルートの状況等を、杉町兵庫県医師会理事は「ワイドスターⅡ」による音声通話で、厚生労働省広域災害救急医療情報システムEMIS(EMIS:Emergency Medical Information System)の道路情報を参考に移動しつつ、浸水被害が大きく、検死対応が必要な状況(ロジスティックスへの助言を含む)等をそれぞれ報告した。
 また、内藤一郎JAXA衛星利用運用センター長が「超高速インターネット衛星『きずな』」について、高田一成株式会社NTTドコモ法人ビジネス本部メディカルICT推進担当課長が「NTTドコモの災害への備え」について、原田理加株式会社ベストテクニカルサービス営業部マネージャーが「BCPクラウド最新事例 レスキューWebMAP~災対本部の課題を地図で解決~」について、それぞれ概要を説明した。
 その後、髙階京都府医師会理事、鍬方大阪府医師会理事より、「統括JMAT(仮称)」の報告がなされ、最後に、発災3カ月後として、鍬方大阪府医師会理事より、地域包括ケアの視点からの報告があった。
 なお訓練には、中川俊男副会長、松本吉郎常任理事と、日本歯科医師会、日本薬剤師会等の被災者健康支援連絡協議会構成団体及び総務省、厚労省、海上保安庁等関係省庁の他、テレビ会議システムにより、視聴のみを含めて全都道府県医師会が参加した。
 最後に石川常任理事は、災害時等にも医師免許の代わりになる「医師資格証」の有用性を紹介した上で、「会内の救急災害医療対策委員会で、①JMAT活動の課題と対策~コーディネーター機能を中心に~②地域の救急災害医療におけるかかりつけ医の役割~地域包括ケアシステムにおける災害医療を中心に~―という横倉会長からの諮問について検討中であるが、答申については会長が委員として参加している中央防災会議にも提案していきたい」との考えを示し、訓練は終了となった。

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