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平成30年(2018年)6月5日(火) / 南から北から / 日医ニュース

擦り切れたGパン

 ブルージーンズのズボンは若者の制服と言われるくらい、若い人達が気取らずにはいている。だが老人が最近ちょっと気になるのは、あちこち擦り切れて、特に膝の部分から肉体がチラチラ見えるズボンで闊歩(かっぽ)していることである。
 娘が理系の大学で学んでいる時、屋外作業はGパンでもつなぎでも構わないが、教室で講義を受ける時はGパン禁止。教えを乞う時は、それにふさわしい服装であるべきと言われたとのこと。当然だと思う。
 私が60年前、江田島で幹部候補生の訓練を受けた時は、服装がいい加減だと行動もいい加減になると言われた。6時に起床、作業服でベッドメーキング、部屋の清掃、洗面、外に出て体操、号令調整という大声を明瞭に出す発声練習。制服に着替えて食堂に行進、国旗掲揚、隊列を組んで教室へ。最初の時間が教練や体操なら、制服から着替える。座学は原則制服。食事も制服。数カ月で一通りの訓練を体験させるので、頻繁に着替えることになる。
 裸の王様でもあるまいし、1日に何度着替えをさせるのだとぼやいた者もいたが、体育会系の合宿を考えればどうということもない。ジャージからサッカーパンツにスパイクの靴に変える。シャワーを浴びてジャージで食事、昼寝、またユニフォームに着替えて練習、1日に何度も着替えるのは当たり前だった。
 テレビドラマで病院の若い医師が、ノーネクタイで白衣のボタンを掛けず、前をはだけて首に聴診器という姿で現れる。うるさい教授にしごかれた老医は、臨床医はこんな服装はしないよと思うが、テレビ屋さんのイメージは医師=白衣なのだろう。昔のドラマでは診療所の医師が、ちゃぶ台に白衣のまま座る食事のシーンもあった。医師の白衣は作業服でステータスの道具ではない。
 「白衣は汚いもの! 防護服と思え」と医局で教えられた。大学病院の食堂前廊下には医師の白衣や、看護師の予防衣を掛ける金具がずらりと並んでいた。ペンキ屋の作業服の汚れは目立つが、白衣の汚れは分からない。手術後患者の家族に説明する時でも、 血の付いた手術着は必ず脱いでいる。血の汚れは見えるが細菌汚染は見えない。
 省エネ、クールビズということで、だらしなく見えるが国会で大臣もノーネクタイである。自衛隊や警察はノーネクタイで首のボタンを外した服装はない。
 その場にふさわしい服装というものがある。医師は患者さんの前に立つ、いわば接客業である。クーラーのない時代でもネクタイをしろ、ズボンはきちんとプレスをしろ、サンダルはダメ、靴を履けと仕込まれたので、診察室でのGパン禁止は当然と思う。営業のサラリーマンはGパンで外回りはしないだろう。まして擦り切れたズボンはあり得ない。

山形県 山形市医師会たより 第578号より

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