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平成30年(2018年)8月5日(日) / 南から北から / 日医ニュース

クララの日常

 「先生の犬?がスーパーの中を走っているって連絡がきたんですけど......」
 ある土曜の昼下がり、回診を済ませ帰宅しようとすると、病院の出口で警備員さんに声を掛けられた。何のことだろうか? クララは家にいるはずだが......。
 クララはわが家の愛犬で、グレートピレニーズとバーニーズマウンテンドッグのミックスである。「うちの犬ではないですよ。家を出る時に確認してきましたから」。
 変なことを聞かれるものだと寮に向かっていると、病院駐車場をさっそうと駆け抜けるクララが目に飛び込んできた。え? なぜ! この子何してるの?!
 とにかく捕まえなければと、走りながら大きな声で叫ぶと、ぴたりと止まり、こちらへ猛烈に飛び掛かってきた。ワフワフ喜んでいる巨体を抱いて、やれやれと家に着くと、ほどなく警官3人が現れ、職務質問が始まった。「名前は?」「歳は?」「何の犬種?」。もう恥ずかしさと焦りでいっぱいになりながらも一通り答え、少しばかり注意を受け、無事に終了した。
 どうやら寝ている妻子に気づかれぬように、こっそりと網戸を開けて抜け出したらしい。被害は無かったと聞いたが、すぐにスーパーへ謝罪に行った。
 店長によると、自動ドアから侵入し、店の中を駆け巡り、捕まえようとした人に向かって「ワン!」と吠え、華麗なフットワークで繰り出してくる数多(あまた)の手を避けながら、売り物のパンをひとかじりしたらしい。一度店から出て行ったものの、また戻ってきて、「また来たー!」とのお店の人の絶叫で帰っていったとのことだ。
 土曜の人が多いスーパーで体重30キログラム近い大型犬が走り回り、さぞお客も怖かっただろうに。知り合いの店員さんは、「クララちゃん、もう目が真剣だったよ」。たまたま買い物に来ていた同じ職場の看護師さんは「クララちゃんかと思ったけど、恥ずかしくて声掛けられなかったの」。さまざまな目撃情報を聞いたが、申し訳ない気持ちでいっぱいである(でも、ちょっと走り回るのを客観的に見てみたかった......とは口が裂けても言えません)。
 お客にケガがなくて幸いであった。パン代だけ頂戴しますとのことで、かじられた惨めなソーセージパンを持ちレジに並ぶという辱めを受け、この一件は終了した。
 そんなこともあったねと、わが家のクララは「座れっ! 待てっ!」と繰り返す私の前で、今日も朝から元気に飛び回っている。

北海道 北海道医報 第1186号より

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