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平成31年(2019年)3月5日(火) / 日医ニュース

特別寄稿 多重がんとは何か、そして普段どのように精査を考えるのか

 1人の患者が、複数の臓器がんに罹患していることを「多重がん(または重複がん)」と呼びます。特に、初回のがんの診断から2~6カ月以内の同時期に診断された多重がんは、2~17%の頻度とされています(1)
 通常、がんと診断された患者が転移性ではない新たな別の部位のがんに罹患する確率は、患者にリスク因子がなければ一般的な確率と同じであるため低い確率になります。そのため、多重がんを疑うべき患者は、複数の臓器にわたる発がんリスク因子を保有している患者(下表参照)となります。特に遺伝性腫瘍の場合には、特徴的ながん種の組み合わせでの発症が、疑うポイントになります。
 がん患者と面談する際には、そのがんのリスク因子と共通する他のがんがないかどうかについて、詳細な病歴聴取及び診察に基づいて、精査の追加を検討頂くよう、お願いいたします。

参考文献:
1)ESMO Open. 2017 May 2; 2(2): e000172.
2)Ann Oncol. 2012 May; 23(5): 1362-9.

表 代表的ながんリスク因子と複数臓器のがんの例
〔参考文献1), 2)を基に作成〕

リスク因子頻度が上昇するがん種
生活習慣 喫煙 口腔がん、咽頭喉頭がん、食道がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、白血病
アルコール 口腔がん、咽頭がん、食道がん、結腸直腸がん、肝臓がん、乳がん
環境因子 HPV感染 口腔がん、咽頭喉頭がん、肛門がん、陰茎がん、外陰がん、膣がん、子宮頸がん
患者の因子
(遺伝性腫瘍)
遺伝性乳がん
卵巣がん症候群
(BRCA1、BRCA2)
乳がん、卵巣がん、前立腺がん、悪性黒色腫
特徴的な組み合わせ:同時性両側または異時性乳がん、乳がんと卵巣がん、前立腺がんと膵臓がん、または悪性黒色腫
リンチ症候群
(ミスマッチ修復
遺伝子)
結腸直腸がん、子宮体がん、卵巣がん、胃がん、尿路系腫瘍、小腸がん、膵臓がん、胆道がん
特徴的な組み合わせ:結腸がんと子宮体がん、結腸がんと卵巣がん

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