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平成31年(2019年)4月20日(土) / 日医ニュース

5名の赤ひげ大賞受賞者を顕彰

5名の赤ひげ大賞受賞者を顕彰

5名の赤ひげ大賞受賞者を顕彰

 第7回「日本医師会 赤ひげ大賞」(日医・産経新聞社主催、太陽生命保険株式会社特別協賛)の表彰式並びにレセプションが3月15日、医学生も含め約170名の参加者の下、都内で開催された。

 本賞は、現代の"赤ひげ"とも言うべき、地域の医療現場で長年にわたり、健康を中心に住民の生活を支え、その地域のまちづくりに寄り添った活動を続けている医師にスポットを当て、顕彰することを目的として、平成24年に創設したものである。
 表彰式の冒頭、主催者あいさつに立った横倉義武会長は、受賞者の日頃の献身的な医療活動に敬意を表した上で、「『人生100年時代』が到来しようとしており、健康で暮らせる時間をいかに長くするかが大きな課題になっている。健康長寿社会を実現するためには、『予防・健康づくり』に力点を置いた医療が必要であり、地域で働く医師の方々にも、単に病を治療するだけでなく、その予防にまで携わることが求められる」と強調。何でも相談できるかかりつけ医をもってもらうことの重要性を指摘するとともに、日医として地域で活躍する医師の支援に向けて、今後も全力で取り組んでいく姿勢を示した。
 引き続き、選考委員でもある城守国斗常任理事が、選考経過並びに講評を報告。その後、表彰に移り、主催者である横倉会長、飯塚浩彦産経新聞社社長から5名の受賞者に対して表彰状、トロフィー並びに副賞が手渡され、受賞者がそれぞれ謝辞を述べた。
 秋田県の大里祐一医師は、昭和47年に開業した当初は、まだ「地域医療」という言葉が一般的ではなかったと回顧。「はっきりした概念はなかったが、患者さんとその家族、医療従事者だけではなく、地域の皆で構築していく医療を目指していた。公共の交通手段の乏しい山間地域で、通院困難な患者さんの下にこちらから訪問しようと実行してきただけのこと」と謙遜しつつ、受賞の喜びを語った。
 神奈川県の千場純医師は、「権威ある本賞に値するようなことをしてきたのかと省(かえり)みると受賞に戸惑いを覚えるが、40年間の医師人生において、背後で進むべき方向性を示してくれたのは患者さん達だ」と振り返るとともに、「在宅で患者さんの最期に立ち会う中で多くのことを学ばせてもらっている。これからも力の続く限り歩みを進めていきたい」と意気込みを語った。
 新潟県の堀川楊医師は、治療法のない病気を対象として臨床家が成り立つかと悩んだ医局員時代、師事した教授の「キュアし得ない患者にもケアすることはできる」という言葉が、神経内科医としてのライフワークの原点となっていることを説明。退院後の患者の在宅医療を支えるため、多職種で看護と介護を提供する体制を整えるとともに、現場の声を政策へつなげる仕組みを築いてきたことを紹介した。
 長野県の橋上好郎医師は、「私は医師としてやるべきことをやっただけ。たいした業績もないが、ただ62年間の医療活動を評価して頂き、認めてもらったことをうれしく思っている」と述べ、受賞の喜びを表した。
 熊本県の緒方俊一郎医師は、「半世紀の医師生活は、医師会の諸先輩、同僚、地域の人々や職員、また、家族によって支えられてきたものである」と感謝を述べるとともに、「先祖が190年にわたり続けてきた地域医療を自分なりに受け継いで、地域で暮らしている人々に寄り添うことを考えてきた。今後も、心身の許す限り続けたい」との姿勢を示した。

受賞者の崇高な使命感と行動力は現代の赤ひげ―安倍総理

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 引き続き行われたレセプションでは、国会会期中にもかかわらず駆けつけた安倍晋三内閣総理大臣と根本匠厚生労働大臣が祝辞を述べた。
 安倍総理は、「長年にわたり地域住民の健康を支え続けている崇高な使命感と行動力はまさに現代の赤ひげ先生であり、全国30万人いる医師たちの鏡となる存在である」と受賞者の功績を称えた上で、「どんなに科学が進歩しようとも、国民一人ひとりの健康管理や、患者が直面する治療と生活の質の確保は、技術や理論だけで解決はできない」と指摘。こうした課題に対応できるかかりつけ医を中心として、医療・介護が切れ目なく提供される体制の構築を、日医とも協力しながら進めていくとした。

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 根本厚労大臣は、「地域医療には、病気の治療だけでなく、その地域の人々の思いを受け止め、寄り添っていく存在が不可欠だが、地域の中で、さまざまな形で長年にわたり、住民を支えてこられた受賞者の方々はかけがえのない存在である」と強調。厚労省としても、各都道府県と協力しながら、地域での医療・介護の総合的な確保に努めるとともに、医師を始めとする働き方改革や、地域の医師偏在解消に向け、全力で取り組むと述べた。

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 その後は、選考委員である羽毛田信吾氏(昭和館館長・宮内庁参与)の乾杯・あいさつ、檀ふみ氏(女優)、ロバート・キャンベル氏(国文学研究資料館館長)からのゲストスピーチ、向井千秋氏(宇宙航空研究開発機構特別参与・東京理科大学特任副学長)からのビデオメッセージに続いて、受賞者所属医師会を代表して、菊岡正和神奈川県医師会長からあいさつが行われた。
 また、今回は本表彰式とレセプションに参加した医学生からの質問に、各受賞者が答えるコーナーを新たに設けた。
 これまでの中で苦労したことを問われた緒方医師は、夏の暑い日に往診に行った際、真っ暗な部屋の中で便を踏みつけてしまい、電気をつけ、窓を開け、患者を起こして入浴させて、着替えをさせて、洗濯までしてから診察をしたとのエピソードを披露。医療以前の問題を抱える患者達の実情を見て、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の設立に至った経緯を述懐(じゅっかい)した。
 精神的、肉体的に厳しい状況に直面したことがあるかとの問いには堀川医師が、大雨で新築の医院が浸水した際に、職員が診察室を使用できるように尽力してくれたり、患者がパンを届けてくれたエピソードを紹介。真冬の風雪害で停電した際には、往診先の家庭から石油ストーブが届けられるなど、職員や患者に支えられて乗り越えてきたとした。
 この他、赤ひげ大賞公式ホームページ等で募集した「あなたのかかりつけ医への応援メッセージ」と、受賞者の診療の様子をまとめたVTRが紹介され、表彰式並びにレセプションは盛会裏に終了となった。

受賞者の紹介

順列は北から。受賞者の年齢は2019年3月15日現在。

大里 祐一(おおさと ゆういち) 医師

190420a5.jpg83歳 秋田県 大里医院理事長
 120年三代にわたって地域住民の医療・保健・福祉の向上を牽引。「地域医療」という言葉が一般的でない時代から地域住民に寄り添う姿勢を貫き、山間の豪雪地域を4輪駆動車で昼夜を問わず訪問診療を行い、働いている人達が受診できるように「日曜診療」も継続している。阪神・淡路大震災発生時には、率先して避難所となっていた神戸市の小学校に入り、医務活動に当たった他、県会議員を通算5期務め、県の医療政策の策定にも貢献した。

千場 純(ちば じゅん) 医師

190420a6.jpg69歳 神奈川県 三輪医院院長
 「患者さんと家族の気持ちに最期まで寄り添う医療」「頼まれれば断らない訪問診療」をモットーに多施設・多職種と連携の下、在宅医療を実践。在宅医療推進連携拠点「かもめ広場」を開設し、横須賀市と共に、在宅医療の推進に組織的に取り組んできた。また、共助に着目し「支援する」「支援される」関係を構築し、"最期までわが家で過ごせるまちづくり"をライフワークとして、医院に「みんなあつまるしろいにじの家」を併設し、その実現に向け継続的な挑戦を続けている。

堀川 楊(ほりかわ よう)医師

190420a7.jpg78歳 新潟県 堀川内科・神経内科医院理事長
 治療困難で生活障害の重い神経難病の在宅療養患者に対する退院後の在宅ケアの重要性を早くから認識し、昭和53年に勤務していた病院に「継続医療室」を開設。ALS等の患者に対する訪問看護と往診を開始し、地域の医師、保健師、ヘルパーと協働の下、在宅医療を提供してきた。その後、訪問看護ステーションと在宅介護支援センター(現在は居宅介護支援事業所)を併設した現医院を開設し、地域における退院後の受け皿の役割を担い続けている。

橋上 好郎(はしがみ よしろう)医師

190420a8.jpg93歳 長野県 医療法人 健生会理事長
 往診を求められれば、いつでも、どこでも、誰の元にでも駆け付け、24時間体制でお産から手術まで対応してきた。昨年まで村内四つの診療所を回り、山間部の地域医療を支え続け、93歳になった今も現役で介護老人保健施設に従事。幅広い医療技術、知識で住民の信頼も厚く、三代、四代続けて氏をかかりつけ医とする世帯も多い。「患者は家族のような存在」をモットーに身体を診るだけでなく、患者一人ひとりの心にまで寄り添った医療を実践する村の名物先生。

緒方 俊一郎(おがた しゅんいちろう)医師

190420a9.jpg77歳 熊本県 緒方医院院長
 球磨郡内に2カ所しかない有床診療所の一つを、六代目として継承。先祖代々、情熱をもって地域に密着した医療活動を実践し、昼夜を問わず、遠い山間部であっても往診を続けてきた。開業当初より園医、学校医、嘱託医を担うだけでなく、介護保険制度のなかった時代に、何度も県庁に掛け合うなど、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の設立に向けて奔走した。その他、自院の敷地内に子ども達のための言語診療科を併設し、発育支援も行っている。

お知らせ
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 今回の受賞者の日常の活動や表彰式の模様を掲載した冊子『第7回日本医師会 赤ひげ大賞 かかりつけ医たちの奮闘』を『日医雑誌』5月号に同梱する予定です。
 ぜひご覧下さい。

日医広報課

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