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令和元年(2019年)9月20日(金) / 日医ニュース

「勤務医の医師会入会への動機を喚起するための方策について―特に、若手勤務医を対象に―」をテーマに

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「勤務医の医師会入会への動機を喚起するための方策について―特に、若手勤務医を対象に―」をテーマに前列左から、志茂、城守、泉、塩瀬
後列左から、真船、松本、堀田の各氏

「勤務医の医師会入会への動機を喚起するための方策について―特に、若手勤務医を対象に―」をテーマに前列左から、志茂、城守、泉、塩瀬
後列左から、真船、松本、堀田の各氏

 日医の勤務医委員会では、「勤務医の医師会入会への動機を喚起するための方策について―特に、若手勤務医を対象に―」をテーマに座談会を開催した。今後、3回にわたって掲載する。

 泉委員長 本日は自由闊達(かったつ)に、それぞれの思いをお話し下さい。
 城守常任理事 本日は、先生方の忌憚(きたん)のないご意見をお伺いしたいと思います。

働き方改革について

 泉委員長 若手医師の目線での「医師の働き方改革への対応」についてご発言下さい。
 松本 "働き方改革"そのものは、もしかしたら若手医師に「医師会に入った方がメリットがある」と思わせる、いいチャンスかも知れません。
 日本救急医学会では、「医師の働き方改革」について6項目からなるアクションプランを作成しました。常設の特別委員会を設置し、学会員に対してしっかりと労務管理に関する講習を行い、ブロックを決めてサイトビジットをして、労務管理がきちんとできているかどうかを毎年チェックすることを検討します。
 タスクシフティングについても、メディカルコントロールの下で、一人の患者さんを他職種に任せていくような仕組みにしなければいけません。そういった議論にしっかりと関わっていくという内容が含まれています。本年11月には最終報告を出す予定です。
 日医としても、若手医師が安心して働けるよう、この課題に取り組んで頂きたいと思います。
 塩瀬 心臓外科は救急患者なども多いため、現状のままの運営を続けることは難しいと考えています。
 私はアメリカでの経験が8年ほどあり、レジデントとフェローをトレーニングするスタッフの立場でした。アメリカの臨床では、例えば夜、帰り際に救急患者が来た時なども完全当直制にして対応しています。
 また、このエリアでは、この病院が絶対に受けるというようにしてしまうといった当番制の仕組みを構築することも大事だと思います。アメリカでは夜間にレジデントを呼べないし、呼ぶとペナルティがかかります。ICUに入ってしまえば救急やICUの専門医の先生が診てくれ、出血した時だけ呼ばれるというシステムがしっかり出来上がっており、休養を取って次の手術に臨めました。患者さんにも、病院経営的にも良いと感じました。ここまで頑張れば大丈夫というものがないといけないと考えています。
 また、65歳でも素晴らしい外科医もおられるし、そこで現役を退くのはもったいないと思います。アメリカでは、そのような先生は、執刀はしないにしてもスーパーバイザーとして大事なところだけ手伝うことで、その病院をずっとサポートし続ける制度があり、非常に良いと思っています。
 堀田 松下記念病院は、パナソニック関連ということでコンプライアンスが徹底されていますので、勤務時間は短いと思います。月の残業時間は80時間を基本的に超えないようになっていますし、超えた時点で上司が呼び出されます。
 中堅の立場で部下の指導もしながら現場を統括する立場にいる私が一番長いぐらいで、80時間を超えるのが年に2回、3回。必要に応じて産業医からの呼び出しもあります。
 私自身がレジデントだった頃は、月の残業時間が200時間を超えていました。月の当直が5~8回、一年のオンコールが350日という環境に自ら望んで勤務していましたが、翻(ひるがえ)って今の職場の若手医師の環境を見た時に、経験数そのものに依存せず、適切にスキルアップできるように考えながら指導しています。
 真船 私は、茨城県の総合病院に勤務していますが、日立製作所のコンプライアンスの問題もあるのでしょうし、あるいは今の若手2人が仕組みを整えてくれたおかげで、ファースト、セカンドコールはきちんと決まります。主治医制は保っているのですが、ファースト、セカンドコールは保って、夜は看護師からの連絡はほとんどないというような状況にして、比較的働きやすい環境にはなってきていると思います。
 当直後に半休などをしっかり取らせるというような方向に働いたことと、以前と比べ、周りの科の先生の理解というか、固定観念のようなものが変わってきたことが大きな要因ではないかと思います。
 ただ、地方で外科医の少ない病院では、こういった運用は難しい部分もありますので、地域全体の外科医の数をある程度コントロールできるような状況になっているといいと思います。
 志茂 私は、聖マリアンナ医科大学病院の医局に所属していますが、最近、研修医の働き方が一番に変わったと実感しています。
 私が研修医だった時は、例えば夜間救急で働いて、翌日もその担当の科で働くという形だったのですが、今は夜間救急で働いた翌日や緊急の手術で呼び出された翌日は休みをもらえるようになり、研修医の働き方に関しては病院自体が厳しく目を光らせるようになっています。18時以降に帰りたいという研修医も数人いますが、自分の勉強のために残るという人が多いです。
 しかし、研修医以降に関しては、依然として所属した科で決める形になっています。私が所属している乳腺外科は女性医師がほとんどで、男性医師が数少ないのですが、若い女性医師は出産して復帰したいという人が多いものの、子育て中だと思うように昔のように働けないということで、そこの働き方をどうするかというところを悩んでいます。
 私も今、子育てをしながら働いており、当直や早朝のカンファレンス、夜遅いカンファレンスなどは免除してもらっていますが、その仕事のしわ寄せが結婚・出産していない女性医師や、男性医師に行ってしまって、そのところの負担が増えているということが問題だとは思います。
 塩瀬先生から、リタイアされた方が手術に手伝いに来てくださるという話がありました。私は今、常勤一人で働いているのですが、手術する時は大学を辞められた女性医師が一人来て下さって、二人で手術を行っています。十分に経験を積まれた医師なので、そこのところはやりやすく仕事ができていると感じます。
 塩瀬 カンファレンスは朝6時半から行っていますが、それが終了したら、いつ帰ってもいいというようにはしています。これで夕方に会議を予定すると、そこまでいないといけないので、朝だけは集まろうという形にしています。
 働き方改革に関しては、センター化や輪番制によって夜の時間をキープすることが、外科系では必要だと思います。若手医師が勉強する時間もないでしょうし、次の日の診療にも影響が出ます。まずは、輪番制を進めていこうと思っています。
 もう一つ、アメリカと大きく違って違和感があるのは主治医制です。緊急時に主治医が呼ばれ、患者・家族も当然と思うのでしょうが、医師会から「当直帯には当直が対応し、主治医は来ないものです」と言って頂けると、それだけでも違うと思います。
 松本 日医が勤務医からの支援を得られるとすれば、塩瀬先生のお話が極めて重要だと思います。要はチームで診るということです。「必ずしも主治医が出てくるとは限らない」ということを日医が情報発信すれば、勤務医にとっては日医がすごく心強い、自分達を守ってくれる組織として感じられると思います。

勤務医座談会出席者
泉  良平 【司会】(日医勤務医委員会委員長・富山県医師会副会長)
塩瀬  明 (九州大学大学院医学研究院循環器外科学教授)
志茂 彩華 (川崎市立多摩病院医長)
堀田 祐馬 (松下記念病院医長)
松本  尚 (日本医科大学千葉北総病院副院長)
真船 太一 (日立製作所ひたちなか総合病院外科)
城守 国斗 (日医常任理事)
(敬称略)

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