日医ニュース 第861号(平成9年7月20日)
21世紀初頭に向けての在宅医療について(厚生省)
厚生省は、「21世紀初頭に向けての在宅医療について」と題する報告書をこのたび発表した。
それによると、今後の在宅医療の基本的考えとして、在宅医療の目的は、患者宅における適切な医療提供を通じて、患者の精神的・肉体的自立を支援し、患者とその家族のQOL(生活の質)の向上を図るとともに、慢性疾患患者に対する医療提供体制については、「在宅患者を支援する医療も重視した医療提供体制」への転換が必要としている。
今後の在宅医療の方向のなかで、患者が在宅医療を主体的に選択できるための体制整備として、(1)適切な在宅医療を提供できる医療機関の確保と医療情報の提供の推進(2)医療・福祉等患者の相談に全般的に対応できる体制の整備(3)在宅医療の適切な導入(患者へのわかりやすい説明)(4)在宅患者への在宅医療支援体制の整備(かかりつけ医・かかりつけ歯科医の定着・普及)(5)在宅医療関連サービス事業の推進―を挙げている。なかでも、在宅医療を適切に実施するための「在宅医療学」の確立を必要としている。
さらに、在宅医療推進のための技術開発として、(1)在宅医療の新技術の開発の推進(使いやすく、小型の在宅医療機器)(2)遠隔医療の推進(3)情報通信技術を活用した処方せん(電子処方せん)等の活用(4)医療情報の共有化と患者プライバシーの保護―を挙げている。
このほか、患者負担の在り方については、治療上必要なサービスであって、在宅医療として医療上適切なものについては公的医療保険の給付の適用範囲とすることを基本に検討すべきと述べるとともに、在宅医療の類型別提供体制について、今後、在宅医療は「看護や介護が中心の在宅医療」、「患者自ら医療技術を用いる在宅医療」、「在宅末期医療」の3類型に分類され、それぞれの類型の特性に応じて在宅医療の提供体制を整備すべきと報告している。