日医ニュース 第900号(平成11年3月5日)

介護保険制度の概要9


平成10年度モデル事業について

 「介護保険制度の概要」シリーズの9回目は,平成10年9月30日から11月30日までの2カ月間にわたり,全国で行われた
  「平成10年度高齢者介護サービス体制整備支援事業」(以下 モデル事業)の実施状況および結果について解説する.

1. モデル事業の概要

  介護保険制度の円滑な施行を目的として,平成10年度は全国3,255市区町村(1,787地域)において,モデル事業(「要介護認定に関する試行的事業」および「介護サービス計画の作成」)が行われた.
 過去2回のモデル事業との主な変更点は,(1)介護認定調査の基本調査票に「特別な医療」の12項目が加えられたこと,(2)介護認定審査会で基本調査結果の一部修正が行われるようになったこと,が挙げられる.モデル事業の返還について,表1にまとめる.

表1.モデル事業の変遷
  平成8年度 平成9年度 平成10年度
実施地域数 60地域 416地域
(905市町村)
1,787地域
(3,255市町村)
対象者数 5,595人
在宅:2,753人
施設:2,842人
41,059人
在宅:20,813人
施設:20,246人
175,129人
在宅:92,312人
施設:81,988人
調査項目 71項目 73項目 85項目
(うち,“特別な医療”
12項目)
二次判定
自立
要支援
要介護1
要介護2
要介護3
要介護4
要介護5

86人(1.5%)
525人(9.4%)
466人(8.4%)
979人(17.6%)
1,004人(18.0%)
1,337人(24.0%)
1,117人(20.1%)

1,725人(4.2%)
2,812人(6.9%)
2,562人(6.3%)
5,737人(14.1%)
8,253人(20.2%)
9,893人(24.2%)
9,180人(22.5%)

12,121人(6.9%)
13,231人(7.6%)
32,461人(18.5%)
37,137人(21.2%)
38,134人(21.8%)
23,158人(13.2%)
14,039人(8.0%)

判定変更率 27.6% 23.2% 12.5%
変更率5%●未満の地域 3地域●(0.7%) 826地域●(47.2%)

2. 平成10年度モデル事業の実施状況

 平成10年度のモデル事業は,過去2回に比べ,実施地域・対象者とも最大規模で行われた.以下では,今回のモデル事業で得られた主な結果をまとめる.
(1)二次判定結果について
 二次判定結果における要介護度の分布について,図1に平成9年度と比較した結果を示す.平成9年度においては,「要介護4」および「要介護5」と判定されたものが,全体の約50%近くを占めていたが,平成10年度には,わずか21%に減少し,特に「要介護5」は,わずか8%に止まった.

 また,二次判定における要介護度の変更について,全体の約半数近い826地域で変更率が5%未満に止まり,まったく変更がなかった地域が287地域(16.4%)であった.このことは,要介護状態区分変更等事例集による判定変更の縛りが主な原因と考えられ,本制度施行に向けて,(1)事例集の存否(2)介護認定審査会の位置づけの明確化などが課題となる.
(2)介護認定審査会について
 次に,介護認定審査会委員の構成について表2に示す.
 介護認定審査会には,全国で約12,000人の審査会委員が参加した.うち医師委員は4,171名と最も多く,全体の35%を占めた.一地域の平均委員数は6.7名で,うち医師は平均2.3名であった.

表2.介護認定審査会委員の構成
職 種 人 数 割 合
 医師 4,171人  0.353% 
 歯科医師 967人  0.082% 
 保健婦 1,164人  0.098% 
 看護婦 1,027人  0.087% 
 社会福祉士 451人  0.038% 
 介護福祉士 553人  0.047% 
 その他 3,486人  0.295% 
 合計 11,819人  100.0% 

 次に,介護認定審査の所要時間内訳について,表3に示す.
 要介護認定の審査判定に要した時間は,審査会自体は一件当たり約5分であった.また,かかりつけ医意見書の準備には約2週間を要し,平均して31.3日を要する結果となった.
 意見書については,制作時間の短縮および内容の充実が今後の課題とされ,「給付対象になることが想定される患者については,あらじめ意見書を準備しておき,作成を依頼された際に,直近の状態にあわせて内容を一部修正する」ような方法を日医としては考えるべきと思っている.

表3.介護認定審査に要した時間
 かかりつけ医意見書入手に要した日数 13.9日

審査判定時間

 資料作成時間 11.5分/件
 審査会開催時間 5.0分/件
 合計時間 16.5分/件
 審査判定に要した総日数 31.3日

(3)介護サービス計画作成について

 最後に,介護サービス計画作成の平均所要時間を,表4に示す.
 要介護認定の後,一地域10名の在宅対象者について,実際に介護サービス計画が作成された.計画作成には4時間半もの時間がかかっており,特にアセスメントおよび原案作成にはおのおの1時間を超える時間を要しており,差の短縮が今後の課題である.

表4.介護サービス計画作成の各過程における平均所要時間

計画作成過程

平均所要時間(時分)

 課題分析(アセスメント) 1時間50分  
 介護サービス計画原案の作成 1時間44分  
 サービス担当者会議資料作成作業 24分  
 サービス担当者会議開催時間 31分  
 合計時間 4時間28分  



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