介護保険制度の概要(16)
介護保険制度における医師の役割
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「介護保険制度の概要」シリーズは平成10年7月以降,毎月1回掲載してきたが,今回で終了する.最終回は介護保険制度における医師の役割について解説する. |
介護保険制度は,現在,平成12年4月の制度施行に向けて行政・民間さまざまなレベルで準備が進められている.この10月からは事前準備として要介護認定の申請および認定作業が開始されるが,介護保険は,制度設計上,医師の参画・協力がなければ運営できない仕組みになっているので,医師の役割について解説する.
介護保険制度における医師の役割は大きく3つに分けられる.すなわち,(1)訪問介護,訪問看護等の居宅サービスや療養型病床群等の施設サービスなど介護保険を利用する地域住民(被保険者,家族等)に対する相談・助言等,(2)訪問介護,訪問看護等の居宅サービス事業者や居宅介護支援事業者(ケアプラン作成機関)に対する情報提供や指示・指導など,(3)訪問看護や居宅療養管理指導などの医療系居宅サービスならびに療養型病床群等の施設サービスの提供である(図1参照).
このように医師には,介護保険制度に参画して高齢者等のQOLの維持・向上に努めることが求められている.
- 外来や訪問診療等の患者に対する相談と助言
地域住民が訪問介護,訪問看護等の介護保険サービスを利用するには,市区町村窓口での手続き,また,各種居宅サービスを提供する指定事業者の選定などが必要なので,かかりつけ医は相談を受けたり,助言等を行う.
- 「主治医意見書」の作成
介護保険サービスの利用に関して申請のあった被保険者について,市町村または本人からの依頼を受け,要介護認定の二次判定に重要な役割をもつ「主治医意見書」を作成・提出する.
- 介護認定審査会の委員として認定審査に従事
制度の要である要介護認定を行う「介護認定審査会」の委員となり,医療分野の専門家として審査判定作業に従事するとともに,審査会における二次判定のリーダーシップをとることが求められる.
- 介護サービス計画の作成時における指示・指導
要支援・要介護者に対して居宅介護支援事業者(ケアプラン作成機関)が行う介護サービス計画(ケアプラン)の作成過程で主治医として医療的部分についての指示・指導を行う.
- 介護保険にかかわる居宅・施設サービスの提供
介護保険にかかわる訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション・短期入所療養介護(ショートステイ)および居宅療養管理指導の医療系居宅サービスならびに療養型病床群などの介護療養型医療施設等の施設サービスを提供する.
- 要介護者等に対する継続的な相談と助言
要介護者等が訪問看護等の居宅サービスおよび施設サービスを利用中においても,継続的な医学的な管理を通してケアプランの見直し(入院・入所施設の見直し,在宅・施設の選択など),要介護度の見直し等について相談を受け,助言等を行う.
【訂正】本シリーズ9月5日号の「(3)訪問看護ステーション」の記載に間違いがありましたので,お詫びして訂正させていただきます.
「…「指定訪問看護事業者」,老人保健法による「指定老人訪問看護事業者」の3種類が存在する…」を「…「指定訪問看護事業者」が存在,また老人保健法による「指定老人訪問看護事業者」は廃止されるが,「老人訪問看護療養費の給付」は残る」とする.表1の「指定老人訪問看護事業者」の下に「(事業者廃止・老人訪問看護療養費)」を挿入.
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