日医ニュース 第934号(平成12年8月5日)
日医総研フォーラム9
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相次ぐ薬価引き下げにもかかわらず,製薬メーカーは高利益を維持しており,医薬品業界のなかで独り勝ちを収めているともいわれています.しかし,本当のところはどうなのでしょうか?その実態を検証するため,日医総研では,先ごろ公表された各社の1999(平成11)年度の決算短信をもとに製薬会社の経営実態の分析を行いました.今回から3回シリーズでそのサマリーを報告します. 第1回.上位製薬メーカーの位置付けと卸との関係 第2回.企業別の財務指標の比較 第3回.外国企業との比較,製薬メーカーの総合力 |
第1回 上位製薬メーカーの位置付けと卸との関係 |
上位企業の売上高総額は4.2兆円,GDPの1% 経常利益総額は9,000億円,国民医療費の3% 製薬メーカー対卸,利益配分は9:1 |
「R」が下がるほど卸の粗利も低下 製薬メーカーと医薬品卸との力関係の差は,薬価引き下げの影響をどの程度受けるか,という点にも現れている. ここ最近では,平成8年度以降,平成9年4月に4.4%,平成10年4月に9.7%,2年連続して薬価引き下げが行われている.しかし,この2回の薬価引き下げに連動して,製薬メーカーの売上高が低下した年は1度もない. 一方で,卸はどうだろうか.医薬品卸売業界では,大手が中小を吸収合併する動きが活発であり,そのせいもあって大手卸は着実に売上高規模を拡大している.一見したところ,薬価引き下げの直接的な影響は見受けられない.しかし,売上高以上に売上原価,つまり製薬メーカーから仕入れる商品コストが増加しているのである. また,売上原価率も上昇している.4年前には大手卸の売上高原価率(売上高に対する仕入価格の割合)の平均は86.6%であったが,1999(平成11)年には88.6%に達している.なかには売上高原価比率が90%を超え,粗利ですら10%を確保できていないところもある.また,製薬メーカー経常利益は「R」が下がるほど増加しているが(図2),これと正反対に,卸の売上原価率は「R」が下がるほど,上がる傾向にある.製薬メーカーとの関係において,卸の生き残りはますます厳しくなりそうだ. |
業界全体で見ると優位にある製薬メーカーですが,個別の企業はどうなのでしょうか.次回は,企業別の財務指標を見ながら,製薬メーカーの「勝ち組み」と「負け組み」を探っていくこととします. |
詳しい分析資料は,日医総研ホームページ(http://www.jmari.med.or.jp/)でご覧になれます.「資料・読み物」のコーナーから「日医総研ワーキングペーパー」を選んでください.