日医ニュース 第954号(平成13年6月5日)
日医総研フォーラム16
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前回の検証の視点ならびに経済波及効果分析の構図に引き続き,今回は,経済波及効果の検討結果について述べる. |
(3)経済波及効果の検討結果 |
注1:家計外消費支出を含む金額
注2:従業者の定義は,個人業主,家族従事者,有給役員,雇用者等をすべて合計した数値
1)生産誘発額
将来(2015年)の生産誘発額は,将来医療費60.2兆円が,さまざまな産業に波及した結果,将来医療費の2.7倍の162.6兆円にも達する.
そして,この将来の生産誘発額は,1996年の現状医療費30.3兆円による生産誘発額81.8兆円に対し,約2倍に達するものである.
2)粗付加価値誘発額
粗付加価値誘発額は,これから家計外消費支出(主に企業の交際費等で,全体の3.4%)を除いたものが,国内総生産(GDP)にほぼ対応する性格のものである.
2015年の粗付加価値誘発額は,将来医療費60.2兆円によって,その1.5倍の90.6兆円に達する.
さらに,ほぼ同じ性格の金額であるGDPに占める割合をみると,1996年には国内総生産額500.3兆円に対し9.1%(45.6兆円)であったものが,2015年にはGDP670兆円に対し13.5%(90.6兆円)をも占める,重要な産業として位置づけられるものとなる.
3)従業者誘発数
医療費による従業者誘発数(個人業主,家族従事者,有給役員,雇用者等をすべて合計した数値)は,1996年に623万人であったものが,2015年には,906万人にも達する.
これについて,全国の就業者数(「労働力調査」による就業者数で,雇用者(有給役員を含む),自営業者,家族従事者の合計)に占める割合をみると,1996年には全国就業者数6,486万人に対し9.6%(623万人)であったものが,2015年には全国就業者数6,162万人(日医総研推計)に対し14.7%(906万人)までをも占めるものとなる.
なお,将来(2015年)の全国就業者数は,年齢階級別人口の予測値(中位推計値)に,現状における年齢階級別人口に対する各就業者の比率を掛けて求めたもので,政策を加味した値ではない.
4)税収誘発額
医療費によって誘発される税収額は,直接税・間接税併せて,1996年に8.1兆円であったものが,2015年には16.1兆円にも達する.
これについても,全国の税収額に占める割合をみると,1996年に全国税収額90.3兆円に対し9.0%であったものが,2015年には全国税収額122.7兆円(日医総研推計)に対し13.1%(16.1兆円)までをも占めるものとなる.
5)他産業との総合粗付加価値係数の比較
さらに,わが国産業界全体のなかで,他産業に比べた医療の果たす役割の大きさをみるために,総合粗付加価値係数を検討した.
総合粗付加価値係数とは,医療費等の単位当たりの消費額(最終需要)によって誘発される,直接・間接の粗付加価値額の合計を各産業ごとにあらわしたもので,これによって同じ消費額等によって誘発される粗付加価値額の大きさを,産業間で比較することができる.
ここで総合粗付加価値係数を取り上げたのは,通常行われている生産額ベースで波及の大きさを測る生産誘発比率だけでは,売り上げベースの生産額への波及の大きさは分かるものの,粗付加価値すなわち企業でいう粗利益への波及の大きさは分からないからである.
この総合粗付加価値係数をみると,医療の場合0.958479という値で,全産業平均の値0.850891より高く,また建設(0.935017)や,輸送機械(0.852644),電気機械(0.801139)よりも高い値となっており,医療の粗付加価値(粗利益)ベースでの波及力の大きさが分かる.
特に,「国内総固定資本形成」に大きく依存する建設よりも高い値であるということは,付加価値レベル(GDPレベル)では,公共投資に比して医療費等の消費の拡大の方が効果的であることを示している(図2).
資料:平成7年(1995年)産業連関表「総務庁」
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(4)各種経済波及効果の評価 |
このように,医療・介護は,国民にとって,「医療・介護サービス機能」として重要であるとともに,21世紀において,国民経済への波及効果の高い力強い産業として,非常に重要な位置付けがなされるべきものであることが明らかになった.
詳細は,日医総研報告書No.24「経済的視点からの『医療のアウトカム(成果)』医療費(含む介護費)の経済波及効果について」を,参照ください.入手方法および価格は報告書No.27の<案内>と同じです.
ご質問・ご意見は,FAX:03-3946-2138 E-M jmari@jmari.med.or.jp
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