日医ニュース 第959号(平成13年8月20日)

第1回触法精神障害者問題検討委員会(プロジェクト)
医療と司法のかかわりについて検討


 第一回触法精神障害者問題検討委員会(プロジェクト)が,八月三日,日医会館で開催された.
 冒頭,坪井栄孝会長は,「今年六月八日に池田市で起きた小学生の殺傷事件を契機として,触法精神障害者の問題が社会問題になっていることを受けて,この会議を開くことになった.触法精神障害者の治療,処遇について,医師会には意見を申し述べていく責務があると思っている.国民生活の安全を保持するためにも,ここでまとめられた議論を政府に提言していきたいと考えている」と述べた.
 引き続いて,坪井会長は中谷陽二筑波大学社会医学系精神衛生学教授を委員長に指名し,諮問書「触法精神障害者の処遇及び精神鑑定のあり方等について」を手渡した.これを受けて,中谷委員長は,「触法精神障害者の処遇をめぐって情勢は動いているが,責任ある意見をまとめていきたい」とあいさつした.
 担当の西島英利常任理事は,「二年前,衆議院に参考人として呼ばれ,精神保健福祉法の改正にあたって意見陳述を行っている.そのときは,三年をめどに触法精神障害者に関する課題の決着を図る予定だった.今年の一月には法務省,厚生労働省で検討会が始まり,事件後の七月六日には日医が与党三党に呼ばれ,触法精神障害者問題について意見陳述を行った.そこで,医師は精神障害者の病状に対する責任はもてるが,こうした社会的防衛の役割を負うことはむずかしいと話した」と経緯を説明した.
 中谷委員長は,解決すべき課題として,(1)この問題は戦前から議論されているが,新しい制度,立法措置は必要か(2)対象者をどうするか(どういう基準か)(3)決定機関はどこか(4)どういう手続,手順が必要か(5)どういう施設で治療するか─などがあると指摘した.
 この後,触法精神障害者の処遇および精神鑑定のあり方等について協議し,各委員は,現在の医療体制,社会体制の問題点について自由に意見を述べた.
 最後に,中谷委員長は,「いずれにしろ,何らかの具体的方策が必要であることは,どの委員も共通した認識だと思う」と述べ,今後,さらに議論をつめていくこととした.


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