日医ニュース 第984号(平成14年9月5日)
中医協総会 手術の施設基準を見直し 長期入院除外規定追加決定 |
中央社会保険医療協議会(星野進保会長)は,8月21・23の両日,総会を開き,日医がかねてから問題視していた,「長期入院に係る入院基本料等の特定療養費化の除外規定」,および「手術の施設基準」について協議を行った.その結果,前者は,ほぼ日医の要望どおり除外対象が拡大され,後者についても条件が緩和されることになった. |
除外規定が14項目に拡大(8月21日) |
当日は,百八十日超の長期入院に係る入院基本料等の特定療養費化における除外規定について,中医協事務局より案が示された.
これは,七月三十一日の総会で,五名の医科診療側委員から星野会長宛に出された意見書において,除外規定とするべきであるとされた六項目((1)末期の悪性腫瘍(2)呼吸管理を要する状態(3)栄養管理を要する状態(4)術後管理を要する状態(5)肺炎等感染が持続している状態(6)小児の長期入院患者)─を受けて作成されたものである.
このなかでは,(1)麻薬投与または神経ブロックによる疼痛管理が実施されている末期の悪性新生物患者(2)気管内挿管,気管切開または酸素吸入(酸素吸入がない場合に酸素飽和度が著しく低下する患者に限る)の呼吸管理が実施されている患者および常時頻回の喀痰吸引を実施されている患者(3)抗生物質(注射薬)が投与されている患者(4)強心剤等(注射薬)が投与されている先天性心疾患等の患者─を,特定療養費化の除外規定の各項目に「準ずる状態にある者」として追加することが明記されている.
除外規定案は,支払側委員の意見も踏まえたうえで内容どおり了承された.これにより,除外規定は以前の九項目から十四項目となった.なお,意見書にあった栄養管理を要する状態にある者については,他の項目と併用で特定療養費化の対象から除外されている者が多いことから,除外規定から外された.
つづいて,手術に係る施設基準の届出状況について四月分の速報値が示された後,今までの基本的な考え方を維持しつつ,今後の運用基準を,(1)手術のグループ化の見直し(2)術者の専門性の評価による症例数要件(3)救命救急センターにおける手術─という三つの方向で改善していく考え方が中医協事務局より示された.
青柳俊副会長は,当面の改善策には了解しつつも,「手術件数を要件とするのであれば,アウトカム・リサーチを中心とした調査研究体制を整えるべきである」として,今回改定の拙速さを批判するとともに,案はあくまでも当面の対応策にすぎない点を強調した.
最後に,日医より「『緊急レセプト調査』最終報告」が資料として提出された.
青柳副会長は,最終報告の説明のなかで,「平均値だけで診療報酬を決めていたのでは,倒産する危険にさらされる医療機関も出てくる」と従来型の対応に限界を示すとともに,中医協が単に診療報酬設定だけでなく,医業経営についても議論を進め,現実に即した対応を考えていくべきであると主張した.
この他,(1)健康保険法等の一部改正に伴う療養担当規則等の改正(2)医薬品の薬価収載(九成分十二品目)(3)臨床検査に係る保険適用の取り扱い(二件)(4)医療用具に係る保険適用の取り扱い(5)歯科用貴金属の価格改定(6)特定機能病院における包括評価(7)医療費の動向─などについても中医協事務局より説明があり,(1)〜(5)は,中医協としてこれを了承した.
手術の新グループ化設定(8月23日) |
まず,高度先進医療の見直しについて,中医協案が示され,それを基に議論が行われた.中医協案は昨年十一・十二月の中医協での議論を踏まえて作成されたもので,(1)対象となる医療技術等の範囲(2)実施医療機関の施設要件(3)高度先進医療専門家会議─の見直しなどが盛りこまれている.
当日は結論が出ず,引き続き議論していくこととなった.
次に,「手術の施設基準の運用について(案)」が中医協事務局より示された(下表).
「手術のグループ化の見直し」では,「施設基準に係る手術項目の取り扱いの見直しについて(案)」が示されて,下表のとおり,手術項目数が簡素化されて,新たに大きなグループに分類することとなった.
これによって,今まで多数の手術症例数を必要としていた要件が,実質的に緩和されることになる.
「術者の専門性の評価による症例数要件」では,「手術症例数が基準の六○%以上を満たす医療機関」で,「専門医等が手術を行ったとき」には,減算を行わないことに変更された.
「救命救急センターにおける手術」では,救命救急センターで行った脳動脈瘤被包術,脳動脈瘤流入血管クリッピング,脳動脈瘤頸部クリッピング,肝切除,肺切除については減算を行わないこととなった.
これらの案に対して,診療側,支払側とも賛成であると述べた.
青柳副会長は,「今回の案はあくまで臨時的な対応策であり,今後は,手術数などのエビデンスを集積して,調査・研究を行う体制を作ってほしい.われわれも,今日認められた新しい枠組みについて,検証していく.今後の診療報酬改定に対応できる体制も整えたい」と述べ,今回の案で,地域医療に対していびつになっていたものが改められるだろうとの認識を示した.
また,櫻井秀也常任理事と菅谷忍常任理事は,これらの手術の施設基準の運用に「専門医」「認定医」がかかわることについて触れ,あくまでも補足的なルールで,今回だけの対応であることを確認した.