日医ニュース
日医ニュース目次 第1004号(平成15年7月5日)

医療分野における規制改革に関する検討会
医師の紹介予定派遣容認
櫻井常任理事

医療分野における規制改革に関する検討会 医師の紹介予定派遣容認 櫻井常任理事 医療資格者の労働者派遣は,これまで法律で規定されている港湾運送業務,建設業務,警備業務とともに,政令の規定によって労働者派遣事業制度の適用除外業務とされてきた.
 しかし,本年三月に社会福祉施設等における医療関連業務については派遣事業が解禁されたことなどを踏まえ,医療機関においても認めることはできないかということで本年四月より,検討会で議論を開始することとなった.

医師の紹介予定派遣を認めた理由

 医療機関への労働者派遣を認めてこなかった理由は,医療機関が派遣労働者を特定できないことや,派遣労働者が頻繁に入れ替わることで医療スタッフや患者さんとのコミュニケーションや信頼関係に支障が生じる不安があったことが挙げられる.そのため,日医は,検討会の議論のなかでも,当初は,派遣を認めることによる医療の質の低下を懸念し,医療資格者の労働者派遣に反対する立場をとってきた.
 今回,紹介予定派遣に限って労働者派遣を認めた一番の理由は,今国会で労働者派遣法の改正案が成立したことにある.
 これによって,(1)従来は認められていなかった派遣就業開始前の面接,履歴書の送付等が可能となったため,派遣労働者を事前に特定できるようになる(2)紹介予定派遣は直接雇用を前提としているため,派遣元事業主の意向だけで派遣労働者が入れ替わることは想定されず,チーム医療に支障が生じるおそれがなくなる─と判断し,今回の報告書の内容を認めることとした.

医師の紹介予定派遣事業の今後の展開

 条件付ではあるが派遣労働を認めることで,派遣事業者が間接的ながらも医業のなかに入ってきて,医師の人事権を掌握してしまうのではないかとの懸念の声も聞かれる.報告書のなかにも,導入後の検証を行い,必要に応じて,適宜見直しを行うとの記述もあり,今後の推移を見守っていきたい.
 一方,日医としては,今回の仕組みをうまく利用できれば,医師・看護師不足に悩む地域での問題解決に役立つのではないかと考えている.都道府県医師会が,現在行っているドクターバンクのノウハウを活かして,あるいは大学等とも連携することによって,積極的に医師の紹介予定派遣事業に取り組んでいっていただきたいと期待している.
 実際に実施されるまでにはつめなければならない部分も残っており,それまでには日医としても考えをまとめていきたい.

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