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第1029号(平成16年7月20日) |
植松会長,英国医師会雑誌編集長と会談
患者の安全や医の倫理について議論
スミス氏(手前)と会談する植松会長(左)と橋本常任理事
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植松治雄会長は,六月十一日,来日中の英国医師会雑誌(BMJ:British Medical Journal)の編集長であるリチャード・スミス博士と会談した.
スミス氏はBMJ編集長であるとともに,BMJ出版(BMJ Publishing Group)最高経営責任者,およびロンドン大学衛生熱帯医学校の客員教授である.スミス氏はロンドン出身で,エジンバラの医学校に通い,一九七六年に医学部を卒業.研修期間中には幹細胞の動力学とアポトーシスを研究し,実験病理学の優等学位を取得,首席で卒業した.卒業後は一九七九年にBMJに加わるまで,スコットランドとニュージーランドで病院に勤務し,一九九一年より編集長となる.
会談では,英国の事情について,次のような内容の話がなされた.
医療事故への対応を急務とする英国では,国家患者安全庁(NPSA)を新たに設置し,医療事故の調査を行い,効果を上げている.BMJでは,一九九〇年来,医療事故についての問題を論説で取り上げ,病院における医療事故の発生率の分析を行ってきた.また,“Quality and Safety in Health Care”誌の発行,NPSAとの協力によるウェブサイト上での啓発などを行い,医療事故の再発防止に努めている.
医の倫理への取り組みについては,「医療審議会」の“Duties of Doctors”と英国医師会(BMA)の“Handbook of Medical Ethics”という二つの綱領,BMAの医の倫理のエキスパートによる会員へのアドバイス,“Journal of Medical Ethics”の発行等を通じて対応を図るものの,いまだ問題は山積している.
国民保健サービス(NHS)では,高度医療技術に地域差が生じている.三〜四年程前から高度医療技術の治療効果の費用便益をエビデンスで検証する試みが行われ,NHSへの適用を検討している.
政府との関係では,BMAは慎重な姿勢をとっている一方で,加入率八〇%を基に医師を代表した声として,政府への影響力を保持している.
BMAの生涯教育は,BMJの出版グループが支えている.すべての医師は,「個人能力開発プログラム」を持ち,BMAのウェブサイト上の自己学習プログラム等を通じて自己啓発に努めている.
最後に,BMJは投稿原稿(年間七千件,内七%が掲載),論説,ニュースの充実と同時に,娯楽性も追及し,「義務感からではなく,楽しく読める雑誌」を目指すことが編集方針とされている.
(詳細は,日医雑誌平成十六年九月一日号に掲載予定)
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