日医ニュース
日医ニュース目次 第1072号(平成18年5月5日)

役員業務紹介
─就任にあたっての抱負と担当業務を紹介─

竹嶋 康弘 副会長
政策担当(医療保険,介護・福祉,薬事),地域医療担当,医療政策担当,日医総研(所長),図書館(館長)

 この四月,小泉純一郎首相が在任五年を超えた.「毎日毎日,精いっぱい全力投球でいこうとの思いだけだった.気がついたら,もう五年が経っていた」と,振り返っておられた.植松治雄前会長も同じお気持ちで努めてこられたことと思う.特にご在職中の二年間は,医療制度改革や診療報酬の大幅な改定など,厳しい医療環境への対応を迫られただけに,執行部の皆様も毎日毎日が緊張の連続であっただろうと,ご慰労申し上げたい.
 その後を,唐澤人新会長が引き受けられた.まさに今,医療制度改革案が本国会審議に上程されている.唐澤会長を支え,私たちも,より緊張感をもって,会員の皆様とともに,日本のより良い医療の達成のために全力を尽くしていきたい.
 医療制度改革の立案,その実現のための政府や関係省庁への働き掛け,そして,その政策や施策のなかで実際に医療を提供する地域医療の円滑な推進に向け,すでに活動を開始している.日医総研の積極的活用に向けての,担当役員と研究員,管理職との目的や意思の確認作業,総理官邸へ小泉首相を表敬訪問,川崎厚生労働大臣等,関係省庁の幹部と会し,今後,できるだけ対話を図っていくことを確認し合った.

宝住 与一 副会長
総務担当(庶務,財務,会務一般),医賠責担当,広報担当

 医師会は何のためにあるのか.会員の利益を守るためにある.そのためには,最終的に,会員相互の連携を密にし,国民に,良質で安全な医療を提供することだと思う.
 そして,会員,国民とも医師会(都道府県医師会等も含む)との距離を縮め,国民,医師相互に,信頼関係を構築することが,肝要と思う.
 それには,会務の運営を始め,政策決定の経過,プロセスを分かりやすくし,医師会の活動が,会員,国民に理解されやすく,また,その反応を知るシステムを持つことだと思う.
 そして,医師会の活動が,医師の利益を追求していると思われているかも知れないが,それだけでなく,実際は,真に国民のためになる,いつでもどこでも安心して医療を受けられる,世界一のシステムを守るためであるということを,国民に分かってもらうためでもある.
 今までは,ともすれば,われわれ医師は,医療を行う側の視点で提供していたと思うが,これからは,医療を受ける立場の方々,患者さんの視点で,医療を提供するように心掛けなければいけないと思う.
 そして,会長を先頭に,役員ともども既述のことを念頭に,職を務めていきたいと思う.

岩砂 和雄 副会長
学術担当(生涯教育,倫理,先端医療),公衆衛生担当,産業・環境保健担当,学校保健担当,医学会担当,国際担当,治験(センター長)

 医師の偏在や加重労働,そして,コメディカルスタッフの不足は,大きな社会問題となっている.さらに,公的病院の赤字経営やスタッフ不足による小児科・産婦人科の閉鎖など,さまざまな事例が毎日のようにマスコミで報道されている.
 このような厳しい医療環境のなかでも,世界に誇る国民皆保険制度が今後も健全に運用されるよう,医療現場の関係者の皆様方とともに日医は行動せねばならない.
 少子高齢化が進む今,医療・介護・福祉の緊密な連携が求められている.この連携に正しい理念と技術を持ち,利用者の幸せのために参加し,貢献できるのは,われわれ医療関係者であり,日医であると断言する.その任務遂行のためには,まずはわれわれ医師会員が医の理念を再確認し,進歩し続ける医学・医療を研鑽しながら,医療現場での協力体制(病診・病病・診診連携)を構築し,効率的な活動をすることが不可欠と思う.そして,この実現のためには,政府与党の協力を得て,行政と連携を密にする必要があり,それには彼らと対峙する日医総研や学会の協力が重要である.
 また,地域の医療現場からのダイレクトな情報・苦情・提案を日医に集め,回答・分析することも重要と考える.

羽生田 俊 常任理事
庶務,医療関係職種,会員情報,医療政策

 日医の活動の基盤は,会員一人ひとりであり,所属する郡市区医師会であると考えている.しかし,医師会活動に協力していただいている会員でも,日医が何をしているのかを知らないというような状況があると思われる.
 庶務担当として会務全般に携わりながら,会員と執行部との距離を縮め,すべての会員が同様の理解をもって国民の命を守り,健康を守るという医師本来の業務に,安心して専念できる環境を整備することが必要である.そのためには,医師会から国民ならびに会員に向けて,多くの情報を迅速に発信し,それについて多くのご意見をいただき,その意見を集約して,国民のための医療政策に生かしていきたいと考えている.
 医療関連職種については,外国人看護師・介護士の受け入れ体制の整備が必要になり,関連団体とも密に連携していきたいと考えている.

飯沼 雅朗 常任理事
学術,生涯教育,精度管理,治験,共同利用施設,感染症対策・危機管理,薬事一般

 医学・医療,医療安全の根幹にかかわる業務を担当することとなった.
 日医が学術集団の看板をかけ続けるために,さらなる生涯教育の充実が必要と考える.会員がこぞって参加できるような企画を学術担当の委員とともに十分検討したい.
 H5N1対策は喫緊の課題であるが,SARSの教訓を生かしたい.国民への啓発が重要と考える.ニューラミニデース阻害薬の有効性の確認,耐性ウイルス出現頻度の研究等に協力する機会があれば,積極的に参加したい.わが国が世界一の麻しん輸出国であるとの汚名を返上するため,麻しんワクチンの接種率をさらに向上させたい.
 医師会立臨床検査センターが,持続的に存続できるような検査料金の検討は不可欠と思われる.各種健(検)診事業,人間ドッグ事業等における厳格で厳正な精度管理,およびデータの標準化をさらに進めたい.
 海外で承認済みの医薬品等の国内での早期使用の方策についても,治験委員会等で十分に検討したい.

木下 勝之 常任理事
医賠責,医療安全,先端医療(遺伝子医療・再生医療・生殖医療・臓器移植等)

 本年三月末まで,順天堂大学産婦人科主任教授として,大学勤務を続けてきたが,このたび図らずも常任理事として,日医に参加させてもらった.
 近々の課題として,福島県の産婦人科医が逮捕起訴された,極めて遺憾な事件に端を発した医師法第二十一条の異状死の届出に関する問題があるが,この件については,日医としての一定の見解を目指した討議を開始する予定である.
 今日,会員の最大の関心事の一つである医療事故を減らし,医療訴訟を減らしていくためには,具体的な医療安全対策の実践と同時に,学術・生涯教育の分野でも,各診療科が医療安全に直接関係するテーマを選定して,繰り返し学ぶ必要があると思う.
 さらに大きなテーマとして,すでに日医に答申された無過失補償制度の将来の導入の問題がある.社会保障制度の一環として,国民的合意を得るために代議士の方々のお力もお借りし,実現に向けた取り組みを進めたいと思う.

鈴木  満 常任理事
医療保険,病院,勤務医

 担当が医療保険・有床診療所・病院・勤務医と決まった.「病院と診療所,勤務医と開業医など,多くの医師の意見をまとめて日医の意見として集約していく必要がある」と,唐澤会長の所信表明演説にある.医療保険を通して会員の合意形成に努めたいと考えている.
 一方,医療制度改革関連法案が国会で審議入りしたが,平成十八年度診療報酬改定は,その露払いのように,診療所には在宅医療という大きな命題を提示し,医療制度改革の旗印のもとで中小病院や慢性期病床に大なたが振るわれ,療養病床の再編や一般病床の入院基本料にかかわる問題が,有床診療所や中小病院を直撃している.
 医療現場の実態を無視したかのような,夜勤七十二時間の制限は,看護師の就労状況の改善の措置なのか,または,病床削減を目的としての措置なのか不明であるが,この問題に限らず,医療制度改革に,はばからずに対峙し,国民医療の整合性に取り組む所存である.

天本  宏 常任理事
精神保健,医業経営,介護・福祉

 精神保健については,すべての世代で,「こころの健康」が課題になっていること,また,社会復帰施策が推進されていること等を踏まえて,地域医療の一環として対応していきたい.障害者自立支援法については,ケアマネジメントが重要であり,障害者の方が公平なサービスを受けられるよう,その運用の適正を期したい.
 医療を取り巻く環境の変化は,医業経営にとっても厳しいものとなってきている.質の良い安全な医療を提供することは,確かな経営基盤があって初めて可能であり,そのため消費税を始め検討すべき課題は多いと考えている.
 介護保険については,地域における高齢者ケアの実践や,介護力強化病院連絡協議会を立ち上げた経験等を生かし,全力で取り組んでいきたい.
 まず,介護保険法改正に伴って二回の介護報酬改定が行われたが,地域包括ケアシステムの構築に向けて十分検討したい.特に,今回の療養病床の再編問題に関しては,難民をつくることのないよう,適切な医療提供体制のシステムづくりを目指したい.

今村 定臣 常任理事
医事法制,母子保健,日医総研

 日医総研の再活性化は,唐澤会長が考えておられる日医改革の中心的課題であり,公約でもある.日医だからこそ得られる全国各地の多様な医療環境の情報のデータベースに基づいた政策提言を行うことにより,厚生労働省・財務省・経済財政諮問会議などに対峙できるシンクタンクの再構築を早急に手掛けたい.
 医療にかかわる分野でも法律抜きでは対処できないことが急増している.医事法制については,医療安全や医賠責の分野とも関連する問題も多いので,連携を密にして誤りのない対応を期したい.
 母子保健については,少子化対策がまず挙げられる.日医単独では対応に限界のある問題であるから,国の施策に対し,日医として適切な提言と協力を行う.小児科医・産科医不足と偏在の問題への取り組みも重要である.地域や医会の事情も異なるので,それらを十分に考慮し,地域医師会とも協力して,危機的状況を少しでも緩和できるように努力する.

内田 健夫 常任理事
公衆衛生,地域医療,学校保健

 公衆衛生では,検診制度・健康教育・健康指導の見直しと医療のかかわり,がん対策,禁煙対策,生活習慣病対策などの評価と推進等が課題である.
 地域医療では,現在国会審議中の医療法,健保法関連法案改正への的確で迅速な対応,医師偏在・需給対策,地域医療提供体制への取り組みなどがある.また,学校保健では,専門医制度の拡充や学校教育(禁煙・薬物乱用,生活習慣・肥満など)における学校医のかかわりなどがある.どれもが極めて重要で,日々の医療現場に密接にかかわる課題である.
 今後,唐澤会長のもとで関係各方面と緊密に連携を図り,また会員諸兄のご指導,ご助言と,現場からのご注文,ご叱責をいただきながら,取り組みを進める所存である.
 医療側と患者側の双方にとって,安全・安心で良質な医療が確立されることを目指している.

石井 正三 常任理事
労災・自賠責,救急医療,国際

 労災・自賠責は,すでにわが国に定着している.社会構造変化や就労形態多様化,そして,医療保険改正に伴う必要なマッチングを進めたい.石綿症やメンタルケア,生活習慣病対策も,産業保健センター活動や医療保険との連携などによって,国民のニーズに応えていきたい.
 救急医療においては,メディカル・コントロール下における救急救命士の業務拡大,一般市民のAED使用解禁と普及について,すでに一定の成果を得ている.生涯教育の一環としての会員向けACLS研修会など,今後の事業について継続的に取り組みたい.災害・被ばく医療や国民保護法関連その他特定前の発災事象対応についても,救急医療体制とシンクロした形で,平時の安心安全の根幹である医療保険制度を補完しながら,国民のセーフティー・ネットとしての整備に努めたい.
 ボーダーレス時代を迎えた今日,WMA活動を含め,組織・人の国際連携を深め,インターネットなどを活用した良質な情報発信にも配慮して,会務運営に寄与したい.

中川 俊男 常任理事
広報,情報企画,調査統計,図書館

 会員への広報は,ITを積極的に活用して充実を図り,最新情報をリアルタイムに提供していきたい.特に,会外向けの広報に力を注ぎたい.報道機関には,日医の実態に即した報道を期待し,そのための理解を得る情報提供を目指したい.最も重要なものは,国民に対する広報活動である.従来の枠組みや手法にとらわれず,分かりやすい医師会を表現したい.
 先進国中,最速で進む高齢化のなかで,国民が知らないうちに,世界一の医療制度が変えられようとしている.国民の宝である日本の医療制度を守らなければならない.そのためには,国の医療制度改革が医療の質や安全性を低下させ,個々の患者さんが受ける医療に格差を生じる危険性があるという危機感を,国民と共有することが不可欠である.
 一方,医師会における情報化は,あらゆる分野において進めていかなければならない.昨年度から試行されているTV会議システムを幅広く活用し,また,日医標準レセプトソフト(日レセ)の採用医療機関数の飛躍的な増加を進めていきたい.

今村  聡 常任理事
会計,年金・税制,産業・環境保健,医療廃棄物,健康スポーツ,会員福祉

 会計に関しては,公益法人として,会の内外に対して透明性の高い運営とともに,他の役員の活動が十分に行えるような運営を心掛けたい.今年は厚生労働省から「女性医師バンク」事業を委託されることに伴い,新たに特別会計を設けることも業務として加わる.
 年金については,医師年金および医師国民年金基金それぞれの特徴を周知し,会員個々の生涯の生活が充実したものとなるよう,いっそうの加入を呼び掛けていきたい.税制については,今後,消費税率の引き上げが予想されている.医療機関により影響はさまざまであるが,今後の地域医療に混乱を来さないよう慎重に検討する.
 日医認定健康スポーツ医が,各地域において健診後の運動指導や介護予防の場で他職種との連携のもとに活躍できる仕組みづくりと同時に,スポーツ医の資質向上のため,講習会等のカリキュラムの見直しに取り組みたい.
 産業医についても,健診の見直しに伴い,保健指導において新たな役割が生じることが予想され,地域のかかりつけ医との連携体制についても検討していきたい.

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