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第1072号(平成18年5月5日) |
日医各種委員会報告書(その1)

今号から数回にわたって,平成十六・十七年度の会内委員会で取りまとめた報告書の概要を紹介していく.
自浄作用活性化委員会答申
自浄作用活性化に向けハンドブック作成
自浄作用活性化委員会(石川育成委員長)は,諮問「医師会自浄作用活性化の基本指針とその具体化」を受け,『自浄作用活性化推進に向けて―ハンドブック―』を取りまとめた.
ハンドブックでは,会員の不正行為と疑わしき事実について,日医,都道府県・郡市区医師会にそれぞれ設置された自浄作用活性化委員会で解決および対応を図るため,取り扱い事例が,郡市区・都道府県医師会自浄作用活性化委員会の対応に余ると判断する場合は,それぞれの上部組織に付託あるいは意見を求めるなど,各医師会の一致協力した体制整備の推進を提言している.また,不正行為処理事例については,その概要をそれぞれの上部組織に報告することによって,各組織に関係事例のデータを共有し,日医にすべてのデータが集積されるシステムを構築することが必要であると指摘している.
不正行為に対する各医師会内での対応としては,不正行為対応モデル例が図示されている.不正行為や不正行為と疑わしき事案について,医師会長が,自浄作用活性化委員会に調査付託し,その報告を受けた医師会長が,その取り扱いについて理事会に諮り,当該事案への対応を決定するなど,一連の対応が簡潔にまとめられている.
医師会の自浄作用に向けた取り組みについては,生涯教育制度が一つのテーマとして取り上げられ,「医学的課題」だけでなく,医師としての資質と倫理に関する課題を含めた「医療的課題」を重要視し,会員の倫理・資質の向上を目指すことなどを記述している.
巻末には,参考資料として,同委員会が平成十六年に答申した『自浄作用活性化を目指した具体的方策』を収載しているほか,四つの県医師会における自浄作用活性化委員会の規程や設置要綱を紹介している.
医師福祉対策委員会答申
これからの医業経営の在り方について検討
医師福祉対策委員会(粟津俊彦委員長)は,会長諮問「これからの医業経営の在り方について」を受け,答申した.
第一章「医療環境の変化とその対応について」では,まず,(一)医療環境の変化を(1)政府(国)の政策・動向(2)社会・経済状況等(3)医療サービス等―に分けて解説.
(二)医療環境の変化への対応では,厳しい医業経営環境のなかで,(1)ITを用いた質の高い効率的な医療(2)セカンド・オピニオンやピア・レビュー等の積極的活用,そのうえで,インターネット等を用いた情報提供を行うなど,医療にかかわる周辺のハード・ソフト両面での方策の必要性や,患者との関係構築の重要性等,医療機関には,大きな労苦と,かなりのコストがかかると指摘.さらに,継続的に医業を行うためには,将来を見据えた計画的な投資が必要であると述べ,医療機関の財務状況を院長自らが再確認し,財務会計情報を正確に把握してこそ,医業経営が安定するとしている.
つづく第二章「医療法人化(医療法人成り)について」では,税金を含んだ経費管理の徹底により手元資金を増加させ,新たな設備投資の原資とすることができるとの観点から,医療法人化に着目.現行制度下における,個人開業医と医療法人の税制上の取り扱いの相違点について検討している.
本答申は,財務会計情報の正確な把握が,これからの医業経営には不可欠との認識に立ち,医療法人化に着目して個人立との比較例を提示,「税金を含む経費管理」を徹底することが重要であると結んでいる.
なお,参考資料として,「個人開業医と医療法人の税制上の取り扱い」「シミュレーションデータ」が添付されている.
医療関係者対策委員会報告書
看護職員の確保策を提言
医療関係者対策委員会(森下立昭委員長)は,諮問「地域における看護職員の確保方策と医師会の役割」について報告書をまとめた.
報告書では,まず,厚生労働省策定の「看護職員需給見通し」の問題点を指摘するとともに,看護職員の確保のために医師会と国が果たすべき役割について述べている.
本来,国が責任を持って行うべき看護職員の養成・確保を,医師会が地域の看護職員を確保するために多大な負担の下に養成しているにもかかわらず,国の支援・理解不足により学校運営が困難な状況に追い込まれている現状にあり,国は運営費補助金の確保とともに,各種規制の緩和に取り組むべきであるとしている.
特に,准看護師養成所を今後とも存続させるためには,教育面での改善が必要であり,カリキュラムへの単位制の導入を提言している.
また,看護職員の確保に関して,現在大きな問題となっているのが,産科における看護職員の確保である.本報告書のなかでも,厚労省看護課長通知による看護師等による内診禁止の影響により,地域の周産期医療が崩壊の危機に瀕している現状を憂慮しており,助産師が絶対的に不足している状況においては,医師の指示の下に,看護師等が子宮口の開大および児頭の下降度を測定することは医療安全を脅かすものではなく,むしろ絶え間ない分娩監視で安全なお産に導くものであるとし,厚労省の解釈の変更を求めている.
(全文は,日医ホームページ・メンバーズルーム参照 ※要・会員専用アカウント)
病院委員会審議報告
今後の医療提供体制の在り方について
病院委員会(大道久委員長)は,諮問「今後の医療提供体制の在り方について」を受け,審議報告を取りまとめた.
「地域医療における医師の確保と今後の医師養成のあり方」では,マッチング・システムや新医師臨床研修制度の運用が一年を経過したことを受けて実施されたアンケート調査の結果などにも触れながら,新医師臨床研修制度実施後の現況と課題について提言がなされている.また,医師の地域間・診療領域間格差の是正に向けた,さらなる議論や医師養成の基本的な方向の再検討の必要性などを指摘している.
「医療提供における『療養病床』の位置付けと介護保険との関係」では,長期療養患者の医療必要度を明らかにすることによって,医療と介護の関係を明確化することが,相互の適切な利用を図るうえで有用であると提言されている.
「地域医療支援病院の見直しと病院の外来機能のあり方」では,地域医療支援病院の承認要件の見直しや病院の外来機能のあり方,また,いわゆるサテライト診療所の問題等について記述されている.
「医療における公私の役割分担と今後の経営基盤のあり方」では,新たな公私の役割分担のあり方や医療法人制度における非営利性の徹底などについての方向性が示されているほか,地域医療の確保と連携に向けた医師会の役割,小規模病院の今後のあり方等についての提言も行われている.
「医療界の自己改革と国民的理解」では,公的医療費の総枠の拡大に向けて国民の理解を得るためには,医療界の率先した自己改革が不可欠であるとして,医療者・医療機関側からの医療情報公開の徹底や,リピーター医師等,問題医師に対する医師会の裁定・再教育の制度化などが提起されている.
(全文は,日医ホームページ・メンバーズルーム参照 ※要・会員専用アカウント)
医師会共同利用施設検討委員会報告書
アンケート調査を基に施設ごとの在り方を検討
医師会共同利用施設検討委員会(野坂研介委員長)は,会長諮問「医師会共同利用施設の在り方」について報告書をまとめた.
報告書は,(1)医師会病院(2)医師会臨床検査・健診センター(3)介護保険関連施設―と施設別に分けられており,(1)および(2)は,委員会から日医総研に依頼してアンケート調査を行い,実態把握に努め,その結果を基にまとめられている.
(一)医師会病院の現状の課題と期待される役割では,アンケート調査の結果,医師会病院中,病床の六割以上を療養病床が占める病院が一割強あること,地域医療支援病院を志向する病院が承認された病院を含め約六割になることが分かった.
また,安定的医療提供のための経営や医師の研鑽の場としての病院のあり方などについて,まとめられている.
(二)医師会臨床検査・健診センターでは,アンケートの結果を踏まえ,その経営状況と,会員サービスの向上やIT化の促進などを中心にまとめられている.
(三)介護保険分野の医師会共同利用施設では,介護保険法改正を受け,今回の制度見直しのポイントを,特に「介護予防」に焦点を当てて解説.予防重視型の介護サービスと,地域包括支援センターによる包括的地域ケアの構築への医師会の積極的関与の必要性などを中心に,主治医および地域医師会,介護保険関連の在宅系医師会共同利用施設(訪問看護ステーション,居宅介護支援事業所,在宅介護支援センター),それぞれに期待される役割について言及している.
(全文は,日医ホームページ・メンバーズルーム参照 ※要・会員専用アカウント)
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