日医ニュース
日医ニュース目次 第1073号(平成18年5月20日)

福島県立大野病院の医療事故問題で唐澤会長・木下常任理事が記者会見
地域医療への悪影響を問題視

 福島県立大野病院の産婦人科医が,医師法第二十一条違反と業務上過失致死の疑いで逮捕・起訴された問題で,唐澤人会長は,四月十八日,木下勝之常任理事とともに記者会見を行い,この問題に対する日医の考えを改めて説明した.

福島県立大野病院の医療事故問題で唐澤会長・木下常任理事が記者会見/地域医療への悪影響を問題視(写真) 福島県立大野病院の医療事故問題について,日医では,事件発生当初から重大な問題と受け止め,福島県医師会,日本産婦人科学会,日本産婦人科医会などから情報提供を受けるとともに,弁護士を現地に派遣して調査を開始.病院関係者あるいは逮捕された医師の弁護人に接触するとともに,報道姿勢,市民の反応などについて聞き取り調査などを行いながら,事実確認に努めてきた.
 三月十四日の理事会では,その調査結果を報告.(1)調査を継続して行っていくこと(2)「医師法第二十一条の問題」は,全会員に関連のあるものとして的確に対応していくため,異状死の解釈などを含めた根本的な検討を行う必要があること―などを確認した.
 さらに,三月二十二日には,記者会見を行って,この問題に対する日医の見解を公表.そのなかでは,三つの問題点((1)医師が逮捕されてしまったこと(2)逮捕の容疑として,業務上過失致死の問題が挙げられていること(3)医師法第二十一条に規定されている異状死の届出義務違反に問われていること)を指摘するとともに,類似事件の再発防止を目指した方策・仕組みづくりを検討することを明らかにした.

今回の問題点

 このような状況のなかで,改めて記者会見を行った唐澤会長は,まず,医療の経過中に起きた不幸な出来事で亡くなられた患者さん,ならびに遺族に対して,哀悼の意を表明.
 そのうえで,手術を行った医師が逮捕・起訴されたことについては,「係争中の事件であり,警察にカルテなどが押収されてしまっているため,詳しい資料も手元になく,言いにくい部分もある」としながらも,「類似した事例と比較しても,大きな疑問を感じざるを得ない」とし,今回の捜査当局の対応を疑問視した.
 また,今回のように医師法第二十一条が拡大解釈され,捜査機関がいきなり捜査権を行使するような事態が全国各地で起きれば,リスクの高い医療を行っている医師などは萎縮してしまい,国民に対して十分な医療を提供することが不可能になると指摘.そのようなことになれば,地域医療は崩壊し,国民にも悪影響を及ぼすとし,その問題点を説明した.
 さらに,医療行為のなかで事故が起きてしまった場合に大事なことは,「単に責任を追及するのではなく,その原因を医療関係者自らが究明していくことである」と強調.「そうすることが,医療安全の推進,さらには医学の発展にもつながっていくのではないか」と述べたほか,どのような場合に届出をすべきか議論を行い,国民の合意を得たうえで,新たな医療事故の届出制度を構築することを求めた.
 今後については,日医としても,逮捕された医師に対してできる限りの支援を行っていきたいとしたほか,「これから開始される裁判の推移を注意深く見守り,必要に応じて,われわれの意見を述べていく」とした.

具体的な対応策

 日医の具体的な対応については,木下常任理事が,「医師法第二十一条の拡大解釈は大きな問題と考えており,早期に委員会を立ち上げて具体的な議論を開始したい」と,その方針を改めて説明.また,委員会のメンバーについては,「この問題は,医療関係者だけで判断するのは難しい部分も含まれている.そのため,委員会には医療関係者ばかりでなく,司法の関係者などにも参加してもらう予定である」との考えを示した.

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