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第1084号(平成18年11月5日) |
定例記者会見
医師確保に関する見解を発表
ドクターバンクのネットワーク化と女性医師バンク創設を中心に
内田健夫・中川俊男両常任理事は,十月十七日,日医会館で記者会見を行い,「日本医師会による医師確保に関する見解」ならびに「平成十八年度緊急レセプト調査六〜八月診療分(累計)の結果」を公表した.
内田常任理事(右)と中川常任理事 |
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医師の偏在・不足の原因は医療費抑制策
内田常任理事は,まず,医師偏在・不足の原因は,国による長年にわたる医療費抑制政策が根底にあると指摘.
日医は,喫緊の課題である医師確保問題への対策を,(1)安全で良質な医療を平等に提供する体制の確保:へき地医療の確保(2)勤務医の確保:特に外科系を中心とした救急医療の確保(3)かかりつけ医機能の充実:診療所と病院との機能分化と連携(4)医師会活動の強化:地域医療の充実,安定した医療提供体制―をコンセプトにまとめたと説明.
日医が責任を持って取り組む主な対策としては,以下の三つを挙げた.
(一)ドクターバンクのネットワーク化:医師の再就職の情報提供およびあっせんを目的とした無料紹介制度を立ち上げ,経験豊富で意識の高いベテラン勤務医を活用.また,都道府県医師会ごとに活動しているドクターバンク間の連携を図り,全国的ネットワーク化と情報収集のセンター機能を果たす.
(二)女性医師バンクの創設・実施:女性医師バンクを中心とした厚生労働省「医師再就業支援事業」の受託に向け,本年度中の事業開始を目指し,職業紹介事業の許可申請など,最終調整中である.
(三)地域医療のデータベース化:実態に沿った,地域の医療需要や供給などを全国的に調査.需給・偏在の将来予測も含め,勤務医の就労環境,臨床研修の現況,住民・患者の意識,受療行動等のデータを把握する.また,各地区の先進的事例や問題事例をくみ上げ,日医を通じて他の地域医師会へ紹介できるシステムをつくる.
さらに,同常任理事は,現在作成中の『医療と介護のグランドデザイン(仮題)』でも,中長期的な課題として,医師の確保・偏在対策を取り上げていく予定であることを明らかにした.
また,「いわゆる“後期研修”において,へき地等での診療経験を積むシステム」「開業医のかかりつけ医機能の充実と大病院における外来のあり方の見直し」「医師が安心して診療に携われる仕組みづくり」等の課題も,会内の「地域医療対策委員会」で検討,地域医療支援中央会議などの場で,医療提供者の代表である医師会として提言を行い,種々の取り組みや問題解決に当たりたいと意欲を示した.
医療機関の窮状が顕在化
一方,中川常任理事は,本年六月から八月の診療分(累計)に関する緊急レセプト調査について,今回の調査結果でも,厚労省の予測値を超える影響が医療機関に出ていることを明らかにした.
この調査は,本年四月の診療報酬改定の影響を把握するために日医が実施しているものである.今回の有効回答数は,診療所千七百五十四,病院百五十二の合計千九百六施設で,有効回答率は四八・三%.前年同期と比べて診療日数に変化がないため,日数調整はしていない. 厚労省は,制度改正がなかった場合の医療費の伸びを三〜四%と見ており,診療報酬が三・一六%引き下げられても,理論上,医療費の伸びがマイナスになることはないと主張していた.
しかし,調査結果を見ると,診療所では,総点数が,入院で前年同月比五・六四%減,入院外で一・二五%減と,いずれも厚労省の見通しを大きく下回っている.同常任理事は,この要因について,一日当たり点数が減少したことに加えて,日数の減少に歯止めがかからなかったためではないかと指摘した.
一方,病院の総点数も,入院(〇・二七%減),入院外(一・六二%減)ともにマイナスとなった.これについて,同常任理事は,「一日当たり点数が,入院で一・〇八%,入院外で一・一八%とプラスになったものの,総日数が大きく減少したことが響いたのではないか」と,その要因を分析した.
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