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第1085号(平成18年11月20日) |
「医療難民」2万人,「介護難民」4万人の発生回避を厚労省に迫る
日医は十月二十五日に開催された中央社会保険医療協議会総会で,「療養病床の再編に関する緊急調査」の結果を報告した.
鈴木満(医療保険担当)・天本宏(介護保険担当)・中川俊男(広報・医療政策担当)各常任理事は,中医協総会終了後,日本記者クラブで記者会見し,厚生労働省に対して,医療区分の見直しや,受入体制の早急な整備を要求していく考えを明らかにした.
会見を行う天本・鈴木・中川各常任理事(右から) |
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緊急調査は,今年七月現在で医療療養病床の届出がある,全国六千百八十六医療機関(病院四千百三十九,有床診療所二千四十七)を対象に実施.二千八百七十医療機関(病院千八百八十四,有床診療所九百八十六,有効回答率四六・四%)から回答があった.
回答医療機関の医療療養病床入院患者のうち,「医療区分1」は,二万九千三百九十二人で入院患者全体の四二・一%を占めた.このうち三〇・九%は,「病状不安定で退院の見込みがない」と判断されていた.
医療区分1の患者の約二割に医学的管理・処置が必要
判断の理由として,「一定の医学的管理を要するため」(五七・二%)と「処置が必要なため」(一一・二%)が約七割を占め,医療区分1の患者の約二割が,医師の指示の下,看護師業務独占である医学的管理・処置を必要としていることが明らかになった.
医療区分1の患者に実際に行われている処置としては,「喀痰吸引」(一一・三%),「胃瘻の管理」(一〇・五%),「経鼻経管栄養」(八・八%)などが挙げられた.胃瘻の管理と経鼻経管栄養が同時に行われることはないため,ここからも患者の約二割が医学的管理・処置を必要としていることが裏付けられた.医療従事者の配置が薄い介護保険施設などでは,十分な対応ができないと考えられることから,これらの患者が退院を迫られれば,「医療難民」になることが危惧される.
病状面から退院可能でも七割は「独居」「家族の仕事」等の理由で退院不可能
一方,医療区分1の患者の六三・四%は,病状が安定していて退院可能であるものの,「在宅での受入困難のため,現実には退院不可能」が七〇・一%存在し,理由別では,「独居や家族の仕事などで在宅での受入困難」が七割弱であった.一方,「在宅受入困難を除く施設入所待ち」が一九・七%で,総合すると,医療区分1の患者の約四割は,介護保険で対応すべきであるにもかかわらず,退院後の受入先がない,「介護難民」になる可能性がある.
また,今回の医療療養病床における診療報酬の見直しで,一医療機関当たりの診療報酬請求点数の前年同月比が,おおむね一〇%以上のマイナスになることも分かった.
天本常任理事は会見で,医師の指示の下,看護師の業務独占である医学的管理や処置を必要としている約二割の患者(医療難民)を「医療区分2」の対象とするよう,見直しを求めていく意向を表明.「医療の必要性が低いと想定されている医療区分1の患者のなかにも,検証の結果,実際は胃瘻など,処置が必要な人たちがおり,それを医療区分2から外したこと自体,間違っている」と述べた.
約四割の患者が「介護難民」化していることについては,「介護保険料を払っているのに介護保険サービスを受けられないという不公平・不平等が起こっている.介護と医療の明確化を目指した改定であったはずなのに,本来,介護保険サービスの対象者を医療で診ているのは,どういうことなのか」と問題視し,第四期介護保険事業計画の前倒し実施など,受入体制の早急な整備を求めていく考えを示した.
受入体制が整うまでの間は,緊急措置として,医療療養病床を「介護受入待機病床」と位置付け,介護保険給付の対象にすることも提案した.
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