日医ニュース
日医ニュース目次 第1088号(平成19年1月5日)

年頭所感
日本医師会長 唐澤

年頭所感/日本医師会長 唐澤祥人(写真) 明けましておめでとうございます.会員各位には健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます.昨年四月以来,日本医師会の運営を担当させていただいておりますが,温かいご支援とご理解を賜り,衷心より御礼申し上げます.
 昨年は年初より政府の進める,まさに財政優先の医療制度改革へさまざまな形で対峙することに始まりました.これまでにない厳しい診療報酬減額改定,そしてその後の医療制度改革関連法案は多くの問題点を残しながらも,二十一項目の附帯決議が採択されました.
 わが国の医療は,OECD加盟三十カ国中において十七番目の低い医療費にて維持されている一方,WHOや諸外国からは優れた医療制度として高く評価されています.数年来の医療費削減策により,全国各地域の小児医療・産科医療や,救急医療体制に大きな影響が出ております.医療機関には経費節減を強い,病床削減を余儀なくされる状況のなかで,専門医療の中核的担い手である勤務医の負担が増大しております.早急な対応策を打たなければ,国民医療の崩壊につながります.国民の期待に応える地域医療提供体制の構築のためには,各医療機関の医療機能連携を一層活性化することにより,勤務医の救急・外来医療の負担と事務量を軽減し,本来の医療機能が発揮できる体制を築くことが必要です.
 地域医療のデータベースと現況の把握により,信頼できる将来推計に基づいた地域医療提供体制の総合的構想とその実現への早急な戦略構築が可能になります.団塊の世代が高齢社会の中核に据わるまでに,健康寿命延伸策と共に要介護高齢者のための介護と医療の提供基盤の整備など,地域医療には多くの課題を達成することが求められます.このような体制整備を進めるためにも,正確な予測に基づき,医師・看護師など専門職の人材確保,さらには必要な施設の需給策の検討がなされなければなりません.
 わが国の優れた科学技術や情報技術などによる先進医療,創薬の開発,人材育成など医療を発展させるためのシステムは,他の先進諸国に伍して大きな国益につながることが期待される生産性の高い分野であります.すなわち,今日までこの体制を支えてきた国民皆保険制度は,すべての国民がいかなる高度な医療をも普遍平等に受けることができる人間の安全保障制度であり,わが国の財として大きなストックを発生させる価値の高いものであるとともに,一人ひとりの国民にとっては安心確保への健康投資システムでもあります.
 このような観点に立てば,社会保障制度の根幹にある国民医療の確保には,医療の理念を戴した信頼できる地域医療提供体制と,国民皆保険制度を堅持することが不可欠です.また,日本の医療の未来への展望と明確なビジョンを描くためにも中長期的なグランドデザインを提言すべきであると考えております.そして,その構想を実現する有効な戦略,すなわちアクションプランを実行し,国民の福祉向上に貢献したいと考えております.
 改めて,会員各位にとりまして,本年が安寧で,一層の躍進の年でありますよう,ご祈念申し上げ,年頭のごあいさつといたします.

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