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第1088号(平成19年1月5日) |
平成18年度家族計画・母体保護法指導者講習会
「産婦人科医療をめぐる法的諸問題」をテーマに
日医と厚生労働省共催の平成十八年度家族計画・母体保護法指導者講習会が,昨年十二月二日,日医会館大講堂で開催された. 今村定臣常任理事の司会で開会.唐澤人会長はあいさつで,「医師の偏在,特定の地域,診療科での医師不足は大きな社会問題となっている.特に産婦人科医療については,医療訴訟や過重労働のため医師が減少し,産科をやめる医療機関が増加しており,安心してお産ができる体制が維持できない危機的状況にある.福島県で医師が逮捕された問題は,妊婦の救命に尽力した医師を犯罪者と同様に扱うという,医療の本質を理解していない許しがたい事態である」との考えを示した.
柳澤伯夫厚労大臣(千村浩厚労省雇用均等・児童家庭局母子保健課長代読)のあいさつの後,来賓の坂元正一日本産婦人科医会長(佐々木繁同医会副会長代読)は,「福島県の産婦人科医師逮捕については,懸命に治療行為に努めた医師が,結果責任のみを問われ,逮捕されたことは納得できない.分娩に関連して起こる脳性麻痺に関する障害補償制度については,日医の努力により,自民党案が厚労省に提示されたので,来年度からの発足を熱望している.保助看法による看護師の内診禁止の通知については,わが国の周産期医療の壊滅的な崩壊が予想されるほどの影響がある.本日の講習会がその解決の糸口になることを期待する」と述べた.
唐澤会長は,特別講演「最近の医療をめぐる動き─信頼される医療の構築へ─」のなかで,まず社会保障制度と医療制度改革,日医の現況,会員の増加などに関して報告し,「国民医療は地域医療に立脚しており,財政が削減されたまま国民皆保険制度を持続しても,地域医療体制が崩壊すれば国民医療は成り立たない.国民皆保険制度と診療支払制度によって支えられている地域医療体制をつくり直す政策については,日医としてグランドデザインを作成中であり,それを基に社会へ訴えていく.
郡市区医師会の会長・副会長へのアンケートによると,日医がすべきこととして,(1)報道広報を強力に進める(2)医療制度改革法案への対応を迅速にする(3)組織力の強化─が挙げられているが,(1),(2)については着手しており,(3)については,会員の協力が必要だと考えている.今回は会員の協力で,分娩に関する脳性麻痺に対する障害補償制度などが実現しようとしている」などと述べた.
その後,「産婦人科医療をめぐる法的諸問題」をテーマに,(一)医師法第二十一条(樋口範雄東大大学院教授),(二)診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業(深山正久東大大学院教授),(三)分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度(木下勝之常任理事),(四)保健師助産師看護師法,医療法第十九条(石渡勇茨城県医師会常任理事)─についての四講演と,指定発言─行政の立場から(千村浩厚労省雇用均等・児童家庭局母子保健課長)が行われた.参加者は二○七名.
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