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第1093号(平成19年3月20日) |
平成18年度母子保健講習会
子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して
平成十八年度母子保健講習会が,「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して」をメーンテーマとして,二月二十五日に日医会館大講堂で開催された.本講習会は,平成六年度より実施してきた「乳幼児保健講習会」から名称変更して初めて実施されたものである.
担当の今村定臣常任理事の司会で開会.冒頭あいさつした唐澤人会長は,次世代を担う子どもたちが心身ともに健やかに育っていくための支援を行っていくことが,医師,医師会の役割として重要であるとの考えを示すとともに,本講習会で得られた成果を地域医療の場で活用して欲しいと要望した.
引き続き,午前には二題の講演が行われた.
(一)「産科医療の現状と改革への提言」では,海野信也北里大学教授が産婦人科医や分娩を取り扱う施設が減少しているなかで,日本ではリスクの高い高年齢の分娩が増加していることを説明.分娩を取り扱っている医師に,継続して仕事を続けてもらうためにも,(1)医療事故の合理的究明や紛争解決を行うシステムの確立(2)勤務医の労働条件の改善―が必要だと述べた.また,現場に助産師が充足するまで,看護師の内診を認めることを求めた.
(二)「小児医療の現状と改革への提言」では,別所文雄杏林大学教授が,小児科医不足のなかで,国民の専門医志向の高まりや時間外受診の増加などによって,小児科医に対する需要がますます高まっている現状を説明.このような状況下で,その不足を解消するには勤務体制の見直しや役割の明確化,適正な医師数の算定などを行うことが必要との考えを示した.
午後からは,「親子が育つ医師会の地域づくり」をテーマとしたシンポジウムが行われた.
木下勝之常任理事は,日医が提案した「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」が具体化しつつあることや,会内の「医療事故責任問題検討委員会」での審議内容,答申の骨子などを説明.また,看護師の内診問題については,現在,厚生労働省と交渉中であることを明らかにした.
石渡勇茨城県医師会常任理事は,周産期医療の崩壊を防ぐため,産婦人科医会,行政などと連携して県医師会が取り組んでいる活動(知事への要望行動,県民フォーラムの開催等)を報告.将来的には,地域に医師バンク,助産師バンクを設立する考えを示した.
横田俊平横浜市立大学大学院教授は,わが国の予防接種に関する最近の問題点として,「感染症の流行情報,予防接種率,効果率の一元的な管理がない」「薬剤の認可と定着化に長期間要する」などがあると指摘.その改善策として,日本版ACIP(アメリカにある予防接種の実施に関する諮問委員会)の創設を提案した.
菊池辰夫福島県医師会副会長は,自身が運営している病後児保育施設「らびっと」の現状を説明.今後の課題については,「施設内感染防止対策の徹底」「予約者が当日キャンセルする場合が多いことへの対応」を挙げた.さらに,産業医が子育て支援事業に参加することの意義についても言及した.
内海裕美小石川医師会理事は,平成九年から同医師会で行っている「子育て支援セミナー」を紹介.参加者ばかりでなく,医師も成長することができる貴重な機会であることから,各地域においても同様な事業を始めて欲しいと呼び掛けた.
藤本保大分県医師会常任理事は,「おなかのなかにいるときからの育児支援」を合言葉として,県が行うぺリネイタルビジット事業の推進に取り組んでいることを紹介.事業成功のカギは,「産科医の熱意」と「小児科医の技量」に尽きると強調した.
最後に,「無過失補償制度」「助産師の養成」等について,フロアとの間で活発な意見交換が行われ,会は終了となった.
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