日医ニュース
日医ニュース目次 第1095号(平成19年4月20日)

視点

新型インフルエンザ対策

 ヒト─ヒト感染を引き起こす新型インフルエンザウイルスは,いつ出現するか予測できない.WHO(世界保健機関)によると,三月十日現在,鳥インフルエンザ(H5N1)患者二百九十一人,そのうち死者百七十一人が報告されている.
 都市部への人口集中,飛行機などの高速大量輸送機関の発達などから,発生すると世界的な大流行,いわゆる“インフルエンザ・パンデミック”を起こすと考えられている.医療機関のキャパシティーを超える患者が発生したり,ライフラインの維持に必要な人材の確保が困難になるなど,被害と社会的影響の甚大さは想像を絶するものがあり,社会の秩序自体の維持が困難となることも予想される.
 日医から筆者も委員として参画している,厚生労働省「新型インフルエンザ対策専門家会議」が策定した「インフルエンザ(H5N1)に関するガイドライン─フェーズ3─」については,『日医雑誌』平成十八年八月号に同封し,全会員に配布したところである.このたび,「新型インフルエンザに関するガイドライン─フェーズ4(ヒト─ヒト感染発生)以降─(案)」について,パブリックコメントが求められ,それを踏まえて,(1)発生初期における早期対応戦略(2)積極的疫学調査(3)検疫(4)事業所・職場における対策(5)個人及び一般家庭・コミュニティ・市町村における感染対策(6)埋火葬の円滑な実施(7)サーベイランス(8)医療体制(9)医療機関における診断検査(10)ワクチン接種(11)抗インフルエンザウイルス薬(12)情報提供・共有(リスク・コミュニケーション)(13)医療施設等での感染対策─の十三項目からなるガイドラインが示された.
 国においては,全人口の二五%が感染することを前提に,予防・治療薬の備蓄,ワクチンの開発などを進めている.日医治験促進センターでも治験を行った,プレパンデミックワクチンは,間もなく認可される見通しであるが,ワクチン候補のウイルス株が分離されてからワクチンができるまで一年程度かかるとされており,パンデミックワクチンでの二次波の予防は難しいと考えられる.
 十分な休養,手洗い,うがい,バランスよく栄養を取るといった,一般的な感染症予防対策のほかに,咳が出たらマスクをするというエチケットも重要であろう.感染拡大防止(封じ込め)が肝要であり,会員諸氏におかれても,新型インフルエンザについて,常日ごろからの対策と準備を心掛けていただきたい.
 日医市民公開講座「どう防ぐ新型インフルエンザ」を,来る五月十二日(土)に開催し,NHK教育テレビにおいて,五月二十七日(日)午後六〜七時に放映する予定である.また,後日,その模様を収録したDVDを作成し,都道府県医師会,郡市区医師会へ配布することとしているので,国民への普及啓発についても,併せてお願いしたい.

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