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第1098号(平成19年6月5日) |
5月9日
医療事故に対する刑事責任のあり方について答申を公表
木下勝之常任理事は,医療事故責任問題検討委員会が取りまとめた答申について報告を行った.
同答申は,昨年七月に受けた会長諮問「医療事故と業務上過失致死罪による刑事処分との関係の検討,および法律改善策などについての提言」に対するもので,医療事故と刑事司法についての現状認識と三つの提言により構成されている.
同常任理事は,昨年二月に福島県立大野病院の産婦人科医師が逮捕された事件を契機に本委員会を立ち上げ,医師の他に元検事長,刑法学者,英米法学者と弁護士などの法律実務家を交えて検討が進められてきた経緯にふれたうえで,提言の内容を説明.
一つ目の提言は,医療関連死を所轄警察署だけではなく,保健所に届け出ることができるようにするというもので,医師法二十一条(「医師は,死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない.」)に,「ただし,医療に関連する死亡の場合には,保健所への届出をもってこれに代えることができる.」との但し書きを加えるとしている.
二つ目の提言は,警察・検察庁など捜査当局に,医療事故に起因する業務上過失致死傷事件の刑事訴追要否の判断に際し,謙抑的姿勢の伝統を堅持することや,全国的な捜査方針の明確化を求めるもの.捜査方針については,医療事故事件の複雑性,内容理解の困難性に鑑み,刑事法上の過失・犯罪相当の医療事故であるか否かなどの判定基準を定め,可能であれば公表することが望ましいとしている.
三つ目の提言は,医療に関連する異状死の届出先を保健所としたうえで,保健所段階で死体検案書を発行できなかった事案について審査・評価する中立的な第三者機関の設置を求めるもの.第三者機関については,高等裁判所・高等検察庁の管轄に対応する八地域に地域評価委員会を設け,犯罪相当の医療事故か否かの審査・評価を行うとしている.
同常任理事は今後,これらの提言の具体化に向け,厚生労働省の「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」において理解を求めていくとした.
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