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第1098号(平成19年6月5日) |
5月9日
厚労省の「総合科創設構想」「医療構造改革推進本部作成資料」に反論
厚生労働省が新たな診療科として『総合科』を創設する方針を固めたとの全国紙の報道があったことに対し,中川俊男常任理事は,「日本の医療の最大の特徴であるフリーアクセスを制限する政策につながるものであり,認めることはできない」と断固反対していく姿勢を表明した.
報道によれば,厚労省は新たな診療科として「総合科」を創設するとともに,能力のある医師を国が「総合科医」として認定,初期診療は「総合科医」が行い,将来的には総合科の診療報酬を手厚くする仕組みを考えていく方針だという.
これに対して,同常任理事は,最新の医療情報を熟知し,必要があれば専門医に紹介し,心のケアまでできる総合的な能力を持った医師の必要性は日医も認識しており,このような医師を養成するために,会内の学術推進会議,生涯教育推進委員会で検討し,すでにその養成カリキュラム等の作成を開始していると説明.
今回の厚労省の構想については,(一)審議会での議論も行わず,省内だけで検討されたものをあたかも決定したかのように唐突に出してきた,(二)初期診療は,「総合科医」が行うとしているが,これは患者さんのアクセスポイントを減少させるもので,地域格差を生じさせる,(三)国が「総合科医」を認定することは官僚の権益を拡大し,地域医療を国が管理統制するということにもなり,最終的には人頭払い制につながる恐れもある―など,その問題点を指摘した.
そのうえで,同常任理事は,「今回の構想は医療費を抑制し,最終的には在宅主治医制度に結びつけようという厚労省の意図が見え隠れしている.総合的な能力を持った医師の必要性に限れば厚労省と意見が一致しているが,その他の点については同床異夢と言わざるを得ない」と厚労省の考えを批判.総合科を創設する必要はなく,むしろ総合的な能力を持った医師とはどのようなものであるべきか,社会保障審議会医療部会,医療施設体系のあり方に関する検討会等で十分な時間をかけて議論すべきとの考えを示した.
また,同日の記者会見では,厚労省医療構造改革推進本部が作成した「医療政策の経緯,現状及び今後の課題」についても言及した.
そのなかで,同常任理事は,今回の資料について,(一)平成二十年四月一日施行に向けた「都道府県医療費適正化計画」では,国の責任が曖昧なうえに,自治体との役割分担も不明確で,計画の策定段階でいたずらに医療現場を困惑と混乱に陥れている,(二)医療機関の集約化や病床数削減により,フリーアクセスの権利をさらに侵害しようとする内容となっている,(三)勤務医問題の解決を開業医の管理強化にすり替えるなど,過去の国の政策の失敗を取り繕おうとしている―等,三点の大きな問題があると指摘.「役割・機能を明確化しさえすれば問題は解決するという,現実感覚のない思考である」と,その内容に異議を唱えた.
また,都道府県に対しては,「国の考えを鵜呑みにするのではなく,医療現場との緊密な連携によって地域の実情を反映した計画を策定し,積極的に国に発言していくべきである」と強調,日医としても,行政への発言等を含め,支援していく考えを示した.
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