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第1098号(平成19年6月5日) |
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新しい結核診断技術─クォンティフェロン®TB-2G
〈日本結核病学会〉
結核感染の診断のための新しい検査法であるクォンティフェロン®TB-2G(以下QFTと略)が開発され,二〇〇六年一月には保険にも適用された.この検査法はBCG接種の影響を受けない点で,ツベルクリン反応検査(以下ツ反と略)と比べて大きな利点を有する.
ツ反はBCG未接種者においては感度,特異度ともに高く優れた方法であるが,BCG既接種者では以前のBCG接種によるものか,最近受けた結核感染によるものかの鑑別ができないことに難点があった.
QFTは結核菌に特異的な蛋白であるESAT-6,CFP-10を抗原とし,これらを採取した血液に添加して,血液中の結核菌抗原を認識するTリンパ球(感作リンパ球)を刺激し,産生されるインターフェロンγ(IFN-γと略)を定量する方法である.
QFTは五歳以下の小児については適用されない.十二歳未満の小児については結果を慎重に解釈する必要がある.
QFT陽性率は八九・〇%(九五%信頼区間八一・九〜九四・〇%),特異度は九八%とされている.結核患者が発生し,その接触者に感染が疑われる場合(特に初発患者が喀痰塗抹陽性の肺結核患者の場合)にはQFTをツ反に替えて行うことが望ましい.ただし,集団感染が疑われるような場合で,対象者が多数にわたる時には,経費や検査の省力を考慮して,まずツ反を実施し,対象を限定してQFTを行うことが現実的である.
感染曝露後QFTが陽転するまでの期間は明らかではないが,最終接触後八週間の時点で検査するのが妥当である.この検査の結果が陽性であれば,結核発病について精査を行い,発病が否定されれば潜在結核感染症の治療を行う.
職業上,結核感染の曝露の機会が予想される職場に就職・配属される職員について,現在は二段階ツ反と患者接触時のツ反が勧奨されてきたが,今後はツ反を廃止してQFTを行うべきである.
QFTは,結核の補助診断としても有用である.細菌学的な確証はないが,胸部X線所見から結核が考えられる時,QFT陽性であれば結核感染が支持される.また,結核以外の病気との鑑別にも参考となる.QFT陰性であれば,結核を否定できる可能性は大きい.これはツ反と同じであるが,ツ反よりも特異度が高いので,このような除外診断の有用性ははるかに大きい.日本における非結核性抗酸菌症の主要原因菌であるMAC(M.avium Complex)感染では,QFTは陽性にならないことに注目したい.QFTを根拠として活動性結核を診断することはできないことにも留意すべきである.QFTはあくまでも補助診断である.
【参考文献】
一,Mori T, et al. Am J Respir Crit Care Med. 170: 59-64, 2004.
二,日本結核病学会予防委員会.結核.81: 393-397, 2006.
(日本結核病学会理事長・中部大学教授 下方 薫)
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