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第1099号(平成19年6月20日) |
和歌山県医師会長 柏井 洋臣
勤務医の問題について考える際には,医療機関経営者からの視点ではなく,同じ経験を持ち,同じ医師免許の下で等しく医療を国民に提供する者としての視点がいる.
現在,病院勤務医は心身共に過酷な状況に置かれている.医事紛争や訴訟を受ける危険性も増加しており,勤務医の二五・九%が訴訟を経験しているという.
然(しか)り而(しこう)して,中堅医師が疲弊して病院を辞め,残された医師をさらに過重労働が襲うという悪循環が生じる.中堅医師の消滅は,病院機能が低下するだけでなく,若年医師が教育・指導を受ける機会が奪われ,医学・医術の蓄積が担保できず,地域医療は崩壊する.
まずは,勤務医の現状認知と労働環境の改善が求められる.超過勤務を解消するには,厚生労働省の試算では,勤務医九千人の増員が必要としている.その確保に必要な財源は,現状の病院にはなく,医療費抑制政策を改めない限り,抜本的な解決方法はない.
必要なことは,勤務医の悲惨な状況が,国民・患者に不利益を与えている点,勤務医の自己犠牲も限界である点等について,国民の認識を得,民意の力で低医療費政策を改めさせることであろう.
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