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第1102号(平成19年8月5日) |
中医協(7月11・18日)
7対1入院基本料の届出がさらに増加
中医協診療報酬基本問題小委員会,総会,保険医療材料専門部会が七月十一日に,診療報酬基本問題小委員会と総会が十八日に,それぞれ都内で開催された.
十一日の総会では,七対一入院基本料のその後の届出状況等について報告が行われた.
七対一入院基本料は,平成十八年度の診療報酬改定で新設されたが,医療現場に大きな混乱をもたらしたため,本年一月,「建議書」を厚生労働大臣に提出し,中医協として強い意思表明を行うことで歯止めをかけようとした経緯がある.
それにもかかわらず,本年五月一日現在の七対一入院基本料届出病床数は,十八万七千八百四十八床(届出病床総数に占める割合は二三・九%)となり,昨年五月調査の五万五千五百三十六床(同六・九%)および同年十月の調査十二万四百八十九床(同一五・〇%)から,さらに大きく増加したことが判明した.
また,八百六十七施設を対象とした看護職員募集採用状況の調査では,全体で採用達成率八三・三%(採用数二万七千八百八十七人)となるなか,特に国立大学法人では,採用数が昨年度の二千二百九十七人に対し,本年度は四千七百二十三人と大幅に増加しているとともに,達成率九六・九%と,高い数値が示された.この採用数は,国立大学法人の看護職員総数二万四千四百二十三人に対し,実に一九・三%となる.
この結果を受け,鈴木満常任理事は,「新卒者は先輩看護師とペアで看護を行っており,実質七対一とはなっていない.看護の質が落ちることが心配だ」と訴えた.また,中川俊男常任理事(竹嶋康弘副会長の代理)は,「今回の調査項目に追加して,二百床未満の病床規模別のデータや,看護職員の離職状況についても,調査して欲しい」と要請した.今後,七対一入院基本料が看護職員の職場環境等に及ぼした影響についても検討することになった.
基本問題小委員会では,「平成十八年度DPC導入の評価に関する調査報告」について,議論された.この調査は,DPC対象病院の退院患者の診療録情報およびレセプト情報等を収集したものである.再入院率の上昇傾向については,化学療法・放射線療法などの治療計画に基づく再入院が増加する一方で,医療上の必要性にそぐわない入退院も少なからず存在することが報告され,今後も,継続的な実態把握が必要とされた.
保険医療材料専門部会では,アジア地域における医療材料価格調査として,厚労省から,韓国,タイ,フィリピンでの調査結果が報告された.議論のなかでは,医療材料価格は,為替レートと購買力平価の見方の違いなどにより,慎重に検討する必要があるとの結論に達し,欧米価格の調査や,調査方法なども含め,継続して検討していくこととなった.
また,保険医療材料制度に関する今後の進め方についても話し合われ,(一)内外価格差の是正,(二)機能区分の見直し─を検討事項として,保険医療材料専門組織や保険医療材料専門部会で検討を進めるとされた.
十八日の基本問題小委員会では,診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会(田中滋分科会長)から,(一)平成十八年度調査研究結果,(二)平成十九年度調査研究(案)─についての報告があった.
(一)では,平成十八年八月九日の基本小委で了承を得た平成十八年度調査研究,(1)医療機関の部門別収支に関する調査研究(2)診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究(DPCコスト調査研究)(3)医療のIT化にかかるコスト調査(4)医療安全に関するコスト調査─の調査研究結果を取りまとめた報告書が提示された.
そのなかで,(1)については,病床規模別,診療科別の部門別収支に関し,入院部門は外来部門に比べ収支が良いとの結果が出たこと,(3)については,すべてのITシステムを導入した場合の一病床当たりシステム導入保守費用が約六十二万円(単年分)と推計されること,(4)については,小規模施設ほど大きなコスト圧力を受けていること,人的な医療安全の取り組み実施率が高いとは言えないこと─などが報告された.
竹嶋副会長は,全体的に調査の回収率が低いことに対し,「調査期間が短すぎることなどが原因ではないか」と指摘したうえで,「急ぎすぎて偏った回答になっては問題である」と述べ,今後はその点を勘案して進めて欲しいと要望した.また,鈴木常任理事は,(3)に関連して,「医療のIT化の費用は財源措置が不可欠だ」と強調した.
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