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第1103号(平成19年8月20日) |
自殺予防
昨年度もまた,全国の自殺者数は三万人を超えた.交通事故死の約二倍である.
九年前といえば,経済状況の落ち込みの激しい時で,離職者が増加,学校は出たものの職は得られず,フリーターやニートが溢れ,問題化していた.
最近は景気が回復し,主たる企業の昨年度決算は大幅な収益増となっているという.学生の就職戦線は一変し,売り手市場となっている.
経済の落ち込みが,自殺者増加の最大の原因と考えられていたので,今の経済情勢から自殺者の減少が期待されたが,依然としての“高率持続”に驚く.
WHOの調査によると,日本はロシア,ハンガリーに匹敵する高い自殺率であるという.
国も,遅ればせながら自殺対策に乗り出した.昨年,自殺対策基本法が施行され,本年は「自殺総合対策大綱」をまとめ,自殺率を二〇%減少させるという目標を設定した.
自殺の原因として,いじめ,健康不安,過重労働,対人関係によるストレスが原因のうつ病が問題視されている.最近,過労自殺で労災認定を受けた六例のなかに,研修医と小児科医が含まれていた.医師の仕事の厳しさが浮き彫りにされたものだ.
医師は,自らも含めて,不幸を未然に防ぐよう真剣に取り組まなければならない.
九月十日は,「世界自殺予防デー」である.
(北辰)
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