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第1103号(平成19年8月20日) |
(5)
特定保健指導の課題
標準的な健診・保健指導プログラム確定版のなかで,血圧降下薬等を服用中の者には,医療機関が生活習慣病指導管理料等を活用することが望ましいとされている.ただし,保健指導が有効と判断される場合には,主治医との連携,指示で保健指導につなげることとされている.
特定保健指導は行動変容を促すことが重要で,食生活指導と運動指導がある.食生活指導は医師を始め,管理栄養士,保健師等により行われるが,医療との連携が不可欠である.今後は各地域において,栄養師会等関係者との連携により,効率的で的確な指導を提供することが必要となる.また,運動指導に関しては,今後スポーツ施設等の参入も考えられるが,その場合には日医認定健康スポーツ医等を配置するなど,さまざまな形で活用し,健康状態に留意し,しっかりしたリスクマネジメントのもとに,適切な指導が行われることが望ましい.いずれの場合においても,対象者への動機付けや説明と理解に裏付けられた行動変容につなぐといった視点から,医師がかかわることが重要である.
特に初回面接に関しては医師が直接携わることが重要と考えているが,医師のなかには多忙なために,特定保健指導へのかかわりに消極的な考えもあると伺っている.しかし,保健師や管理栄養士等と連携することにより,例えば最初の五分程度を医師が対応し,その後連携する保健師等に引き継ぐ,といった形態も可能であり,今後早急に医師会として体制を整備し,バックアップするような形で取り組んでいただきたい.
特定保健指導については,前項でも述べたように,医師が直接指導にかかわることが特に重要と思われる.そこで,他職種との緊密な連携がきわめて重要な課題となってくる.特定保健指導に従事する保健師,管理栄養士,現場で保健指導に当たる看護師,健康運動指導士,産業栄養指導・産業保健指導担当者等と連携し,行動変容に至る効果的な特定保健指導を提供することが重要である.「積極的支援」を必要とする対象者はリスクも高くなるので,的確な指示や現場との意思疎通が重要である.医師会としては関係諸団体との緊密な連携を確保することが課題となる.
また,質の担保に関しても,専門職としてのかかわりを持つ必要があると考える.今後は,関係機関と連携し,地域における人材養成のための研修に,医師会が中心となって取り組む必要があろう.
さらに,看護師等の利活用が,特定保健指導の現場では重要になってくる.現状では五年の時限が付いているが,この条項は見直しが必要と考えている.この点に関しては,保健師は名称独占であり業務独占ではないので,保健指導にはどんな職種であっても従事可能という解釈もされている.そうであれば,特定保健指導においても看護職の役割が重要な鍵になる.この場合,やはり特定保健指導に習熟する必要性は高く,研修によってスキルアップを図ることが求められる.
(常任理事・内田健夫)
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