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第1103号(平成19年8月20日) |
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京都府医師会長 森 洋一
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医療費削減政策が強行され,医療の高度先進化,恣意的な在院日数の短縮,救急医療のコンビニ化,医療訴訟の増加などから,勤務医をはじめ医療従事者が過重労働にさらされている.
全国自治体病院協議会の試算では,勤務医の過重労働を解消するには,五千六百七十一億円の経費が必要とされているが,これは医師の人件費だけに絞った試算であり,看護師など医療従事者の人件費や,その他諸経費を加算すると,一兆円を超える財源が必要と思われる.
経済財政諮問会議は,さらに一・二兆円の医療費の削減を求めているが,現在,われわれが提供する医療は,勤務医をはじめとする医療従事者の献身的な努力で維持されており,これ以上の医療費削減は,さらなる過重労働を招き,医療の質を担保できない.
国も,ようやく医師不足を認識し出しているようであるが,財務省や経済財政諮問会議は,産科や小児科の医師不足ですら,さらなる効率化で対応せよと言ってはばからない.
これ以上の医療費削減策は,わが国が世界に誇る医療を,壊滅的な状況に陥れることは間違いない.
勤務医・開業医の区別なく,国民の健康と生命を守るために重大な決意を持って立ち上がる時ではないだろうか.今,立ち上がらなければ,わが国の医療に明日はないと認識すべきである.
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