日医ニュース
日医ニュース目次 第1104号(平成19年9月5日)

第X次生命倫理懇談会が中間答申
「終末期医療のガイドライン」をまとめる

 第X次生命倫理懇談会は,このほど,唐澤人会長からの諮問「終末期医療に関するガイドラインについて」に対する中間答申を取りまとめ,八月六日に,久史麿座長から,唐澤会長に手交した.

左から久座長,唐澤会長,
宝住副会長,羽生田常任理事

 今回の中間答申は,懇談会を四回,作業部会を二回開催して,鋭意検討を重ねた結果,取りまとめられたものである.
 そのなかでは,まず,「終末期における治療の開始・不開始・変更および中止等の医療のあり方の問題は,従来から医療現場の最も重要な課題の一つとなっている」との問題認識を示したうえで,終末期医療に際し,医師に求められる対応として,(一)終末期状態であることの決定は,医師を中心とする複数の専門職種の医療従事者によって構成される医療・ケアチームで行う,(二)終末期における治療の開始・不開始・変更および中止等は,患者の意思決定を基本とし,医学的妥当性と適切性を基に医療・ケアチームで慎重に判断する,(三)疼痛やその他の不快な症状を緩和し,患者・家族等の精神的・社会的援助も含めた総合的な医療およびケアを行う,(四)積極的安楽死や自殺幇助等の行為を行わない─の四項目を掲げている.
 終末期における治療の開始・不開始・変更および中止等に関しては,特に中止に際して,その行為が患者の死亡に結び付く場合があることから,医師は終末期医療の方針決定を行う際に,特に慎重でなければならないとし,以下の三つの基本的手続きを必要としている.
 一,患者の意思が確認できる場合には,インフォームド・コンセントに基づく患者の意思を基本とし,医療・ケアチームによって決定する.その際,医師は,押し付けにならないように配慮しながら患者と十分な話し合いをした後に,その内容を文書にまとめる.
 前述の場合は,時間の経過,病状の変化,医学的評価の変更に応じて,その都度説明し,患者の意思の再確認を行う.また,患者が拒まない限り,決定内容を家族等に知らせる.
 なお,救急時における医療の開始は,原則として生命の尊厳を基本とした主治医の裁量にまかせるべきである.
 二,患者の意思の確認が不可能な状況下にあっても,「患者自身の事前の意思表示書(以下,「意思表示書」)」がある場合には,家族等に意思表示書がなお有効なことを確認してから医療・ケアチームが判断する.また,意思表示書はないが,家族等の話などから患者の意思が推定できる場合には,原則としてその推定意思を尊重した治療方針をとることとする.その場合にも家族等の承諾を得る.患者の意思が推定できない場合には,原則として家族等の判断を参考にして,患者にとって最善の治療方針をとることとする.
 家族等との連絡が取れない場合,または家族等が判断を示さない場合,家族等のなかで意見がまとまらない場合などに際しては,医療・ケアチームで判断し,原則として家族等の了承を得ることとする.
 前述のいずれの場合でも,家族等による確認,承諾,了承は文書によらなければならない.
 三,前述の一,および二,の場合において,医療・ケアチームのなかで医療内容の決定が困難な場合,あるいは患者と医療従事者との話し合いのなかで,妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合などに際しては,複数の専門職からなる委員会を別途設置し,その委員会が治療方針等についての検討・助言を行う.
 また,中間答申の最後では,終末期の患者が延命措置を拒否した場合,あるいは患者の意思が確認できない状況下で患者の家族等が延命措置を拒否した場合を取り上げ,それらの場合においては,「このガイドラインに沿って延命措置を取りやめた行為について,民事上および刑事上の責任が問われないような体制を整える必要がある」との見解を示している.
 一方,末尾には,「医療・ケアチーム」「家族等」「患者自身の事前の意思表示書」の定義の注釈のほか,終末期医療の方針決定に至る手続きを示したフローチャート(図)が附記されている.

第X次生命倫理懇談会が中間答申/「終末期医療のガイドライン」をまとめる(図)

 なお,八月二十二日には,唐澤会長,久座長,宝住与一副会長,羽生田俊常任理事出席のもと,記者会見が行われ,中間答申の内容等に関しての説明が行われた.
 会見のなかで,久座長は,厚生労働省が五月に取りまとめた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」と,今回の中間答申の違いに言及.中間答申のみに盛り込まれているものとしては,(1)終末期の状態であることの決定を医療・ケアチームで行うとしていること(2)救急時における医療の開始は,原則として生命の尊厳を基本とした主治医の裁量にまかせるべきとしていること(3)在宅医療に際して,在宅療養に従事する医師の判断を支援するシステムを,地域の医師会に構築する必要があること─の三点があると説明した.
 また,羽生田常任理事は,今後,この中間答申を都道府県医師会をはじめ,日本医学会分科会,日本学術会議,国立保健医療科学院,厚労省等各方面に配布して意見を募るほか,日医ホームページにも掲載して,パブリックコメント(締切:九月末日)を求めていくとした.
 生命倫理懇談会では,これらの意見も参考としながら,年度内の最終答申作成に向けて,さらに検討を続けていく予定になっている.

日本医師会 第]次生命倫理懇談会

座 長
 久 史麿(日本医学会長・自治医科大学長)
委 員(五十音順)
 青木  清(上智大名誉教授)
 井形 昭弘(名古屋学芸大学長)
 井石 哲哉(長崎県医会長)
 加藤 尚武(京大名誉教授)
 楠本万里子(日看協常任理事)
 小森  貴(石川県医会長)
 佐々木義樓(青森県医会長)
 田村 里子(東札幌病院 診療部II 副部長)
 鍋島 直樹(龍谷大法学部教授)
 楢原多計志(共同通信社 編集委員・論説委員)
 福田  孜(富山県医会長)
 松根 敦子(日本尊厳死協会副理事長)
 向山 雄人(癌研有明病院緩和ケア科部長)
 山田 卓生(日大法科大学院教授)
オブザーバー
 澤 倫太郎(日医総研 研究部長)
 水谷  渉(日医総研 主任研究員)

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