日医ニュース
日医ニュース目次 第1104号(平成19年9月5日)

会員の窓

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将来のこの国の産科医療に助産師は不可欠か
八木 謙(山口県・玖珂郡医師会)

 看護師に産科医療の手伝いをさせたことが違法だとして,助産師不在の産科医療機関に警察の捜査が入るという事件が頻発し,分娩を廃止する産婦人科医院が続出している.一方,今後,分娩施設の浮沈は,助産師をどれだけ確保できたかによって決まるという考え方から,生き残りをかけた産科医療機関は助産師の確保に躍起になっている.
 この現象は,将来のこの国の産科医療を良い方向に向かわせるだろうか.
 産科医療に看護師を関与させることが違法か違法でないか,その論旨は別の雑誌で述べた.紙面が足りないので,ここでは医師と看護師で行う産科医療は法的に問題ないという前提の下に話を進める.
 産科医のパートナーを助産師のみだけでなく,広く看護師全体から採用するべきである.そのことで,より優秀な人材を確保できる.特に,看護大学出身の人材が,産科医療現場の核となって活躍してくれることが望まれる.助産師の国家資格は,医師がいない場所(医療現場以外)での助産に有用なだけである.今後,そのような分娩が多くあるとは思えない.医師の指示下で高度な産科医療の助手を務めることのできる,真に実力のある人材の養成が急務である.
 この国の助産師の数は二万五千人.対して看護師の数は百二十万人.この多い分母のなかから,優れた人材を産科医療現場に取り込まなければならない.
 法律問題はさておき,真に優秀な人材の確保に取り組まないと,二十年,三十年先の産科医療現場は,他科に後れを取ってしまうことは必至である.

公務員の特権を見直し公立病院の医師確保を
井戸正利(大阪府・大阪府庁医師会)

 自分自身は保健所勤務で,当直もなく,かなり恩恵を受けている.恥を忍んで,日々忙しい病院の先生方の勤務が少しでも改善されるよう,公務員特権の見直しを提言させていただく.
 まず,多くの地方公務員の給与であるが,主査(係長級)等に昇格しなくても,ほぼそれに準じた給与がもらえる,いわゆる「給与表のわたり」という制度がある.マスコミ等の批判で改善されつつあるも,すでに高くなってしまったベテラン職員の給与改正はわずかで,また中堅には面接等を何年か受ければ大半が合格し,高い給与がもらえる副主査という階級も新たにつくられている.諸手当の見直しもされたが,まだこんなものが残っているのかというものも多い.
 有給休暇は年末年始等を含め三十日はあるし,人間ドック等で休める日(職免)も多い.三カ月の病欠まで給与は原則減らないし,医療費の自己負担の多くは共済組合や互助会から返ってくる.さらに,難病認定などを受ければ,多額の療養費が支給される.組合活動も,いわゆるヤミ専従は改善されたが,執務室での宣伝活動や公然と貼られたポスターは,住民の目にどう映っているだろうか.定年退職後も,多くが数年間,非常勤等で雇用されている.
 こういった公務員全体の特権を見直し,責任や業務量等に見合った給与とするとともに,定型的な業務のアウトソーシングを進めるべきであろう.そして超過勤務手当等がほとんど支払われることなく,忙しく残業している病院勤務医にこそ,適正な給与や手当が支払われ,有給取得を始めとした勤務環境も改善されるべきであろう.

多病息災?
宮崎幸雄(大分県・別府市医師会)

 「多病息災」という言葉があるのかは知らないが,私は今回,前立腺がんが見つかり,平成十一年の大腸がん,平成十三年の胃がんに続いて“トリプルがん”にかかったことになる.“二度あることは三度ある”を地で行ってしまった.
 五〜六年前から肥大があり,前立腺がんが何となく気になり,年二〜三回はPSAを検査していた.参考までに,平成十七年のPSA値は,二・八→三・四→三・五,平成十八年は,三・八→四・三→五・〇.上昇率(PSAV)が,平成十七年は〇・七ng/ml,平成十八年が一・二ng/mlを示し,さらに,今年一月の生検で辺縁部に限局したグリーソンスコア四の「高分化型の前立腺がん」と診断され,内分泌療法を始めたところである.
 私の場合,きっと,がん発生遺伝子の強化か,抑制遺伝子の弱体化によるものではなかろうか? 大腸がんも胃がんも早期がんであり,何とか克服したが,今回も何とかして乗り切りたい.
 私は内科医で七十七歳.がんのほかに,高血圧,糖尿病,高脂血症,後縦靱帯骨化症,脊柱管狭窄症など,満身創痍の身? である.しかし,脳の機能だけは保たれているので,昔の生活習慣病の不注意を後悔しながら,悪運も強いのでは? と自負している.
 不健康なわが身ではあっても,決して悲観や落胆はしていない.天が私に与えた試練だと思う.医師は病気になってみないと,患者の本当の苦しみや気持ちが分からないと言われるが,そういう意味では,貴重な体験を何度もしたわけで,これらの経験を今後の診療に生かし,精進努力する覚悟である.そして,願わくば「多病息災?」で神に召されたいものである.

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