日医ニュース
日医ニュース目次 第1105号(平成19年9月20日)

平成19年度 第1回在宅医研修会
在宅医療を推進する諸形態

平成19年度 第1回在宅医研修会/在宅医療を推進する諸形態(写真)

 平成十九年度第一回在宅医研修会が,「在宅医療を推進する諸形態」をテーマに,八月二十六日,日医会館大講堂で開催され,受講者数は三百八十四名であった.当日の模様は,宮城など十県医師会にテレビ中継された.
 冒頭のあいさつで,唐澤人会長(竹嶋康弘副会長代読)は,「現在,療養病床再編成の施策が進められている.日医では地域を一つの病棟と考えており,その中心的役割を担う在宅療養に携わる医師を支援する責務がある」と述べた.
 木安雄慶應義塾大学大学院教授の総合司会の下に,まず大島伸一国立長寿医療センター総長が,第一講義─一「在宅医療推進会議の取り組みについて」を行った.在宅医療推進会議は,国立長寿医療センター総長が招集し,在宅医療について政策提言等を行うもので,作業部会で全体構想と行動計画を策定する,と説明した.
 第一講義─二は,黒岩卓夫医療法人社団萌気会理事長の「在宅医療を拡充するために」であった.在宅医療を医療界に拡充する三つの条件として,(1)受け皿の充実と医師の使命感(2)病院医師の意識改革と協力(3)国民の理解と共鳴―を挙げた.
 また,在宅ケアは「おもしろい」.生き死にのドラマに参加できる,二十四時間体制と地域連携が安心と継続のキーワード,などと強調した.
 第二講義は,池上直己慶應義塾大学医学部教授が,「高齢者における予防とリハビリテーションの一体化」のテーマで行った.
 来年度から特定健診・特定保健指導が始まる.健診を受けるのは,健康に関心がある人である.無関心な人には,医療機関を受診した時に健診を実施したほうが効率的である.高血圧症,高脂血症,糖尿病で通院している人は,特定健診の対象から除外すべきである.
 介護予防施策では,「特定高齢者」と「要支援者」とは分断されていて,認定基準に整合性がないと批判.保健,医療,介護の分断を改め,在宅医が一体的に責任を持つべきとした.
 第三講義は,白髭豊長崎市医師会理事の「長崎在宅Dr.ネットの取り組みについて」.在宅医療は,無理なく訪問診療できる態勢が必要になる.長崎在宅Dr.ネットの考え方は,二十四時間三百六十五日の対応,入院中と同様の医療や最適な在宅医療の提供,多職種連携などである.グループ診療システムでは,患者を主治医と副主治医とで担当する.在宅医療推進には,病院における退院調整,診療所同士のネットワークづくりなどが重要であると指摘した.
 第四講義は,嶋田丞大分県医師会副会長の「在宅医療を推進する諸形態 有床診療所の立場から─地域に根差す有床診療所を目指して─」であった.有床診療所は,地域医療の支援病床として有用であり,終末期医療を引き受ける病床としても貴重な存在である.演者の診療所には,上階に高齢者専用賃貸住宅も設けてあり,安心であるということであった.
 第五講義は安藤高夫全日本病院協会副会長の「在宅医療を推進する諸形態 中小病院(特に慢性期病院)の立場から」であった.東京都病院協会等の緊急提言を紹介し,介護療養病床は,急性期病院からの受け皿,長期療養,在宅ケア等との連携などが大きな役割である.医療療養病床の役割は,同様に重要であり,在宅療養支援診療所や一般診療所との協働,急性期・回復期医療や在宅サービスとの連携などが大切であると述べた.
 全体ディスカッション「在宅医療を推進する諸形態」では,まず,野中博野中医院院長が指定発言を行った.在宅医療は,医療を生活の場で提供するという特殊性がある.厚生労働省は,「患者の視点に立った,安全・安心で質の高い医療が受けられる体制の構築」を掲げているが,これには,在宅医療を整備する必要があり,地区医師会の関与が重要であると述べた.
 さらに,日医の「在宅における医療・介護の提供体制─『かかりつけ医機能』の充実─」の七つの提言についても,その重要性を強調した.
 その後,活発な討論と質疑応答が行われ,司会の木氏の総括,竹嶋副会長による閉会のあいさつで会は終了した.

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