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第1105号(平成19年9月20日) |
9月5日
三省による「緊急医師確保対策に関する取組について」に対する日医の見解
内田健夫常任理事は,八月三十日に厚生労働省,総務省,文部科学省の三省により行われた,「地域医療に関する関係省庁連絡会議」内で取りまとめられた,「緊急医師確保対策に関する取組について」に対して日医の見解を述べた.
同常任理事は,今回の取り組みから,「臨床研修医の募集定員の見直し」「臨床研修病院の評価と見直し」「女性医師の就労条件の改善,女性医師バンクの充実」「医療リスクに対する支援体制」「医師養成数」─の五項目に日医の提言が取り入れられており,その部分については評価できると発言した.
なかでも,「女性医師バンクの充実」については,日本医師会女性医師バンクが,八月末現在,就業成立三十三件(うち二件は再研修紹介)という大きな成果を挙げており,その点が評価されたと分析.また,「医師養成数」については,医師不足に対する,具体的な対策が示されているとし,将来的な医師の適正数は,高齢化,少子化,医療の高度化などの諸要因や社会的な背景を検討したうえで,算出しなければならないと述べた.
同常任理事は,今回の提言の問題点も指摘し,以下のように述べた.
(一)緊急臨時的医師派遣システムの構築:労働者派遣法施行令を改正する方向で検討されているが,派遣システム自体が,医師,医療従事者になじむか疑問である.
(二)医師の勤務環境の整備:交代勤務制度等の導入や当直明けの勤務の軽減のような,医師が多くいる医療機関でないと実現できない病院への補助金交付制度は,医療機関の格差の拡大に配慮が必要である.
(三)医師,看護師等の業務分担の見直し:業務分担は,現行の制度に基づいて行われるべきであるが,新たに業務を分担する職種については,業務分担に関する責任が生じることを明確にしなければならない.
(四)「総合科」創設の検討:本来検討するべき医道審議会診療科名標榜部会において,まったく検討されていないにもかかわらず,「総合医の認定基準等,認定審査についての検討を進める」との文言が入り,概算要求されていることは問題.厚労省による総合医の認定には,絶対反対であり,日医が取り組む課題である.
(五)医育機関の在り方の検討:いわゆる「メディカルスクール」の検討については,国内外のいくつかの事例を評価・検討することが,あくまでも前提条件である.日医としては,医師資格が(医学部卒とメディカルスクール卒に)二元化されることには反対である.
最後に同常任理事は,財政中立という考え方からの医師確保政策では,実効性がないとし,医師確保対策で最も必要なのは,診療報酬の引き上げであると強調した.
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