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第1105号(平成19年9月20日) |
9月5日
「後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子(案)(たたき台)」の問題点を指摘
中川俊男常任理事は,厚生労働省が四日の社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会に提示した,「後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子(案)」に対する日医の見解を示した.
同常任理事は,まず,骨子案「二,(一)外来医療について」の(後期高齢者を総合的に診る取組の推進)から,外来医療を限定しようとしているのでは,と疑問を示し,「総合科」「総合科医」の認定を狙っているのが見えると指摘.厚労省が示した,主治医の役割─(1)患者の病歴,受診歴などの一元的把握(2)日常生活の能力や認知機能などの総合的評価(3)適切な医療機関への紹介─について,身近で頼りになる「地域医療,保健,福祉を担う総合的な能力を有する医師」は必要だが,初期診療を「総合科」「総合科医」に限定することは,患者から医療選択の権利を奪うことになる.これまで日医が指摘してきた問題点を無視し,依然として「総合科」「総合科医」構想を掲げていることに遺憾の意を表明した.
また,骨子案の「二,(二)入院医療について」に対し,日医は,「後期高齢者イコール在宅」という方向性は非常に危険だと発言し続けてきた.だが,骨子(案)では,「退院後」という言葉が目立つ.これは,「高齢者は在宅へ」という方針が前提にあると考えられ,このままでは,「退院」が優先され,医療難民,介護難民が生じるおそれが大きいので,医療が必要な患者のための病床維持,医療の必要性が低い患者についても受け皿整備が先決であると主張.骨子(案)の内容を「在宅医療を強いる施策である」と問題視した.
さらに,外来医療の薬歴管理について,医療関係者や患者自身が確認できるような方策を進めるとしているが,個人情報の保護に一切留意されていないこと,また,「留意すべき事項」にある,「後期高齢者の負担を考慮し,制度の持続可能性に留意した,効果的・効率的な医療提供の視点が必要」については,負担を考慮するからこそ「効率化」であり,給付が縮小することがあってはならないと強く指摘.これは,小泉政権以降の行き過ぎた医療費抑制等により,地域医療が崩壊の危機にある現状についての反省もなしに,再び「医療費抑制ありき」で,高齢者の尊厳がないがしろにされていると批判した.
今後,後期高齢者の診療報酬体系については,社会保障審議会の医療部会,医療保険部会での議論を通じて,日医の考えを強く主張していきたいと述べた.
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