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第1106号(平成19年10月5日) |
9月19日
メディカルスクール構想に対する日医の見解
内田健夫常任理事は,東京都や四病院団体協議会などが検討を始めている,四年制大学卒業者に四年間の医学教育を行う“メディカルスクール構想”に対する日医の見解を発表した.
同常任理事は,まず,今回の“メディカルスクール構想”は,「医師不足対策」と「臨床医の育成」を背景にして出てきたものとの認識を示した.そのうえで,メディカルスクール構想の問題点として,以下の四点を指摘した.
(一)医師の質の担保:現行制度(五年目から二年間の臨床実習を含む六年間の医学部教育,医師国家試験,二年間の臨床研修)における質の担保と現行制度の評価・検証が必要.
(二)二重養成制度:現行の六年制と八年制の二重の養成制度になることで,現場ではさまざまな混乱が生じてくる.どちらかに一本化する方がよいが,その導入の意義,制度立ち上げの混乱,費用等も考慮すべきである.
(三)医師不足対策としての実効性:これから検討を始めて,立ち上げ,さらに六年間の教育・研修が必要となると,実質的には実効性があるかどうかは疑問.むしろ,文部科学省・厚生労働省が打ち出した「医学部の定員増(総枠で三百九十五人)」などの医師不足対策の効果についての検証が必要である.
(四)恒常的な制度導入の是非:恒常的な定員増によって出生数千人当たり八人の養成数となるなどの問題がある.さらに,医師免許取得が二年遅れることにより,医学生の費用や時間的な負担の増大,入学者の経済的な格差,基礎医学者の不足等も危惧される.
同常任理事は,現行制度の検証と八年制を導入した場合の予測が重要であると強調.特に,昭和五十年から開始された学士入学によって誕生した医師の調査・評価や,米国,カナダ,オーストラリア,韓国など,諸外国における医学教育制度との比較検証を,まず実施するべきではないかと指摘した.
最後に同常任理事は,「今後は,東京都医師会や四病院団体協議会,全国医学部長病院長会議等と連携し,情報交換しながら検討を重ねたい」と述べ,拙速な制度改革に伴う問題の大きさを強く感じるとした.
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