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第1106号(平成19年10月5日) |
マスコミ報道の在り方
九月初めから,奈良県橿原市のいわゆる「妊婦たらい回し事件」に端を発し,同じようなケースの報道がなされている.いずれのケースも,かかりつけの医師を持っていない.
奈良のケースは,最初の報道では妊娠三カ月と言っていたのが,実は妊娠七カ月.夜中にコンビニで買い物をしている時に痛みが生じ,救急車を呼んでいる.奈良市ではすべての病院に断られ,大阪に搬送する途中,救急車が交通事故.そして流産し,胎児が死亡した.しかし,妊娠七カ月というのに,一度も診察を受けていなかった.
マスコミは「義務を忘れた産婦人科医」と言い,政府高官は,事実を確認もせずに,「日本の医療になっていない」「産科医を増やそう! その対策を早急に」と発言.
受け入れない産科医が悪いのか.かかりつけの医師を持たない妊婦が悪いのか……後者であろう.一時期はやった「自己責任」という言葉は,どこへいったのか.
産科医の増加のために一番効果的なのは,マスコミが『行き過ぎた医療バッシング』をやめること,これに尽きる.
マスコミによって,国民は産科だけでなく,医療に不信感を植え付けられた.そのため,医療は萎縮,崩壊へと進みかけている.
ヒトは皆,いつか死んでいく.その前に,ほとんどのヒトは病む.その時,必ず医師とかかわる.そのかかわり方を,良いものにするためには,いわれのない不信感は害になる.医師と患者の間に信頼感がなければ,良い医療は生まれない.
今こそ,マスコミは報道の在り方を考え,国民と医師の信頼回復に手を貸すべきであろう.
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