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第1107号(平成19年10月20日) |
9月26日
妊婦搬送体制の現状に対する日医の見解
今村定臣常任理事は,妊婦搬送体制の現状に対する日医の見解を発表した.
初めに,奈良県で妊婦の搬送先が決まらず死産に至ったケースに関しては,日本産科婦人科学会が詳細な調査・報告を行うとしており,その見解・判断を待ちたいとした.さらに,日本産婦人科医会が,「周産期救急医療(昼間・夜間)の連携体制の実状に関する緊急調査」を実施し,その中間報告が九月十二日に日本記者クラブで発表されたことにも触れた.
そのうえで,同常任理事は,周産期医療が抱えている最大の問題は“マンパワーの不足”であると指摘.「行き過ぎた医療費抑制策の下,種々の社会的な要因により,特に産科医と小児科医の不足とともに地域格差が生じており,周産期医療施設が未整備の状態であることも明らかになった」と述べた.
政府の医師不足対策については,産科・小児科という特定の診療科に対しては,極めて不確定な部分が多く,よりきめ細かな対策を考えていかなければならないとした.
周産期医療施設の整備は重要であるが,厚生労働省が主張する総合周産期センターの整備だけでは問題の解決にはならない.むしろ,地域の医療事情に即した整備こそが重要であり,地域で周産期医療を担っている医療従事者の意見に謙虚に耳を傾ける姿勢が,行政側に求められていると強調した.
また,今回の事例を契機としてクローズアップされた,かかりつけの産科医を持たない妊婦,いわゆる“未受診妊婦”の問題として,(一)流産・早産,産科合併症等の頻度が高く,非常にハイリスクな状態に置かれていること,(二)“未受診妊婦”から生まれた新生児が養護施設に引き取られるケースが多いこと─を挙げた.
さらに,“未受診”の理由として,「経済的な困窮」と「家族を含めた周りの人たちとの人間関係の問題」が大きいとし,産科医療が主として自費であることと相俟って,これら“未受診妊婦”の医療費未払い問題も産科医療機関の経営的な負担になっていることを明らかにした.また,“未受診妊婦”の相当数が健康保険証を持っていない問題についても,早急な対応が必要との考えを示した.
今村(定)常任理事は,「これらの問題点は,いずれも一朝一夕に解決できるものではないが,日医としては,その解決に向けて,行政・関係各方面ならびに各専門団体等と協力して地道な努力を続け,少しでも良い環境をつくっていきたい」と意欲を示した.
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